7.狂った大容量のお菓子を眺める魔王様

「プレーン味美味しいじゃあん」

「甘くないから飛鳥は苦手かもー」

「うむ! オイコスはレモン味が最強に美味い!」

「蜂蜜入れたりぃ、味をカスタマイズできるんだけどなぁ」

「えー、でも飛鳥はイチゴ味がいい!」

 

 残念ながら烏子のプレーン味愛は伝わらない。

 

「しかし、味の種類が多くて驚くな! クハハハハ!」

 

 冷蔵庫コーナーへとやってきた三人。

 タンパク質が効果的に摂取できるヨーグルト、オイコスの冷蔵庫には人が途切れない。価格破壊一歩手前くらいの値段の安さで販売されている。大量仕入れの激安日本のスーパーより箱売りで400円程安い事で証明されている。


 さらに言えば、コストコでしか買う事ができないオイコスの公式にもその存在が明記されていないフレーバーがある。その名もマダガスカルバニラ味。コストコでも売っているとラッキーくらいのフレーバーとなる。

 本日はプレーン、ストロベリー、そしてマダガスカルバニラ味の三種類が販売されており、魔王様の大好物フレーバーであるレモン味が見当たらない。ちなみにレモン味はチーズケーキみたいでめちゃくちゃ美味しい。


 自分の好きなフレーバーがないからといって魔王様は不貞腐れたりしない。ねだらず、欲しない。まさに王の風格を持ってして魔王様は手を伸ばす。

 ない物をを嘆くより、いまある物を手に入れるべく、烏子用にプレーン味を一箱、飛鳥と自分用にストロベリー味を二箱カートに入れた。

 

「マダガスカルバニラはいいのかぁい?」

 

 このフレーバーもとっても美味しいのだが、

 

「くーはっはっは! 飛鳥がイチゴ味が好きであるからな! 余分に用意しておくのがよかろう」

 

 魔王様もストロベリー味が好きで、飛鳥も大好きなのでそう判断した。

 

「魔王様ぁ、なんかすみませんねぇ、じゃあヨーグルトはこれでよぉし」

 

 あとはマーガリンを購入してこの冷蔵庫コーナーでの買い物はもう終わりだと思った時、烏子のコストコアンテナが反応した。人が少し多い場所。そこを見に行くと……

 

「グランドアルトバイエルンがぁ、1キロぉ、1100円? これ買っちゃおうかぁ?」

「うん! 飛鳥食べたい!」

「シャウエッセンとはまた違うのであるか? 余はあれと目玉焼きを朝に食べると心が浮かぶ気持ちになるぞ!」

 

 日本ソーセージ界の二大アイドル。

 日本ハムのシャウエッセンと伊藤ハムのアルトバイエルン。日本では馴染み深くかつスーパーで買えるソーセージの王様達。ご飯のお供に、子供のおやつに、大人のおつまみにそれらは戦場を選ばない人気者。

 

「これはぁ、激アツだよねぇ! 買いっ。シャウエッセンと同じくらいうまーじゃんえぇ」

 

 烏子は躊躇なく、カートにグランドアルトバイエルンを入れた。

 

「クハハハハ! それは楽しみである!」

 

 ソーセージ、ウィンナーが嫌いな人は少ない。

 

「明日の朝餉が今から楽しみであるな? 飛鳥よ。余はご飯を二杯食べるとしよう!」

 

 魔王様のご飯おかわり宣言が行われる。

 

「飛鳥もー! たくさんご飯食べるー!」

「飛鳥ぁ、お姉ちゃん。飛鳥がたくさん食べるようになったの嬉しいけどぉ。食べれる量をぉ、食べなねぇ? 残したら勿体無いよぉ」

 

 魔王様が来てから少食の飛鳥はよく食べるようになった。

 

「大丈夫だもん! 残さないもん!」

 

 嬉しいかな、魔王様が来てから心身共に飛鳥は元気になった。

 

 1キロのマーガリンをカートに入れるといよいよ飛鳥の待っていたお菓子コーナーが広がる。

 

「どれにしようかなぁ!」

 

 コストコのお菓子は基本大容量の物しかない。駄菓子屋感覚で少しずつ買うというのは不可能。

 

「ポテチも化け物みたいなサイズであるな?」

 

 と、普段食べているポテトチップスと大きさを比較して魔王様が驚く。

 

「ここは大容量のお菓子しか売ってないからねぇ。飛鳥は何を買うのかなぁ?」

「えっとねー、どうしようかなぁー」

「なんでも好きなの買ったら良いからねぇ? でも食べ過ぎは気をつけなよぉ?」

「うん! 大丈夫!」

 

 飛鳥はその日食べるおやつの量をしっかりと守っているので心配はない事は烏子も知っているのだが、一応保護者としての確認みたいなものである。

 

「たくさんあるから迷っちゃうなぁ。魔王様はどれがいい?」

 

 そう魔王様に飛鳥は言うと魔王様は真剣に悩む。

 

「うむ、確かにこれは決めかねるな! クハハハハ!」

 

 笑う魔王様をみて飛鳥も嬉しくなる。

 

「うん! 全然決められない! あははは!」

「ゆっくりとじっくりと考えれば良い。悩むのもまた楽しいものだからな」

 

 ポンと魔王様は飛鳥の頭に手を乗せる。烏子はこの魔王様の行動に関して、もしかすると魔王様は元の世界に子供がいるんじゃないかと考えていた。これだけ美形なら女性の魔物も引くて数多だろう。とか考えたが、魔物の美的センスが人間と同じか分からないのでこの考えは一旦保留した。

 すると飛鳥の方に動きがあった。ようやくお目当てのお菓子が見つかったらしい、そこには人だかりができており、どうやら半額キャンペーン商品。

 

「あー! 私、これにする! ハリボー」

 

 魔王様と初めて会った時も飛鳥はこれを持っていた。バケツサイズで随分長く食べられる。

 

「ハリボーか、それは美味いからな!」

 

 魔王様もお気に入りのお菓子の一つである。

 

「それ半額で安いから、もう少しお菓子買っちゃおうか?」

 

 烏子はおつまみ系お菓子のアソートと小魚アーモンをカートに入れる。魔王様が興味を持っていたカークランドの1キロポテチも入れる。

 

「食べ物はこのくらいで良いかな?」

 

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