第41話 さあ、ナグを鑑定しよう

 俺はナグの方をみて、腰に手を当てながらスキルを使う。


「【鑑定】」

「あ、私もするんですか? ――別にいいですけど・・・・」


 ナグ


 レベル14


 HP  140

 MP  210

 力   98(+100)

 素早さ 126(+100)

 器用さ 252(+100)

 魔力  -224(-100)

 運   +80

 性質  -80

 称号アビリティ なし

 才能スキル 【召喚】【負荷(大)】

 スキル なし


 俺は目を見開いた・・・・・。


「・・・・・・【負荷クレイドル】だと?」


「どうしたんですか?」


 俺の驚きにナグが首を傾げる。


「いや・・・お前が、俺の知り合いと同じスキルを所持していて驚いただけだ」

「【召喚】ですか?」

「違う、お前の祝福の方だ」

「あ・・・・【負荷(大)】・・・ですか。――怖い名前ですよね」

〔いや。俺の知る限りこれの所持者は、やはり〝聖女〟と呼ばれていたぞ〕

〔えっ〕


 ナグが目を見開く。


〔魔力を神聖力に変えるスキルだこれは。だが知り合いは【負荷(小)】だった――大とはなんだ?〕


 俺は【負荷(大)】に鑑定を使う。


 レベルが成長する際、力、素早さ、器用さをそれぞれ10追加する。同時にæãƒを100追加する。(範囲)

 

 さらに常時周囲の力、素早さ、器用さ、æãƒをそれぞれ最大100追加する。

 近寄るほど効果は高くなる、接触時最大になる。(範囲)

                                    ◢

 

「なんだこの文字は――確か、文字化け瑕疵バグの一種か」

「怖い文字ですよね・・・絶対に穢だって謂われて、確かにそうとしか視えませんし」


 ナグに【鑑定】結果は視えていない。


 神殿で説明を受けたのだろう。

 しかし――


「いや、お前の祝福の様子からしてこれは神聖力と訳されるべき部分だ」

「―――し、神聖力!?」


 ナグが口元を押さえて、瞳を揺らしている。


 自分も周りもずっと穢だと信じていた物が、実は本当に神聖力を上昇させるための祝福と云うべきスキルだった事に驚きを隠せないようだ。


「――何者かの作為を感じるな―――しかし、まて。俺は絶望の箱討伐時、お前と接触していたよな?」

「ですね、抱っこされてました」


 恥ずかしそうに言うナグだが、俺は彼女を抱く手を緩めながら呟く。


 この説明を読む限り、俺がレベルアップする際に上がる魔力、つまり減る神聖力はナグの祝福によって抑えられていたのか。


「・・・・という事は・・・・」


 俺のレベルアップ時に、神聖力が減る量は20なんて物ではなかった。

 ――100だ。

 レベルが99になる頃には1/3近く弱くなる。

 ・・・・なんてこった・・・・。

 こんな事は流石に、〝つまらない〟で済ませるレベルではない。


「にしても、セウルくんってホント実験好きですよね―――」


 俺から開放され、ため息をついたナグに、俺は真剣な瞳を向けた。


 言っておかねばならない。


「ナグ、やはり俺にはお前が必要だ」

「へ?・・・・」

「俺はもう、お前無しでは生きていけない」

「・・・・・・・・な、ななななななな!!」


 俺はナグを手放すつもりはないと、その手を持って引き寄せる。

 そして眼の前に来たナグの目を覗き込みながら、言った。


「一生、俺と一緒にいろ」

「な、なに、何を言い出すんですかあ―――っ!?」


 顔を真っ赤にするナグ。

 驚きで感情が高ぶりすぎたのか、瞳が濡れてきている。


「こんなところで・・・・周りにみなさんがいるのにぃ――」


 ナグは顔を隠して俯く。


「――私は、おーけーですけどお」


 そんな様子を見ていた狂戦士と、楽師が笑う。


「熱いな、お二人さん。しかし―――すごい勇気だったぜ嬢ちゃん。パンドラの複雑な攻撃の一発でおっちんじまうのに、全く止まらねぇ」

「ほとんど狂気だったヨ」

「狂戦士の俺でも、あそこまで狂えねぇよ」


 そんな事を言われたナグが「えっと――」と照れ笑いをした。


「――私はセウルくんを、信じてただけです」


 そんな歯の浮くような台詞を言う、ナグ。

 さて、ここには討伐パーティーメンバーしかいない。


 俺はメンバーに「少し頼みが有る」と言って話す。


「俺の戦いの事は、黙っておいてくれないか? ナグの事も――いいなナグ」

「セウルくんなら何か考えがあるだと思いますし、私は全然」


 すると、ギョっとしたのは狂戦士と楽師。


「なんでだよ! あんなスゲェ戦い、みんなに話せば!」

「そうだよ、ビックリするヨ!!」


 ありえないと返す。

 すると、金髪剣士が俺をみながら小さな声で尋ねてきた。


〔魔力がマイナス――君は・・・もしかして蝕み子かい?〕

〔―――ああ〕


 烙印は消したが、記録は消せないからな。


「そうか、じゃあ・・・黙っていたほうが良いね」

「おいおいデイン!」


 狂戦士が、意味が分からんと声を上げる。


「ノックス、あまりに強い力っていうのは面倒事も背負い込むものなんだよ」

「俺は力が欲しいぞ!」


 金髪剣士は、困った笑いを作りながら、


「とにかく僕たちだけの秘密にしよう。セウル君の望みだし、彼がいなきゃ僕らは死んでたんだ」

「それは分かってるけどよぉ」


 金髪剣士が俺に向き直る。


〔伝説にある翼の聖女みたいな事になってもね〕

〔すまない〕

〔しかしナグくんの聖獣は目立つね、あれじゃあまるで、本当に聖女だ――殆どの人はあれが白竜の幼生だと気づいてないみたいだけど〕

〔そうだな。黙っていてくれるか〕

〔勿論〕


 ヤナヤの事も考えてやらないとな。

 ――とはいえコレはすぐ問題が消えた。


 ヤナヤは翼が仕舞えるので、そうすると完全に白猫にしかみえなくなったのだ。


 話が着くと、狂戦士が世界石を持ち上げた。


「ま、よくわからんが、とにかく勝ったんだ。テメェ等この〈世界石〉を持って帰って祝勝会に参加するぜ!!」


 ボスの〈世界石〉は売り払った値段を、討伐隊メンバーで折半と決まっている。


「にしてもバカデケェなぁ」「見たこと無いサイズだヨ」「幾らになるんだろうな」

「ちったぁ俺たちを笑顔にしてくれるさ」


 嬉しそうな笑いがこだました。

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