【幕間13】魔王様とペットと近づく終わり
“日本上空に不思議な物を観測したと趣味で天体観測を行っている○○さんがSNSで呟いた物が話題となっています。これはなんなんでしょうね?“
四人はテレビの情報番組を見ながら朝食を食べている。朝の情報番組では何やら日本上空、宇宙空間に竜巻のような物が撮影されている画像について飛鳥が「おねーちゃん、あれなぁに?」「なんだろぉーねぇ、大気はないはずなんだけどねぇ」といつも通りのほのぼのとした会話。
魔王様とドロテアがレトルトカレーを温めて戻ってきた時に丁度そのコーナーは終わり動物のコーナーが始まった。飛鳥と魔王様の一番好きなそのコーナー。
「下等生物を飼うという愚かな行為、どこの世界も変わらぬの」
「お嬢はペットは飼った事ないのかい?」
「ふん、実験動物すら飼った事はないわっ!」
確かにドロテアにペットの世話ができるとは思えない。見た目は幼女で年齢は何千、何万年と生きてきたという割にはポンコツなのだ。今まで魔法で生活の全てを行ってきたドロテアから魔法を奪ったら何も残らなかった。ただ偉そうな子供がそこにいるだけである。
「魔王様は? ワンちゃんとか飼ってた?」
「余か? 余はブルードラゴンを飼っておったぞ! クハハハハハ! 霊山で拾ってな。ついてきよって、一週間で余の城を超える大きさになりよってな! 実に憂い奴である!」
「へぇ、魔王様、ドラゴン飼ってたんだぁ。ドラゴンって飼っていいんだなぁ」
それに対して、魔王様はペットの世話とかしっかり行いそうだなぁと烏子に飛鳥は思う。二人の住まうマンションはペット禁止。飛鳥は動物園や水族館が大好き、ペットを飼いたいと言った事はないが、きっと言わないだけで、飼いたいんだろうなと烏子は思っているが、流石にペットの面倒までは手が回らない。
「烏子に飛鳥はなにか飼ってはおらぬのか?」
「飼ってないねぇ。しいて言うならロボット掃除機だねぇ」
「お姉ちゃんが欲しい! って言ってコストコに買いに行ったよねぇ!」
スマホで運転を開始してみせる。コストコでごく稀に一万円引きくらいのサービス価格で販売されるロボット掃除機。それがコトコトとフローリングを掃除する様子を四人でぼーっと眺めている。本来、人間が時間を無駄にしない為に存在するロボット掃除機なのだが、不思議と見つめてしまえるその姿は病気にかからないペットと言えるのかもしれない。
「しかし、この世界は奇妙じゃな。魔法で行えるような事を殆ど仕組みにより成り立たせてある」
「ドロテアよ! 貴様もそう思ったか? 余も常々この世界で生活する上で驚きの日々である。されど、にゅうすぅを観る限り、この世界にも戦はあり、争う。人間は一つにはならぬ。これに関しては余の世界も同じく人は一つになれぬな」
魔王様に痛い所をつかれる。とはいえ、ここで人間の大人は烏子しかいない。少し考えて烏子はロボット掃除機を眺める魔王様とドロテアに伝える。
「人間の味方は人間で、人間の敵もまた人間だかんねぇ、昔。世界中でコロナウィルスが流行った時。そうだねぇ、私が生まれてから初めて人類の敵が襲来したんだよねぇ。でも世界は一つになる事はなかったねぇ、これで分かったよぉ。宇宙人が攻めてこようと、異世界から侵略者がこようと、人々は一つになることはないよ。そして、それこそが人間だねぇ、完璧じゃないんだぁ」
ドロテアはフンとバカにした顔をして、魔王様は「ほぉ」と頷きながら尋ねる。
「ならば人間は失敗作ということか?」
「そうでもないさぁ。失敗するから、完璧じゃないから、私達は成長しようとするんだよねぇ。だから、ロボット掃除機を生み出す人が出てきたりするんだろうねぇ。私達人間には、ゴールはないんだぁ」
人間に行き着く先はない。それが烏子の見解、人間は無限に成長し、進化し続ける。コトコトとロボット掃除機は掃除を終えて充電するスタンドへと帰っていく。その姿を見つめると食べかけであった朝食を再び続ける。
そこでドロテアがテレビをふと見ると。
「お? あれは……魔法ではないのか?」
「どれどれぇ? あー、なんか宇宙空間に竜巻みたいな物を撮影したらしぃんだぁ!」
烏子と飛鳥が笑ってそう言うのに対して、魔王様とドロテアは真顔でその光景を見つめていた。
「魔王様、どうしたの?」
飛鳥の言葉を無視して、魔王様はドロテアに尋ねた。
「ドロテアよ。あれはあとどのくらいで落ちてくるか?」
「あぁ? 十日かそこらじゃろうよ。まさかアレまで妾達と共にやってきていたとはな……この世界の終わりの慟哭が聞こえてくるようじゃ」
一体何事かと烏子は二人に尋ねると、あの撮影された物は形を持った破滅、終焉をもたらす魔法であると淡々と語られ、それに神妙な顔をしている烏子の頭をポンと触れて魔王様は笑った。
「クハハハハ! 余が必ず何とかしよう」
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