第17話 さあ、仲間を勧誘しよう

「ロファ。彼女のけがれはなんだ?」

「〝周囲の人間の魔力を下げて、他のステータスを上昇させる〟だね・・・あと〝周りの人間がレベルが上がる時、魔力を大きく下げて他のステータスは少し上昇させる〟もう一つあるらしいけど、教えてくれないんだよね」


 魔力を下げる? それは神聖力を上げると言う事だろう。

 そして他の能力を上げるなら、


「それはむしろ、祝福ではないか?」

「知らないよ、蝕み子だって謂われちゃったんだから」

「烙印を押されたのか」

「お尻にあるらしいよ」


 なぜそんな妙な場所に。

 まあいい。

 悲しそうに空いている席に座って、井戸水だけを注文し項垂れた、ナグ。

 彼女に、まだ追い打ちが掛かる。


「払えなきゃ、奴隷として娼館に売り払うわよ!!」

「次の返済日忘れるなよ!」


 うなだれ、泣きそうな顔をしている女に、俺は声を掛けた。


「おいナグとやら、俺のパーティーに入るか?」

「え?」


 呼ばれてぽかんと口を開けた女が、こちらをみた。

 彼女の元・パーティーメンバーも、こちらを見ている。

 しかし、俺の姿を見た瞬間ナグという女の顔が曇った。


「えっと、私が言うのは非常に烏滸おこがましいのですが・・・・・・貴方は―――お、お一人ですか?」

「そうだ」

「そ、そうですか―――お声掛けは、とても、とても・・・あの―――ありがたいのですが・・・・・・」


 どうやら彼女は、俺の年齢を気にしているようだ。


「ぶっ―――ぶはははははは! 良かったなナグ! その坊っちゃんがお前の仲間だ!」

「あっはっは、貴女を守りたいって夢見みがちな騎士様が現れたじゃない!」

「・・・・・・」

「おい、お前! その女は150万の借金があるんだからな!」

「払えなかったら、帝国の娼館にでも奴隷として売り払うんだからね!!」

「・・・・・・」


 このエンドラストは奴隷を禁止しているが、隣国はそうではない。

 ギルドマスターが、かなり眉をひそめている。


「蝕み子で奴隷として売り払われたら、どんな過酷な事になるか」


 俺はナグという女に尋ねる。


「なぜ借金をした」

「えっと・・・この杖とローブを買ってもらったり、あとは私ドジで毎回怪我するんで治療薬ヒールポーション代とか。あとは食事代とか、寝床とかお金が足りない時に」

「知らなかったな、その棒きれとボロ布を、杖とローブと呼ぶなんて」

「辛辣ですね・・・そんなに、ひどい格好ですか」


 そう言って彼女は自分の袖を持って、自分の格好を眺めてから俺を見ると、


「貴方は、きれいな格好ですね」


 感想を言った。

 するとギルドマスターが、


「でもだいぶ趣味が古いよね、かなり前に廃れた流行りだよ」


 などとほざいた。

 俺はギルドマスターを無視する。


「なぜ魔術師風のお前が、そんなに怪我をするんだ」

「出来ることがないので・・・盾役に」

「お前は戦闘向きのステータスだったり、スキルを持っていたりするのか」

「いえ・・・全然」


 戦闘能力もスキルもない人間を盾にしてたのか、そりゃ怪我をする。

 よく死ななかったものだ。


「いくら借りたんだ」

「合計30万タイトです・・・」

「あとは利子か?」

「・・・はい」

「大した暴利だな。俺は剣士のセウル」


 自己紹介する俺に、ギルドマスターが注意してくる。


「まってまって! だから、アレの事をバラすのは駄目だろうけど、魔術師くらいにしておかないと。一番得意なものが分かるクラスにしないと、パーティー組む時に困る筈だよ!」

「何も問題ないじゃないか」


 パーティーを組むつもりが本来無いのだから。このナグという女は特別だ。

 そんな様子に、ナグが尋ねてくる。


「あの―――、セウルさんとギルマスさんはお知り合いなんですか?」


 ワンチャンすごい人? という空気を感じた。

 するとギルドマスターが返す。


「今日知り合ったばかりだけれどね。というか彼、昨日登録したばかりだけれどね――」


 ナグの顔が絶望に沈む。この行き遅れ、俺の勧誘を邪魔する気か?


「――でも」


 ロファがナグを手招きする。

 歩み寄ってくるナグという女。


 確かに近づかれると―――ステータスが上昇した感覚がある。

 しかもこれは、相当上がっているぞ?

 ―――周りの動きがゆっくりになった感覚まである。

 その上、ナグという女に近いほど強化されていくようだ。


 俺が感心していると、ロファは寄ってきた女に耳打ちをした。


〔彼、ボクが今日Dランクにしようとしたんだよ。――断られちゃったけど〕


「え・・・二日でDランクですか!?  私、半年近く冒険者やってて―――まだEなのに!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る