4.コストコの試食と魔王様①
めちゃくちゃお酒売り場で悩んでいる烏子、ワインは大好きだ。
(いやいや、そもそもお酒と名のつく物は全て大好きなんだよなぁ)
一人一つ、欲しい物を購入するというルールの中で基本的に烏子が購入する物はお酒になる。
だがしかし、ドンキホーテなどで購入した方が安いお酒も多々存在しているので、ここはコストコでは置いていない超ビックサイズのお酒を選ぶか、あるいはコストコオリジナルブランドのカークランド製品を選ぶか、悩みどころなのである。そして追い打ちと呼べる程に試飲したワインは恐ろしく美味かった。
悩みに悩んだところで、赤葡萄の超有名品種をカルベネソーヴィニヨンを使った5Lのボックスワインを今回の買い物で欲しい物として烏子は選んだ。
当然悔いはない。
「お姉ちゃん、お酒飲み過ぎ、沢山飲んじゃダメだよ! 約束して!」
と妹の飛鳥に言われる始末である。
小学生の妹に身体の心配をされるというのは実に恥ずかしい事だが、お酒に関しては遺伝子の中に組み込まれているのかどうしてもやめられない。
飛鳥の頭を撫でて頷く烏子。
確かにお酒と長く付き合うのは適量を呑む事なんだろうなと烏子も分かってはいるのだが、こればかりはやめられない。曖昧な烏子に対して飛鳥は魔王様にお願いするような表情を見せる。
「クハハハハハハ! 烏子よ。酒は美味いが飲み過ぎは体に悪かろう? 今日はもう呑むでないぞ。たった一人の妹を心配させるでない!」
家では大黒柱のはずが、お酒が絡むとどうも思考か幼児化するのか、こうして魔王様にお叱りを受ける事が多々あり、こんなのも意外と悪くないなと烏子は思う。
ガラガラとカートを押して、続いてパンのコーナーへとやって来た。ここで購入するのはコストコの有名な丸いパン、ディナーロール。
それを一袋魔王様は持ち上げると、カートに入れる。
「いつものパンであるな! クハハハハ! これはうまい」
「ベタにうまいよねぇ」
「飛鳥も大好き!」
「む? あれは新作のパンを配っておると申しておるな」
「へぇ、ギリシャヨーグルトを使ったパンみたいだねぇ。よし! 並んで食べてみようかぁ? レッコゴー」
コストコはあらゆる場所で試食コーナーがある。
今回はギリシャヨーグルトを塗り込まれているパンという事でどんな味なのか見当もつかない。ずっしりと重そうなそれを一口大に切り分けて配ってくれる列に並ぶ三人。子供の分は大人が取る事をお願いされている。
故に、魔王様が自分の分と飛鳥の分を取って飛鳥に大きい方を渡す。烏子も一つもらって邪魔にならないところで試食。しばらく三人で咀嚼してごくんと飲み込む。
想像の斜め上をいくあっさりさ。
普通に美味しい。
「くーはっはっはー! これは実にうまいパンであるな! 褒めて遣わすぞ!」
と、魔王様が烏子と同じ感想を魔王様が述べてくれた。
「これ、確かにぃ、かなり美味しいですねぇ。さてどうでしょう? 698円ですしぃ、これは買いじゃないかと思うんですよねぇ。サンドイッチにしても良さげですし、お二人とも、買いませんかぁ?」
「くーはっはっはー! 良い! 購入を許す!」
「飛鳥も飛鳥もぉ!」
という事でこのギリシャヨーグルトブレッドは買いとカートの中に入れた。家計から出るという事で、必ず一つから除外されるという犬神家の謎ルールに基づき魔王様と飛鳥はまだ欲しい物を入れていない。
パンのコーナーを抜けると次はコストコの大本命、お肉コーナーが現れる。普段スーパーで見かけるお肉パックのおおよそ十倍みたいなラスボス級のパック肉コーナーなのだが、牛タンなど目を疑う安さだったりするが、下ごしらへをしていなかったりと手間がかかる肉も多い。買ったはいいが、調理が面倒で放置してしまうという事を回避する為にここではしっかりとした見極めが大事と言える。
そしてそんな中、ここでも試食が開催されていた。コストコの代名詞と言ってもいいカークランドのプルコギビーフである。お肉人気は凄まじく長蛇の列が出来上がっていた。飛鳥が食べたそうにしているので、魔王様はカートを試食の列に向ける。そして、魔王様達の番になった時最後の一つだった。
魔王様はそれを受け取ると、飛鳥に渡す。飛鳥は半分食べてそれを魔王様に渡すので、魔王様は大笑いしてそれをさらに半分食べ残りを烏子に渡した。とても美味しい。しかし、このプルコギビーフ、まだ家に随分残って冷凍保管しているので今回は見送りという事になる。代わりにこれまたコストコの代名詞である丸鷄の丸焼き。ロティサリーチキンを購入する事にした。
800円程の破格の価格で提供されている。
見た目の派手さに負けないくらい味も美味しい。コストコ製品は総計は高い場合があるが、ハズレという物が極めて少ない傾向にあり、ここが人気の秘密とも言える。
「クーハッハッハー! この鳥の肉は余の大好物である!」
残ってもアレンジ料理にしやすいので割と定期的に犬神家ではロティーサリーチキンを購入する事があって魔王様もよく知った食材だった。
「よし、余の欲しい物を決めたぞ烏子よ!」
魔王様は目をキラキラと輝かせてお肉コーナーの隣にある冷凍の巨大なチーズピザを一枚カゴに入れた。冷凍庫に入らないサイズなので切って冷凍する必要があるそれを魔王様は選んだ。以前、みんなで食べて美味しかった記憶が蘇ったのだ。
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