第8話 さあ、暴漢の相手をしよう

 ◆◇視点〔セウル〕◇◆




 俺はチャージャー・ボアを狩るため街の門へ向かう途中、料理屋に寄った。

 一気に成長させて収穫したピーマンやタマネギなどの野菜を、売り払う為だ。


 出てきた小間使が味見したところ、彼は慌てて店の中に戻った。

 そうして呼び出された料理長は、俺の持ち込んだ野菜の味に目を見開き1000タイトを軽く出した。

 それなりの量の野菜だったが、普通の倍近い値段だ。


 料理長は「なんて旨さの野菜なんだ――また是非ウチに売ってくれ!!」と頼み込んでくる。


「また収穫できたら」


 俺は言葉を残して、料理屋を後にした。


(まあ、儲かる方だが少し効率が悪い。チャージャーボアでも狩った方が速いな)


 俺は、追加で手に入った金で、露天でひょうたん型の梨を買う。

 ちなみに、この街の果物や野菜を売っている露天は、自分で育てた物を売っているので、よそで収穫された野菜を買い取ったりはしない。

 さらに街の住人が野菜を買う時は、こういう市で買うので、大きな野菜屋というのはほぼ無い。

 だから俺は野菜を、料理屋に持ち込んだ。


「しかし魔力が神聖力になるなら、もう少し法術も研究しておけばよかったか。大陸の果て都市国家の辺りに建てた一番大きな屋敷なら、資料が大量にあるだろうが、ここから帰るとなると1年は掛かる距離だ――どうするか・・・・・・ん? なんだお前達」


 実験で消費した脳の糖を摂取しようと梨に噛みつこうとした所で、前方から現れた大柄の三人組に囲まれた。

 リーダーらしきスキンヘッドに入れ墨をした男は、俺に手を伸ばしながら睨んで言った。


「おいガキ、さっきギルドで換金した金をよこしな」

「ふむ」


 俺は梨に ぞぶり と噛み付く。


「シャクシャク」

「おい、聴いてんのか!」

「さっさと金を寄越せ!」


 ぞぶり


「このガキ、どうせ自力でモータルグリズリーを狩ったなんてのは嘘だろう!」

「大した実力もないのに大金を手に入れたヤツがどうなるか、授業してやるって言ってんだよ!」

「俺たちを舐めるなよ!! これでもお前より上のEランク冒険者だ!」

「シャクシャク」

「こいつ―――!!」「やっちまえ!!」

「〖聖撃フォース〗」


 俺の言葉と共に、周囲に放たれる三度の聖なる衝撃。

 これほど多重起動が楽とは。

 三人は、10メートルほど吹き飛んで近くの建物の壁に叩きつけられた。


「フォース? なんだ―――この魔術は―――」

「詠唱もなしに、この威力だと?」

「―――というか同時に3回魔術が発動しなかったか!?」

「シャクシャク」

「いちいちかんに障るガキだ、お前ら!」


 三人が腰の物を引き抜く。

 街行く人たちが「なんだなんだ」と、こちらを遠巻きに見始める。


「同時にいくぞ」「おう」「分かった」


 三人組が、同時に動いて縦横じゅうおうに剣を構え雄叫びを挙げて突進してくる。

 なるほど、上と左右から挟み込むように攻撃。

 逃げ場を後ろに限定する。

 そして後ろに逃げれば、誰かが剣を投げるといった所か?


「クソガキが!!」「腕の一本は覚悟しやがれ!!」


 3人組が、俺に接敵。

 三つの刃が迫る。


「〖光あれライト〗」


 俺の手から、強烈な光が放たれた。

 光量を極端に強くし、持続時間を極端に短くした〖光あれ〗だ。

 襲いかかろうとした3人組の目に、光のカウンターが入った。

 奴等は目を見開いていたので、見事に目潰しされる。


「〖罪と罰ジャッジメント・ジェイル〗」


 放った3本の鎖が3人組に巻き付く。俺は3人組の両手両足を、鎖でがんじがらめにする。

 鎖の長さの調節をしてみたが、なるほど可能か。


「うお!」「なんだこれ!!」「離しやがれぇ!!」


 三人は石畳に転がり、おかに打ち上げられた魚のように暴れた。


「シャクシャクシャク」


 俺は、ゆっくりと三人に歩み寄る。

 そして、リーダーらしい入れ墨スキンヘッドの帯に手を掛けた。

 〖光あれ〗で視界不良のままだろうが、入れ墨スキンヘッドは、腰のあたりに違和感を感じたらしい。


 しゅるり


 帯が抜かれた事で、事態に思い当たったのか。


「まさか! やめろ!!」

「シャクシャクシャクシャク」


 ズボンをひっぱる。


「やめ! やめろぉ!!」


 ぞぶり


 パンツをひっぱる。


「やめ、やめてえええええええ!!」

「シャクシャクシャクシャクシャクシャクシャクシャク」


 生娘のような悲鳴を挙げる入れ墨スキンヘッドに、街行く人々もにっこり。

 俺は告げる。


「貴様ら、おおかた借金の返済にでも困っていたのだろうが」

「な、なんで分かった!!」


 俺は全員の下半身を脱がし終えると、露天で花と箱を買った。

 露天のおばちゃん達に、


「あんた、若いのに強いねぇ――あいつ等、いけすかなかったからスカっとしたよ!」


 などと言われた。

 3人組の下半身に花を挿す。


 「きゃいん、きゃいん」


 更に小箱を、三人の前に置く。

 そして銀貨を一枚、入れておいてやった。


「頑張れ」

「やめてええええええええ」「おいてかないでえええええええ」「あ、お姉さん銅貨ありがとお」


 一日一善とはまさにこの事。


~~~


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