第39話 さあ、みせてやろう
――ゆっくりと、まるで
ミチミチと音を鳴らしながら、箱ゴーレムとを繋ぐ何かを引きちぎって現れてくる白いモノ。
己を腕で抱くようにしたそれは、左右に揺れながら脱皮するように徐々に現れる。
やがて両手を広げて ふわり と宙に浮かんだ。
箱の中から顕れたモノ――――それは〝女のカタチ〟をしていた。
羽根もなしに浮かぶ女のカタチは、俺を視認すると、腕を振った。
ヒュゥゥゥゥゥゥン
〝糸〟が数本、一気に迫る。
「うっとおしい! 〖
俺が地面を踏みつけると、赤熱した衝撃波が〝糸〟を弾いた。
だが、糸を破壊できない。
「大した耐久度だ、ならばその眼に焼き付けろ。〖
俺の頭上に浮かぶ、聖法陣と極光を放つ無数の剣。
一気に32本、作り出した。
狂戦士と槍使いが、叫ぶ。
「なんっ、―――なんだあの数は、多重詠唱だってのかッ? ――しかも無詠唱!?」
「何重だ―――三十二重無詠唱!!!? 嘘だろう!!!?」
「彼は、剣士じゃ、ないのか・・・・!?」
「行け」
ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ ヒュ
ギン ギン ギン ギン ギン ギン ギン
糸が生き物の様にのたうち、振り回される。
バリスタから射出されるように放たれる、剣。
俺と魔蝕崩壊の力が、中央で拮抗する
「足りないか、ならは追加だ! 〖
バスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスババスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバスバス
狂戦士が、
「おい・・・増え・・・、なんだ、俺らぁ何を見ているんだ? 誰か・・・・教えてくれ」
「セ・・・セウルくん・・・貴方・・・・一体?」
ナグも、わななく声だった。
俺は〖神聖剣〗を64本に増やし、空中でコントロールする。
徐々に此方が押していく。
だが、俺のMPも残り少ない。
剣を操作するのには支障ないが、あと数回法術を使うのがやっとだろう。
しかし、このモンスター思い出したぞ。
糸がひとまとまりになり、こちらへ迫る。
俺は剣を並べて受け止める
そこで金髪剣士が呻いた。
「・・・・なんて強さなんだ、・・・・・・あのルーキー、―――魔蝕崩壊に人ひとりで拮抗してしまっている、人間の強さじゃない。仲間のはずなのに・・・怖いよ・・・震えが収まらない」
空中で打ち合わされ続ける、剣と糸。
俺は無数の糸を左右から剣の群れで挟み、相手の手薄な場所を作る。
それは成功し――隙きが出来た。
「そこだ」
遂に、俺の攻撃が
ガキィィィィィ!!
パンドラの体を、俺の神聖剣が横薙ぎにした。
「――ッチ」
俺は、思わず舌打ちをした。
僅かに刃が通ったものの、ほぼ無傷――さらに再生までしている。
「HPは1万を超えていそうだな、剣を握って直接攻撃しないと厳しいか。しかも再生まで備えているなら、一瞬で決める必要がある」
どうやれば近寄れる?
そこでゴーレムがコチラの攻撃を受けたことで危険性に気づいたのか、糸の威力が上がった。
〖神聖剣〗の数本が、糸に砕かれた。
「――そういえばコイツには知性があるんだったな、そこを突くか」
俺は一歩前に出るが、コチラに届く糸の数が増える。
剣が、更に数本砕かれた。
俺には反応速度を上げるモノクルがあるのに、糸の速度がもう見切れない。
今のまま剣を操作して近づくのは、無理だな。
確認した俺は、一旦うしろに飛んで、
「〖
鎖でナグを引き寄せた。
俺のステータスが、グンと上昇したのを感じる。
「お前の力が必要だ、ナグ」
「え、あ――は、はい!!」
「大丈夫か? 少し震えているが」
「いえ、セウルくんが強すぎて少しびっくりしただけです。―――お役に立てるんですね!!」
「頼む」
「はい!」
嬉しそうにするナグに、俺は作戦を伝える。
「――という訳で、この作戦を〝二度は実行できない〟、確実に一度で決めたい。全てはお前に掛かっている」
「少し怖いですが―――わかりました!」
「信じろ、お前は俺が護る」
「―――はいっ!!」
ゲートを開くナグ。
「【召喚】ヤナヤ!!」
右手のゲートから、ヤナヤが飛び出した。
ナグは彼を抱くと、パンドラに向かって駆け出す。
「【
ヤナヤの放った閃光が、パンドラを灼く――だが無傷。
しかし、これはただの牽制。
ナグに向かって、パンドラの糸が殺到。
しかし大丈夫だ、今の俺はナグの〝祝福〟で先程より糸が鮮明に見える。
俺は剣を、全てナグの
無数の剣がナグを中心に回転している。
殆ど、剣で出来た回転する繭だ。
動かすことで剣を簡単に砕かれないようにしている。
だがそれでも、幾つかが砕かれてしまう。
「ヤナヤ飛んで!!」
左手でヤナヤの足を握ったナグが、竜の幼生の羽ばたきで上空に持ち上がる。
右手の〝〈ゲート〉をパンドラへ向けて〟飛んでいく。
ナグは自由に身動きが取れない、糸を自ら躱す事はほぼ不可能だ。
だが、前に進むのは止めない。
糸の攻撃が、どんどんと激しくなる。
剣が砕かれる速度が上がった、残りは半分程度。
流石にナグを覆うのが難しくなった。
俺は、残った剣を操作して糸を弾き続ける。
ナグは、自分の顔を一瞬
「【
再びヤナヤの閃光で、パンドラを牽制。
激しい糸の攻撃のなか、遂にパンドラの頭上まできた。
糸の攻撃が、尋常ではないほど激しい。
そんな中、
「ヤナヤ、ストップ!!」
白竜の幼生が羽ばたくのをやめた。するとナグと竜は、急降下。
そして―――、
ナグは右手の〈ゲート〉で、パンドラの頭を中に捕らえた。
よし。
「【召喚】ゲート、閉じろ!!」
キィィィィィィン
ゲートが消失する。
空間そのものを切断する一撃で、パンドラの首を斬った。
ナグは頭を失ったパンドラの体を蹴って、ヤナヤの羽ばたきで上昇する。
パンドラの体が傾く。
「「「や、やった」」」
「あの嬢ちゃんやりやがった!! ボスを倒――」
狂戦士が、勝利の喝采を挙げようとした。
しかし、パンドラの体が〝もう一度起き上がる〟。
「「「な・・・・!!」」」
パンドラの首の切り口から、さらに無数の糸が出現した。
しかも頭が再生を始めている。
金髪剣士が、周囲を見渡す。
「ナグ君がまずい!! ―――セウル君――え。どこだ!?」
「そういえば、さっきから姿が! ――アイツ、逃げた!?」
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