第11話 さあ、弟子(世界最強の魔術師)と再会しよう

 ◆◇◆◇◆◇◆




「大師匠は、ルルア師匠とどこで出会ったんですか!?」


 ロッペパンが、俺の膝の上でこちらに抱きついているルルアと、俺を交互に見やり興奮気味に尋ねた。

 今は最高大魔導師用の応接室で、最近東洋から入ってきたという茶とガレットを口にしている。

 砂糖は高いだろうに、大した歓迎だ。

 ちなみに俺たちの後ろにはハリスとキース二人の導師が控えてる。下がって良いと言われたのに「「フリオ様の言葉を拝聴させてください!!」」と言ってきた。

 断る理由もないのでそのままにした。


「北の大国シレスヘイムの氷の妖精族の里だな、儀式の最中だった」


 タムリンは倦怠気な無表情で答える。


「・・・うん、わたしが泣いてる所に来てくれたの」


 そして沈黙が流れる。

 俺もルルアも、あまり語るタイプではないからな。


「泣いてたとは・・・?」


 ロッペパンの言葉に、俺が答える。


「まあ、色々あってな。早い話ルルアの魔力が高すぎて、常に周囲の物や人を凍らせてしまっていた。なので此奴こやつに魔力のコントロール方法を教えてやっただけだ」


 その結果、懐かれて今に至る。


「〝だけ〟・・・ですか。確かルルア師匠の魔力は強すぎてコントロールするだけでもヤバいって聴いたことが」


 ほぼ生まれながらに、魔力値10000。

 転生者なら、記憶が戻る時期が近くなると急激に能力が伸びていくのであまり問題ない。

 しかしルルアの場合、生まれながらにとんでもない魔力を抱えてしまった。

 それは子供にとって、不幸でしかなかった。

 本人の意思と関係なく、近づくものを氷漬けにしてしまう。

 そんな子どもは周囲からは恐れられ、幽閉された。

 最後には――


 ルルアが、俺に胸に顔を埋めて呟く。

 もう20歳を超えただろうに、まるで子供のままだ。

 氷の妖精族は第二次性徴までは人間と同じ様に成長し、そこで老化がほとんど止まる。

 だから14くらいに見えるが、精神年齢まで見た目通りだ。


「・・・みんなからはバケモノって呼ばれてたわ」

「ルルア師匠をバケモノって酷いです!!」

「ひ、酷い!!」

「そうだな、あれは爆――」


 俺が言葉を続けようとすると、ルルアが俺の口にガレットを放り込む。

 ここから先は話してほしくないらしい。

 俺は話を切り替える。


「そういえば導師総括よ(もぐもぐ)」

「はいなんでしょうか!!」


 目を輝かせて、俺を見るロッペパン。


「いきなり使っていたが、〖終炎ワァズ〗が得意魔術なのか?」

「そ、そうなれたら良いなと思っています!」

「今日のように無闇に使わないなら、良い事を教えてやろう」

「もちろん、大師匠のお言葉なら無闇に使いません!!」

「そうか、では――」


 俺は、一呼吸置いて、空中にルーンを示しながら語る。


「――イエザ イエム イャリ――の前に。〝扉元開闢ひげんかいびゃく、いでよ真語の原理〟と付け加えてみろ。それから〝イエム〟ではなく、〝イェム〟にしてみろ――イエムだと、この世界の言葉だ」

「この世界の言葉? なんですか・・・その――――――――あ!! そうか!!」


 俺がすこし説明しただけで、原理を理解した様である。

 なるほど、才だな。


「さっそくですが試してみていいですか! ――えっとこれは無闇になりますか?」


 青年のそんな言葉に、俺の後ろで「え、ここでですか」という引きつった声が聞こえた。


「大丈夫だ。俺が爆発を押さえてやる。試してみるといい」

「はい! ありがとうございます! では行きます!! ――扉元開闢ひげんかいびゃく、いでよ真語の原理―――イエザ イェム イャリ―――深き者よ我が声を聞き届けよ、来たれ、第一の証人。時の摂理のほか架説かせつの闇。四属万物。汝に有るは力の原理。今、たちどころに顕現せよ―――〖終炎ワァズ〗!!」


 俺は、神聖力で出現した黒焔球こくえんきゅうを包む。

 青年魔術師が、目を輝かせて歓声を挙げる。

 教えられてすぐにあの詠唱をして成功させるとは、素晴らしい才能だ。

 実力の無い者では、発動すらできないというのに。


「す、凄い!! これ威力が1.5倍くらいになってませんか!!」

「分かるのか、大したものだ。それが完全版〖終炎〗だ」

「か、完全版?!」


 部屋がざわつく。

 俺とルルア以外だが。


「な、なぜそんな物を知ってるんですか!!」


 ルルアがまどろむように俺に体を預けながら、云う。


「〖終炎〗を作ったのは、師匠よ」

「「「は??」」」

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