【幕間6】魔王様、ぎょーすー行こうよ!
「魔王様ぁ、飛鳥ぁ! お昼ご飯はお金置いておくからカップヌードルとコンビニのオニギリ食べててねぇ! 火は使っちゃダメだからねぇ。お家出る時は戸締りしっかりしてねぇ! それじゃあお姉ちゃん行ってきまぁす!」
「行ってらっしゃい!」
「クハハハ! 烏子よ行ってらっしゃいであるぞ!」
休みのハズだったが急遽仕事が入った烏子はカロリーメイトを咥えながら走ってマンションの部屋を出て行ってしまった。2000円を置いていった烏子、それを一枚だけ持って飛鳥は魔王様に言う。
「魔王様! お昼ご飯買いに行こう!」
「うむ! が、その紙幣。二枚いらぬのか?」
その魔王様の言葉に飛鳥はチッチッチと指を振って悪い顔をする。と言ってもとても良い子の判断をしたのだが。
「お姉ちゃん、急いでる時はすぐにマンションの下のコンビニを使おうとするの。でも少し離れたところのスーパーの方が安いの! 節約」
烏子は一般的な会社員よりも実は稼いでいる。未成年後見人制度を用いて補助金も飛鳥が18歳になるまでは出る。烏子は両親がいないというディスアドバンテージが飛鳥の経験や成長の機会損失にならないようにやりたい事は全て叶えてあげるつもりで働いている。飛鳥が大学に入るまでのお金は自分が稼ぐと、お金で苦労はさせていないと思っているが、飛鳥も小学生だが姉の烏子の負担になっているという自覚があった。
そして魔王様はそんな二人の関係性を瞬時に察知した。
「クハハハハ! 飛鳥は賢い! 実に烏子も鼻が高いであろう! ではすぅぱぁに向かうとしよう!」
「うん!」
しっかりとマンションの部屋の戸締りをして、「この部屋に悪意を持って立ち入ろうとするものに死の恐怖を与えよ!」と魔王様と飛鳥は魔法をかけて部屋を出る。
二人は仲良く手を繋いで、赤信号では当然止まり、青になったら手をあげて渡る。マンションを出た目の前にあるコンビニには目もくれず、飛鳥の誘導で十分程歩いた先に目的地のスーパーが現れた。
「魔王様、ぎょーすー行こう!」
「ぎょーすーであるか! クハハハハ! 面白い」
そう、業務用スーパーに二人はお昼ご飯を買いにやってきた。
「ここでカップ麺とおにぎりを買えば、コンビニより半分くらいのお金になるの!」
「ほぉ! それはいかに?」
「コンビニのおにぎりは安いので115円とかだけど、ぎょーすーのおにぎりは一番安いので55円とかなの!」
「おぉ! 価格破壊であるな! 商業ギルドとかに命を狙われそうな価格設定であるな!」
「カップ麺も安いの!」
有名なメーカーの物でもコンビニより50円程安く、みたことも聞いたこともない商品に至っては全て100円以下で売られている。そんな激安カップ麺を選ばずに飛鳥は日清のカップヌードルシーフード味を選んだ。
「安いカップ麺はあんまり美味しくないの。これが魔王様、美味しいの!」
「クハハハハ! 飛鳥が言うのであれば間違いなかろう!」
おにぎりを一つずつ、日清のカップヌードルシーフードを二つ。そしてクッキーを一箱購入。しめてお値段、491円。飛鳥の買い物上手が光った。それを家から持ってきたトートバックに入れてマンションへと戻る。きた道を戻りながら魔王様は烏子が提示した金額の4分の1の金額で買い物を済ませた飛鳥を賞賛しつつも、
「飛鳥よ」
「なぁに? 魔王様」
「我慢をしてはならんぞ? 我慢できなくなった時は余に言うといい!」
優しく飛鳥の頭を撫でる魔王様。それに飛鳥は目を大きくして、子どもらしく笑った。
「前は寂しかったけど、いまは魔王様いるから飛鳥はへーき! 魔王様、ずーっとお姉ちゃんと飛鳥と一緒にいてね!」
「クハハハハ! 憂い奴よ!」
家に帰ると飛鳥は電子ケトルのお湯ではなくて、熱々のホットミルクを電子レンジで作るとそれを日清カップヌードルシーフードに注ぐ。魔改造レシピ、クラムチャウダー味を作って魔王様に差し出した。
「手を合わせてください! いただきます!」
「いただきますである!」
フォークで二人は上品にちゅるちゅるとそれを食べる。沸かした牛乳で作ったカップヌードルシーフードはチーズのような、シチューのような上品な味わいに変わり、思わず魔王様も。
「おぉ! これは美味い! 飛鳥、褒めてつかわそう!」
「魔王様に褒められちゃったぁ」
と笑いながら、次は業務用スーパーのおにぎりをむいてパクりと魔王様は食べた。普通に美味しい。不味くはない……不味くはないのだが……
「ふむ、これはコンビニの方が少し美味いな。が、良い! コンビニのおにぎりにはない味わいである!」
飛鳥は余ったお金を貯金箱に入れる。お金をこの年で貯めるとは大したものだなと魔王様は手についた米粒を食べるとそのお金の使い道を尋ねる。
「何か欲しいものでもあるのか? 飛鳥よ」
「ううん、お姉ちゃんの誕生日の時に何か買ってあげたくて貯めてるの。飛鳥、まだ子供だからお仕事できないし」
またしても魔王様に飛鳥は褒められて頭を撫でられる。魔王様はそんな飛鳥を見て世話になっている二人に何か贈り物の一つでもしないとならないなと考えていた。
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