第32話 さあ、パートナーをみつけよう
そして、白竜の元へたどり着いたのだが。
「・・・・・・・・動きませんね」
体の殆どが純白の体毛に覆われ、僅かに鱗をもつ巨体は全く動かなかった。
「死んでいるようだな」
「よかった・・・・んでしょうか――あれ? ・・・あそこにいるのは」
ミーミーという鳴き声。
巨大な白い竜に寄り添うように、白い猫のような生き物。ただし翼が生えている。
「あれって、もしかして」
ナグが近寄っていく。
「白竜の幼生だな」
「なんか・・・弱ってませんか?」
「食い物がなくて死にかけているんだろう」
「た、大変ですよ!!」
「それは
「赤ちゃんです!」
ナグが恐る恐る近寄って、抱き上げた。
しかしほとんど反応がなく、ぐったりとしている。
弱々しく母を呼ぶように「ミィ」と鳴いているだけだ。
「―――ほ、本当に死にかけてます!! どうしましょう!!」
ナグが顔色悪く、俺を見る。
「お前が餌をやればいい」
言われてナグの涙目が、自分の胸を見た。
「大きいって言いましたが、中身はまだ脂肪しか詰まってませんよ・・・」
「違う、白竜の幼生の食い物は神聖力だ」
「神聖力?」
「要は魔力の反対だ、お前が与えてやればいい」
「わ、私は魔力がマイナスです。ないですよ―――!」
「逆だ、魔力がマイナスだから神聖力を持っているんだ」
「――え?」
ナグが首を傾げた。
俺の言葉の意味が飲み込めないのか、言葉を
「――え――――え――――――」
だんだん声が大きくなっていく。
「――――――――え――」
遂には驚愕にまぶたを開いて、瞳を零さんばかりになった。
「ええええええぇぇぇええええぇぇぇぇえええぇぇぇ!! ――」
自らの震える腕の中の白竜の幼生を見つめる。
「――魔力値って! ―――そういう! ことだったんですか!?」
「やっと分かったか」
そこでナグは、弱る幼生を真剣な目で見た。
「じゃ、じゃあ――どうやってあげるんですか!! やっぱりおっぱいからですか!?」
胸を出そうとする、ナグ。
「無理だやめろ。契約をするのが一番てっとり早い、自動的にお前の神聖力が吸われる」
「契約? ――――って、まさか」
「ああ、〈召喚契約〉だ」
「だから、私はできないんですよ!!」
「いや、この白竜の幼生となら出来る。魔獣の餌は魔力だ、お前が魔獣と契約できなかったのは、魔力を持たず神聖力しか持っていなかったからだ。そして、白竜は魔獣ではなく聖獣だ」
「・・・聖獣?」
「お前は〝蝕み子〟どころか、聖獣と契約できる〝
ナグが殴られたような表情になって、震えだした。
「・・・・・・・・・・・・せ、せせ、せいじょ?」
「そうだ。お前は〝蝕み子〟なんかじゃない、逆だ〝聖女〟だ」
そこで白竜の幼生が鳴いた。
「・・・・・・・・・みぃ」
その声に「ハッ」となったナグが慌てて俺に尋ねてきた。
「ど、どうやって契約するんですか!! 早く教えて下さい!!」
「身を清めて」
「身を清める、どこで!?」
俺はナグの頭に手を乗せる。
「〖
サバッ
「カハッ」
ずぶ濡れになるナグ。
「あとは相手の額に手を当て、竜語で〝汝、我を主とする契約を結ぶか〟と尋ねるんだ。すると〈聖痕〉が、聖獣の額に現れるはずだ」
「竜語!?」
「エス キ カデル レトラ マノセム」
ナグは、我が子のように抱える白竜の幼生の額に手を当てて、呟いていく。
「エ―――エ、エス キ カデル レトラ マノセム」
「・・・・・・ミィ・・・」
「セウルくん、何もでませんよ!!」
「――幼生が望まないのか? お前の神聖力は感じている筈だが」
「そんな―――こんなに弱ってるのに!」
「いや――そうか、幼生だから竜語がわからないのだ、俺としたことが」
「そ、そんな理由! 他に方法はないんですか!!」
「叩き伏せて分からせる」
「弱ってるから、助けたいんですよ!!」
「これは、もう駄目かもしれないな」
「・・・ミィ・・・ィ・・・」
まずいな息が弱い、本格的に弱っている。
「無理だな、その幼生は死ぬ」
俺は「諦めよう」と言おうとしたが。
「死んでは駄目です! お願い、契約して!」
ナグが白竜の幼生をますます抱きしめる。
強くではない、深く優しく。
「お願いです、気づいてください! ―――私はあなたを助けたいんです!」
無理だ、言葉が通じなければどうしようもない。
「・・・・・・・・ミ・・・・・・」
「お願いです、お願い―――」
弱っていく幼生を見たナグの頬に、熱い雫が伝った。
その様子をみた震える白竜の幼生が、力なく―――しかし優しくナグの頬を舐めた。
刹那。
幼生の体が一気に輝いて、光が額に収束していく。
白竜の幼生が温かい風に吹かれているような顔をしたかと思うと、光の後には額に女神の使徒を示す〝逆三角形の中に、縦線を一本引いたようなルーン〟が刻まれていた。
「あ、吸われてます!! 私の力吸われてるのがわか――」
そこまで言うと、ナグは気を失った。
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