第5話 さあ、実験を続けよう
俺の放った拳と聖印が、くっついた。
腕を振っても鎖が外れない。
初めて起きた現象だ。
(つまり、なるほど)
「神聖力は、魔力と逆――引力を持つのか」
どうやら神聖力は、磁石の違う極のように引き合う性質があるらしい。
俺は、右手にぶらんと垂れ下がる鎖を見る。
しかしこれは、魔術とは違った使い方ができるかもしれないぞ。
そこでふと気づく、手に込めた神聖力がどんどん少なくなっていることに。
逆に鎖は一気に輝きを増している。
(これは、鎖が強化されているのか)
俺は、拳に込めた神聖力の流れをコントロールして一気に鎖に流し込む。
ぼんやりと光っていた鎖が、眩しい程に輝きだした。
拳に神聖力がなくなり、聖印が剥がれる。
俺は鎖を持ち上げ、左右に引っ張ってみる。
(強度が上昇しているようだな)
さらに鎖を、もう一度射出。
「動きも、軽やかになっているようだ」
鎖に込める神聖力を増やすほど鎖は硬くなり、早く鋭く動くようになった。
「では、こうするとどうなる。〖
俺は出現させた剣と鎖を握って、剣を鎖の頭にくっつけた。
すると剣と、鎖の聖印部分が一体化した。
鎖に繋がった神聖剣が出来上がった。
俺は鎖を振り回して、神聖剣を頭上で回してみる。
(これはいいな)
しかし、すぐに神聖剣が小さくなっていく。
鎖に取り込まれているようだ。
俺は神聖剣の部分を持って、神聖力を流し込み神聖剣の形を維持させてみる。
(できる、これは力の大きな方にもう一方が取り込まれていっているようだ――なら)
俺は、神聖剣と鎖に篭もる神聖力の量を均一にしてみた。
すると二つは安定し、形を保った。
(なるほど、合体させる事はできるが、形を維持させるには微妙なバランスで神聖力を調節しないと駄目なのか)
しかし斥力が引力に変わっただけでも、法術は魔術と全く違った使い方ができるな。
研究に限界などないが、流石に魔術は新しい発見も少なく刺激がなかった。
法術は、こうして新しい発見ができるのが悪くない。
――いや俺のような1000年生きている人間には、むしろ楽しい。
楽しくてたまらない。
「材質の変更は可能か? 〖罪と罰〗」
俺は先ほど射出した時は鉄で出来ていた物を、銀に変えられるか試みる。
射出すれば、当たり前のように白銀に輝く鎖が出現した。
「なるほどな。液体で鎖を作るのは可能か? 〖罪と罰〗」
俺が水をイメージして鎖を出すと、氷の鎖が出現した。
「なるほど、自動的に氷になったか――つまり個体でしか鎖は作れないのか。これはこれで色々使えそうだな――他には、〖
これは、神殿で星霊に頼んでしか行えない命名の儀式を簡単に出来るものだろう。
俺は自分の胸に手のひらを当てて、法術を使う。
「〖命名〗テクス」
俺の体が光った。
「〖命名〗ああああ」
再び光る俺の体。
「――ん? 成功したのか。神殿で〝ああああ〟等と命名すると星霊に、
◣その名前は使えません。◥
などと拒否されるはずだが、まあ〖命名〗は星霊を介していないしな。――しかし、実際変わったかは、【鑑定】しないと分からない。戻しておくか――〖命名〗セウル」
さてじゃあ、
〖
この法術は、書庫で使ってはいけないだろう。
もう、何がどうなるか予想がつく。
この屋敷は相当な年月管理されていないので、庭は草だらけになっている。
その中央で、
「〖
ドン
土砂が巻き上がった。
「足元から衝撃波を放つのだな」
今は円形だったが。
「〖
範囲を絞ると、扇型に衝撃が伸びた。
「なるほど、しかし―――」
周りを見回す。
周囲の草が、全部吹き飛んでいた。
(すこし、庭の手入れをするか)
「〖
中庭の土がめくれ上がり、耕された畑のようになった。
「便利だな〖聖撃〗」
最後に強めに〖聖撃〗を放つと、俺の体が宙に浮くのが分かった。
「そうだ―――もしかして上下の向きも変えられるか? ―――〖聖撃〗!!」
俺は、下に向かって全力で〖聖撃〗を放った。
ドッゴオオオオオオオオオオ!!
濛々と巻き上がる土砂、そこを俺は抜け。
空にいた。
「ほう・・・飛べるか。しかし―――マズイな、この高さ、死なんか?」
ひゅ~ っと墜落していく俺。
迫る地面。
手を、地面に向ける。
「〖
俺は手から水を放って、その水圧で落下の勢いを和らげることで事無きを得た。
(〖水作成〗は、様々な形で放てるし、量も変えられる、勢いも――と。水分をワインに変えたり、ミルクに変えたりはできるか?)
「〖水作成〗」
――できないようだ。
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