■■ACT1■■

002:「海神市」

 海神わだつみ市は太平洋に面した某地方の中心都市。現在市の人口は約百五十万人以上、日本屈指の大都市である。


 海神市とその周辺、県庁所在地の「小平こだいら市」、空港と港、田園風景が広がる「海平うみだいら市」。


 そして競争馬の生産で有名な「沼平ぬまだいら市」は平安時代より発展し、江戸時代には「海神藩五十五万石」の大大名家「五鬼平いつきたいら家」の所領、その中でも海神市は城下町、藩の中心都市であった。


 軍事的要衝ではあるが平地の少ない海神市は大きく海神湾を取り囲むように「旧市街地区」と「新市街地区」そして「それ以外の地区」に別れていた。



 旧市街地区は五鬼平家の居城、国宝「宝城」がそびえる「宝多たからた島」その対岸部「平浜地区」の二つ。


 両地区は江戸時代から明治・大正・戦前昭和初期までの建築物が数多く現存しており歴史のタイムカプセルと言われ、海神市旧市街地区は世界遺産に登録され、その為に世界中から数多くの観光客が海神市に訪れていた。


 一方、新市街地区は海神湾の北端「鬼隠半島」に平成時代、一大国家プロジェクト「新都心構想」の中核、「新東京市」として急速に開発が進み、現在は「鬼隠地区」と呼称され、先進未来都市として発展し首都東京に匹敵、否、東京以上の最先端都市部となっていた。


 そして、旧・新市街以外の場所は小さな集落ばかりだったが、近年「羽衣地区」に海外旅行客向け宿泊施設、巨大リゾートホテルが多数建設され、目覚ましい発展を遂げていた。



 悠久の歴史と伝統、そして最先端が融合した百万都市。更に近年、海神市は数多くの人々から「恋の街」と呼ばれるようになっていた。


 外国人や修学旅行客ばかりではなく数多くの若い女性やカップルが海神市……「恋の街」へ訪れ、恋愛の一大ホットスポットとなっていた。



 新年早々、そんな「恋の街」で冬物語の幕が上がろうとしていた。



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