第12話 さあ、若き才能達を育もう

「いやいや・・・・〖終炎〗は、ほぼ千年前から存在する魔術ですよ」


 後ろの導師が「流石に・・・」という感じで答えた。

 しかし、若干「あり得るんじゃないだろうか?」という声色も籠もっていた。

 確かに〖終炎〗は、俺のオリジナルだ。

 はじめの頃は、これが得意魔術だった。


「そうだな。まあ、完全版を作った。と言う感じだ」


 俺は茶を啜りながら、事実を湾曲して伝えておいた。

 しかしそれで合点がいったらしいロッペパンや導師達が、大きく頷いた。


「なるほど!!」


 俺はまどろみむような表情の女に声をかける。


「そういえば、ルルアよ」


 彼女が顔を挙げた。


「なに? 師匠」


 呼ばれて少し喜色が籠もっている。


「コモンマジックの普及は進んでいるか?」

「あ・・・うん、師匠に言われた通り大陸中の賢者学院で普及を進めたわ、もう大陸中に浸透しきった」

「ありがとう」


 俺はルルアの頭を撫でた。

 すると、心地よさそうに再びまどろむ女性が、俺にしか聞こえない声で言った。


〔師匠が色々魔器を発明してたから、簡単だった〕


 そこで青年が目を輝かせる。


「魔力がゼロやマイナスでも魔術が使える様になる、コモンマジックですね」

「そうだ」

「最近あれが出来てから、世の中変わりましたよね。つまり、大師匠はコモンマジックの普及に貢献してるんですね!」

「ちがう、コモンマジックも師匠が作ったの」

「「「・・・・・・」」」


 ルルアの声に、3人が絶句した。

 まあ、最初の最初、コモンマジックに必要な魔器は譲り受けたんだがな。

 そこから魔器で使える術を生み出し、完成させた。

 そして俺の転生、何代か前から気になっていたことがあった。

 魔力ゼロの〝蝕み子〟の存在。彼らが〝蝕み子〟と呼ばれないように、何代かかけて世の中の常識を変えつつ、同時に誰でも魔術を使えるように開発を進めていた。

 しかし何故かこのコモンマジック、誰にでも使えるような技術であるのに俺にしか使えなかった。

 研究の結果、フリオの時代に誰にでも使えるように出来たので、コモンマジックを利用して作った魔器と一緒にルルアに普及させるように頼んだのだ。


「師匠の願いの為に、急いで最高大魔導師になったわ」

「そうか、本当にありがとうな、ルルア」

「・・・うん」


 嬉しそうに、顔を埋めてくるルルアを優しく撫でる。

 すると、ルルアが俺に尋ねてきた。


「・・・お姉さん、生き返らせれそう?」

「まだ方法は見つかっていない、だが」


 俺はルルアに小声で耳打ちする。


〔法術が使えるようになった〕

「すごい」

「けれど無理だろうな、この世界には人を蘇らせる魔術も法術もない。神ですら人を蘇えらせるのは不可能らしい」

「・・・・そうなの」


 俺を助けるために死んだ姉さんに文句を言う。俺が1000年間、転生を続けている理由だ。

 寂しそうにするルルアだった。


 その後は、ロッペパンと導師たちに魔術の講義。


「――つまり魔術の四大属性。土、水、風、雷とは状態変化の事だ。個体、液体、気体、雷体、これらの形態を別の属性として認識しているのが間違いなのだ。土を熱するほど柔らかく自由になり、やがて雷になる」

「想像も付きませんが」

「この世のすべての物質は界素という粒で出来ているだろう。その結合がどんどんゆるくなり、最後には散らばる」

「イメージできました! それでは、我々が属性と思って得手不得手にしているのは」

「認識のミスだ。四属性は一つの属性なのだから一つの使い方で全てが使いこなせる。この四属性をまとめ言う時、俺は相転移属性と呼んでいる」

「「「な、なるほど!!」」」

「ではフリオ様の使う魔術も、相転移属性なのですか!?」

「まあ、その様なものだ」


 そんな風に講義を終えて、


「では用事も終わったので、俺はギルドのクエストがあるから行く事にする」

「・・・いやだわ・・・」


 ルルアが俺に抱きついて邪魔をしてくる。

 その手をゆっくりと離す。


「そうですよ大師匠! もう少しゆっくりして、魔術を教えて下さい」

「「お願いします!!」」

「また来る」


 俺が立ち上がると、二人の導師が頭を下げてくる。


「最初は失礼しました――――その、失礼ついでに・・・もし良かったら今度、学院で授業して下さいませんか!!」

「ああ、気が向いたらな」

「フリオ」


 ルルアが俺を見上げて言った。


「どうした」

「わたし、レベルが最大の99になったわ」


 その言葉に俺が破顔したので、ルルアも嬉しそうにした。

 俺は小さな声で、ルルアに尋ねる。


〔お前のレベル上限が98以下じゃ無くてよかった。転生できるんだなお前も〕

〔そうみたい〕


 俺の1000年間には沢山の仲間が居たが、レベル上限には差があり、99までレベルを到達できた人間は一握りだ。

 10人ほどしか居ない。

 レベル上限は魂に刻まれたものらしい。


〔転生するのか?〕

〔師匠が生きてる間はしないとおもう。今度こそ、師匠と結婚するつもりだから。師匠の前世では無理だったけれど〕

〔お前は、またそれか〕


「また、来てね」

「ああ」


 ルルアに答えて賢者学院を後にした。


「少し時間を喰ったな。〖聖撃フォース〗で飛んで向かうか」

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