第2話 さあ、復活しよう

「ルオル、いよいよ鑑定の儀式だ」

「はい父様!!」


 ボクの家では、占いで聖年と出た年の春の始め、神殿で鑑定の儀式を受ける。


 ボクはルオル・メルヒオール。

 今日、聖年を迎え、待ちに待ったステータス鑑定を受けるのだ。


 貴族の息子に生まれ、今日まで鍛錬を怠らなかった。

 きっと父様にも褒めて貰えるような、魔術の武家に相応しいステータスになっていると思う。


「ではザンドルテ・メルヒオールの子、ルオル・メルヒオールよ、この鏡の前で祈りなさい」

「はい!」


 ボクはゆっくりと前に進み、慈悲深い表情の女神様の前で跪く。

 すると司祭様が女神様に向き直り。


「大いなる記憶の女神アカシャの使いである星霊様よ、その御手により貴女様らの子が持つ力を、我らが前に示し給え!」


 その言葉と共にだった。


 ボクの頭上に大きく映し出されたステータス。


 名前 ルオル・メルヒオール

 レベル5


 HP  60

 MP  250

 力   45

 素早さ 65

 器用さ 60

 魔力  -32768(×2)

 運   +50

 性質  +80


 称号アビリティ なし

 才能スキル 【魔力2倍】

 スキル なし   

              ◢


 神殿がざわついた。

 ボクも目を見開いた。

 父様がわななく声で言った。


「なんだ・・・この魔力-32768とは――いや、【魔力2倍】のスキルで×2ということは・・・―――-65565か!?」


 ほ、本当になんだろう?


MPメンタルポイント250というのは確かに目を見張る! ・・・だが、肝心の魔力がこの有様では、魔術を使えんではないか!! ――しかも女神様から与えられる才能スキルで、事態を悪い方へ拍車を掛けている!! ――」


 た、たしかにそうだ。

 父様の激怒する声が、その意味がボクを凍らせた。

 父様は激昂を続ける。


「――帝国の神童レイ・レライのように知恵が回るわけでもなく、剣も魔術も才のない子だとは思っていた――だが努力家だとは思っていた、それなりにはワシを満足させてくれるだろうと。―――それが、よもや女神に忌避された呪われた子だったとは―――ッ!!」

「そ、そんな・・・父様これはきっとなにかの間違いで・・・」


 ボクは、なんとか言い繕ろうとするけど。


「この〝み子〟が!!」


 ボクは父様に、歯が折れる程、勢いよく殴られた。


「よもや、由緒正しきメルヒオール家に蝕み子が生まれてしまうとは―――!! 来い、お前など最早、我が家の息子ではない!!」

「お、お許しを!! お許しを父様!!」


 ボクは、恐怖に慄き泣き叫びながら引っ立てられる。

 そうして神殿の奥で胸に、〝蝕み子の烙印〟をされた。

 そんな様子を、兄と妹は嗤いながら見ていた。


 弟は、汚らわしい物を見る目で唾棄していた。

 母は、ただ悲しげに瞳を震わせていた。


 さらには、星霊による名前の変更が行われた。


 ボクは家名を奪われ、ただのルオルになった。


 家に戻ると、暗い地下室の牢に蹴り転がされる。

 こうしてボクの長い暗闇の中の生活が始まった。




 ボクがメルヒオールの人間でなくなってから、一ヶ月くらい経った。


 兄は、ボクを嘲笑いに毎日地下にやって来た。


 弟は「メルヒオール家の恥さらし」とボクを罵り、牢の外から魔術を降らしてきた。


 妹は衰弱していくボクを観ながらうっとりとしていた。


 母は悲しみのあまり、僕に会いにこれなかった。


 父は時折、ボクに叱責の言葉を浴びせに来た。


 けれど、流石に息子を殺す気はないのか、最低限の水と食べ物はメイドが運んできてくれた。

 それだけは感謝していた。

 でもある日、魔物が一番活性化する時期。

 ボクは、屋敷から少し離れた場所にある〝死の森〟と呼ばれる場所に、放逐された。


「ああ・・・・殺す気だったんだ――」


 最後の希望が絶望に変わり、ボクは呆然とした。

 

「――自分で手を下すのが嫌だから、こうして魔物に殺させる心算つもりなだけ・・・・だったんですね」


 ゆっくりと森を歩く。


 既に栄養不足で衰弱している体は、視界さえままならない。

 それでもボクは隣町側へ抜けれないかと、森を歩いた。


 ふらふらと、風に背中を押されながら、なんとか。

 しかし二日目、とうとう。


「―――力が、入らない」


 空腹はボクから思考力と体力を奪い、いよいよ大地に膝を折らせた。

 そして膝が地面に触れた瞬間、身の毛もよだつような頭痛がボクを襲った。


「ぃ―――いが・・・ぎゃあああああぁあああああああッ!!」


 頭蓋に、何度も釘を打ち込まれるような痛み。


 ボクは頭を抑えて、ついに地面を転がった。


「・・・・し・・・死ぬ、の・・・・・・か・・・な・・・・・・」


 意識が遠のいてゆく。

 掠れていく視界の中ふと、近くの茂みが揺れた。


 首を巡らす。


 茂みの揺れは徐々に大きくなって。


 ドォッ!!


 影が伸びるように現れたのは、巨大な熊。


 モータルグリズリーという、恐ろしく切れ味の良い牙と爪を持った魔獣。

 この森、最強の魔獣。


 体力が万全の状態でも、勝て無かっただろう魔物。


「・・・そんな・・・こんな・・・時・・・・・・・・・・・・・・・――」


 ボクは意識を失った。

 ・

 ・

 ・


「――・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふふ・・・・・・・・・・・・ふはは―――ふ、ふはは!!」


 〝俺〟は近くの樹に拳を着きながら、身を預けて立ち上がった。



~~~


 妹が思った以上に気持ち悪かったので、書き換えました(草)

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