13.魔王様とペヤング・超超超超超超大盛り、ペタマックス

 それは関東ではUFOよりもメジャーなペヤング。少しばかり開発担当に頭のネジが外れている方がいるのか、信じられない程に辛い商品を作ってみたり、誰が買うのか分からないフレーバーのカップ焼きそばを作る独自路線を進むまるか食品の看板商品。

 

「ほぉ、ペヤングであるな!」

 

 レギュラーサイズに、かつては大盛りと超中盛りという意味不明なサイズが存在し、大盛りが販売終了した事で超大盛りが二番目に多いサイズに変わり、そしてしばらくして超大盛り二杯分の超超超大盛りギガマックスという頭の悪い……運動部の学生を喜ばせる商品が登場した。これですら一人で食べるのは一般人には至難の量なのだが……この会社。さらにその二倍の量の……

 

「超超超超超超大盛り、ペタマックス……買うのかぁい?」

 

 烏子が念の為に再度確認してみる。

 

 絶対に一人では食べないでくださいと商品に書いてあるそれ、「妾はこの佇まい気に入った」というので恐る恐る烏子はペヤングのペタマックスをカートに入れた。

 今までにカップ焼きそばの大盛りを食べた事は何度かあるい、もちろんペヤングもある。が、レギュラーサイズの物である。そもそも食べ盛りの若い子が足りないのでペヤングを二個同時食いする事が多かった故にまるか食品はこれらの巨大なサイズのカップ焼きそばを出したわけだ。


 だがしかし、このペタマックスに関してはやりすぎである。


 総カロリー4184キロカロリーとデカデカと記載されており、成人男性の二日分くらいのカロリーをこれ一つで賄う事ができる。海外のロードレース選手のトレーニングで食べる食事量の半分であると言えば、あの過酷なツールドフランスをペタマックスがあれば走り切れるエネルギー量という事だ。

 これを買ったとして、四人で食べても一人当たり1000キロカロリーを超える。大体一人ペヤング二個を食べる計算となるわけだ。これを購入する事で、おそらく他の食べ物はあまり入らなくなるという事も物語っているが、今買わなければ二度と機会はないだろう。

 

「経験資料というものは大事だかんねぇ」

 

 飛鳥は目を丸くしていた。

 

「おっきーペヤング!」

「美味いんじゃろ?」

 

 ドロテアは飛鳥にそう尋ねるが、実は飛鳥はペヤングを食べた事がないので分からない。

 

「わかんない。魔王様、お姉ちゃん、美味しいの?」

 

 そう飛鳥が尋ねるので、

 

「クハハハハ! 実に美味いぞ!」

 

 そう魔王様が答えてくれる。とは言っても魔王様もペヤングの超大盛りまでは食べた事があるが、それ以上のサイズの物を見るのはこのメガドンキが初めてだった。超大盛りでお腹いっぱいになる。

 それ故にこのサイズのペヤングは食べ切れるのか? という至極当然な事を魔王様は気付き、そしてドロテアに言った。

 

「これは想像を絶する大きさのペヤング、食べれきるのか?」

「余裕じゃろう?」

 

 当然、人気商品であるペンヤングは普通に美味しい。だが、それは美味しく食べられる量というものが存在する。レギュラーサイズの運動部系の学生が少し物足りないなと思える量が理想であり、大食いチャンレジのお店みたいな量のペヤングともなると塩分や炭水化物量が振り切っている。無理して物を食べる事程体にとって悪い事もない。

 

「お嬢、これを食うときは一蓮托生だぜぇ」

 

 恐らく飛鳥はお皿に少し食べたらお腹がいっぱいになるだろうから、戦力外。たくさん食べる方だが一般人より多く食べる程度の魔王様とお酒のおつまみにちょこちょことつつく程度の烏子では食べられて半分と言ったところだろう。そこにドロテアが加わったとして……ドロテアは現在幼女の姿、当然胃袋のサイズも年相応。

 

「何を恐れておる! 妾が食い尽くしてくれよう!」

 

 ドロテアは悪い顔でそう皆に宣言した。これを家に持って帰り、薬缶のお湯を二杯分入れた後にふやけたその量を見た時、顔色が変わるのだが、今は何も考えていない。

 

「クハハハハ! しかし、余も一度、ペヤングを飽きる程に堪能してみたいと思っておった。ドロテアの歓迎会はこの巨大なペヤングをメインに開催しても面白いかもしれぬな?」

 

 魔王様にそう言われるのはドロテアとしては本意ではないという表情を魔王様に向けている。

 ドロテア自身が選び、そして当然めちゃくちゃ美味しいご馳走である事。推して皆が自分にひれ伏す。

 そういう特別扱いをしてくれないとドロテアは納得できない

 

「黙れ黙れぇい! 魔王の分際で妾が選んだ物を値踏みするなっ! これは妾が見つけ、気に入った為食すのじゃ!」

 

 しかし残念ながら美形の魔王様と美形のドロテア。

 周囲が見れば可愛い娘が父にワガママを言って、父の方はニコニコと笑いながら宥めている姿にしか見えない。

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