第6話 さあ、実験を終えよう
周りを見渡すと、中庭は地面が陥没し、そこに水が湛えられていた。
俺は現実から目を背ける。
「〖
今しがた、少し怪我した所を治療してみる。
「これは、自然治癒力の強化だな」
僅かに傷跡が残った。
ならば、復元ではない。
よもや伝説にある、時間の巻き戻しや事象改変の
(なら)
俺は近くのまだ芽吹いたばかりの草に〖治療〗を掛けてみる。
「やはり」
草が一気に成長していく。
傷を癒やすほど細胞を活性化させるなら、成長も促進できるのだろう。
「あとは、〖
(光量、持続時間は調節可能。―――色も形もイメージすれば変化が可能みたいだな)
俺は光球を投げてみる―――すると、ぶつかった場所にくっついた。
「なるほど――ん?」
ふと見ると、足元の草の成長が更に加速している。
(聖なる光にはこういう効果もあるのか)
俺は〖水作成〗の水を掛けてみる。
少しだけ成長速度が上がったが、期待ほどではなかった。
確か、〖
あれなら更に効果が高まるかも知れないな。
恐らく〖聖光〗みたいな法術もあるのだろう。
「次は、〖
〖水作成〗と違い、様々な物が作れた。
ランダムにパン、オリーブ、ニンニク、玉ねぎ、ピーマン、セロリ、卵、チーズにバター。
俺は、ふとピーマンの種を地面に植えて〖治療〗を掛け、更に〖水作成〗で水をやり、〖光あれ〗で照らした。
するとグングン育ったピーマンはあっという間に実をつける。
実を取ってひとかじり。
(美味い!!)
凄まじく美味いぞこのピーマン。
こんな事も出来るのか。
流石に栄養素は調べられないが―――しかしこの卵は、温めたらどうなるんだ?
時間が有る時に試してみるか。
「最後は―――〖神聖剣〗」
俺が、〖神聖剣〗を放つと、剣の形をした光が空中に出現してその場に浮游。
魔術のように、飛ばすことも可能か?
剣を飛そうとすると、きちんと飛んだ。
庭の端にある、直径80
すると10
次は光が弱くなっている柄を握りしめる。
ほんのりと温かい。
「さて、ここは持てるのが分かるが―――
刃に触れようとすると、バチリと指が僅かに焼けた。
この刃は熱もあるのか。
神聖剣を持って、もう一度、岩に軽く斬りかかる。
今度は20
「持って振ったほうが、威力が上がるな」
〖
今度は、力を入れて斬りかかる。
すると、30センチメートルほど、刃が食い込む。
「使用者の力量も、関係してきそうだ」
俺は柄から神聖力を送り込んでみる。
剣の光が増す。
眩しい程になった剣を、全力で、
「せっ!!」
岩に叩き込んだ。
白い閃光が、岩を薙いだ。
岩が、真っ二つになる。
「かなり、威力が変わるな」
そこで、ふと思う。
魔術は詠唱、つまり言葉で操る。
法術は聖法陣、つまり図形で操る。
俺は神聖力を纏わせた、右手の指で空中に陣を描く。
「〖神聖剣〗」
あたりまえだが、一本の神聖剣が出現した。
次は左右の指に神聖力を纏わせ、同じ陣を両腕で二つ同時に描いてみる。
「〖神聖剣〗」
俺の視界に生まれる、二本の剣。
(二つ出るのか!)
人間の口は一つだ。だから魔術の多重詠唱は困難を極める。
しかし方法が無いわけでもなく。
例えば俺がやっていた多重詠唱の一つは、口と脳内で、同時に詠唱をする方法だった。
だから普通は二重詠唱がやっと。
あとはスキルを使った、三重詠唱から四重詠唱が人間の限界だと言われている。
――まあ、魔力を文字の形で放つ方法もあるのだが。
文字は図形の一種だが、それでも一応魔術は使える。
魔術を言葉で使うと言ったのは、そういう理由だ。魔術は声で使うわけではない。
ただ、魔力で文字を描くのは方法は至難で、俺以外で出来た人間は僅かしかいない。
しかし――法術はどうだ。
陣を描くのに必要な腕は二本ある、法術の多重展開は簡単という事になる。
さらに、滑稽な事になるかも知れないが――足や頭も使えば同時に使える法術は更に増えるだろう。
しかしだ、それよりも。
俺は考えを実行する――
右腕を突き出し、眼を瞑り――頭の中に、〖罪と罰〗の陣を〝5つ〟同時に思い浮かべ、神聖力を放つ。
「〖
開眼すると右腕から、5本の鎖が一斉に射出された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます