第14話 さあ、ギルドマスターの実力の程を試そう
「―――――――――そこもCランク用の試験場〈鉄の間〉じゃねぇか!!」
「そうだね」
男が、ギルドマスターを睨む。
「・・・・・・そのガキが、死んじまっても知らねぇからな」
「彼なら、大丈夫だよ」
「おい、Fランク」
オルデマという男が、俺に顎をしゃくった。
着いて来いという意味らしい。
そこで俺は、二人に言った。
「いや、俺はFランクのままでいい」
「「「は!?」」」
ギルドマスター、ヒルダ、オルデマが、こいつは何を言っているんだという眼で観てくる。
俺は〝蝕み子〟の法術士だ。
前にもいったが「これは神に嫌われたと烙印を捺した人間が、神聖なる術を使っている」という事だ。
その事実を知れば、困る人間が沢山いる。
目立ちたくないのだ。
(あと、俺は〝よく〟知っている――)
何度も人生を行ったのだから。
(――冒険者ギルドでランクを上げることの不毛さを)
確かに依頼料はアップする、箔もついてなんなら貴族にも会えたりする――が、それが何だというのだ。
金なら俺はいつでも増やせる。
貴族は面倒事しか持ってこない。
しかも冒険者ランクが上がれば、ギルドかも面倒な事が次から次へと舞い込んでくる。
「そ、そういう訳にはいかないよ!! 強い人間はランクを挙げてもらわないと!!」
「そうですよ、ランクアップすればお金も沢山入ってきますし、何より名誉な事なんですよ!!」
「ランクアップを拒否する人間なんて、訊いたこと無いぜ!!」
中間管理職なんかに多いらしいぞ。
給料はあまり上がらないのに、仕事だけ増えるからと。
まあ、ギルドとしてはランクを上げて貰わないと面倒事を頼めないしな。
「では、こうしよう――」
俺は提案する。
「――俺が勝ったら、昇格は無しだ」
「「「逆だから―――っ!!」」」
いいや逆ではないぞ、俺にとってランクアップはただの邪魔でしか無い。
なので「では、冒険者ギルドから脱退しよう」そんな風に言うと、ギルドマスターが頭を抱えながらも「Bランクのオルデマさんなら、万が一にも負けることはないか」と、俺の提案を飲んだ。
オルデマは「別に、脱退させれば良いじゃねぇか」と言ってギルドマスターを訝しがっていたが。
「じゃあオルデマさんに負けたら今後は、しっかりランクを上げてもらうからね。文句はなしだよ。よしオルデマさん試験を頼むよ、彼の実力とか関係なしに叩き伏せてくれていい」
ギルドマスターの言葉に顔を歪ませたオルデマが、鉄の扉に向かう。
「死んでも知らんぞ。―――ったく、なんだかよく分からん試験になっちまった――」
オルデマの嫌そうな顔が振り向いた。
「――なんで俺が、こんな冒険者になりたてのガキ相手に試験をしねぇといけねぇんだ。Fランクなら、見た目通りのヒョロヒョロでチビな雑魚じゃねぇか」
俺たちが隣の部屋に行くと、鉄の扉が重々しく閉じられた。
そうして歴戦の戦士は俺に向き直ると、巨大な剣を抜く。
「開始だ、全力を出せよ」
試験が始まった。
ド――――――――――――……
俺はギルドマスターの執務室に戻る。
受付嬢とギルドマスターが、眼を丸くして扉を見ていたので直ぐに目が合った。
「終わったぞ」
「も、もう終わったんですか・・・というか、終了を伝えるのはオルデマさんの役目なんですが――まさか、オルデマさんが負けたんですか!?」
「負けた!? そんな馬鹿な!! 今の音はなんだい!?」
「全力を出せと言われたが、一応手加減をしておいた」
「・・・手加減?」
目を見開いたまま訝しがったギルドマスターが、隣部屋に駆け込む。
壁にめり込んだ、冒険者がいた。
「オルデマ!! ――何だこれは、前衛絵画かいッ!?」
「ロファェ―――スマネェ―――
言って彼は意識を失った。
きちんと〖
「オルデマさん!! オルデマさぁぁぁん!!」
歴戦冒険者を揺らすギルドマスターの目が、俺を見た。
「何をしたんだい!?」
「魔術を放っただけだ」
「だけって・・・」
ギルドマスターがオルデマを床に寝かしながら、辺りを見回す。
鉄で出来た部屋の四方の壁が
「焼けた痕とかもないし、風魔術でココまでの威力? ―――どういう」
呟いたかと思うと、ギルドマスターが腰の剣を抜いた。
驚きの声を挙げたのは、受付嬢だ。
「ちょ、ギルマス・・・・・・なにして! ・・・・・・」
ギルドマスターが、俺を睨む。
「試験は、ここからが本番だよ」
「ふむ」
「ヒュ」
鋭い息と共に弾き出された、切っ先。
部屋隣の部屋の
「〖
ガッシャァアアアン
俺の放った衝撃波に、ギルドマスター室の机や書類が吹き飛んだ。
しかし、ギルドマスターは吹き飛んではいなかった。
執務室の天井ギリギリまで跳び上がって、衝撃波を躱していた。
それを見た俺は、
「ほう――」
感嘆の声を挙げる。
さっきの試験官を吹き飛ばしたのと、同じ速さの〖聖撃〗だった。
「――マスターを名乗るだけは有るな」
「ずいぶん、上から言ってくれるね・・・―――なるほど、今の魔術の〝上位版〟をオルデマさんに放ったのか!」
「少し違うが、そんな所だ。で、なんの真似だこれは。試験は終わっただろう」
「いいや終わってない。君のようなルーキー放おっておけない! ランクはともかく、君の実力は知っておくべきだ。ここからは、ボクが試験官だよ!!」
天井を蹴って再び俺に接近しする、ギルドマスター。
俺は腕を組んで、彼女の一撃を躱す。
「まあ良いだろう、お前を倒せば試験官をつとめられる奴も他にはいまい。〖
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
極光を放つ5本の剣が鼠獣人に迫る。
「え? ――――う・・・うそだろう無詠唱で、五つの魔術を同時に!?」
再び俺に迫ろうとしていたギルドマスターは驚愕の声を挙げながらも、自らの剣で三本の〖神聖剣〗を弾き飛ばし、一本は体を捻って避けた。
だが、のこり一本はどうする?
「破ッ!!」
ギルドマスターは体から、ただの魔力を放って弾いた。
「なるほど、ずいぶん自らを練っている――」
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