第6話 早速、問題
結局宿に居ても方向性が決まらず、先日と同じ様に冒険者ギルドに向かって来た俺達。
皆それぞれおかしな格好をしているので、またローブで全身を隠している訳だが。
それ以外の意味でも結構目立つのだ、主に外見が。
ゲームで作ったキャラなんだから当たり前だけど、風呂場で鏡を見た時は自分でもビビった程だ。
うん、やはり俺のキャラは可愛い。
だけで、済めばよかったのだが。
昨日門の所で、すんごく周りからジロジロ見られていたのはコレかと納得してしまった。
顔、二重丸。
そんなのが四人も居る上に、俺は銀色の長髪ストレート。
イズは黒髪だが、長身な上にガチで美人なので注目を集める。
ダイラに関してはもはやボディラインだけでも注目が集まる上、こちらも透き通るような金髪と来たもんだ。
そして最後のちびっ子トトンだが……茶髪のショート。
不思議な事に、顔は良いけど見た目は一番落ち着いていると言っても良い。
おかしいな。あのテンションさえ無ければ、コイツが一番常識人なのか?
などと考えつつ深くフードを被り、両開きの扉を開けてみれば。
「頼むよ! 誰か調査に向かってくれよ! これじゃおちおち帰る事も出来ねぇ!」
「ま、まぁまぁ落ち着て下さい。あと、そういう目撃情報ならウチより衛兵の詰所の方が……」
「昨日行ったさ! だけどこんな所に出る筈ねぇって言われて、来週には向かってやるから待ってろとかふざけた事言われちまったんだ!」
なにやらトラブルでも起きたのか、受付のカウンターで男が騒いでいるではないか。
こういう時に問題を解決し、サクッと名を広めるのが王道ファンタジー! と言いたい所だが俺達には今、そんな余裕はなし。
出来る限り危ない事もしたくないので、ここは関わらないのが無難だろう。
何てことを思いつつ、周りの人を避ける様にしてカウンターに順番待ちしていると。
「もういい! もう一度詰所に行って来る! 俺は間違いなく見たんだからな!? 後で大変な事になっても知らねぇぞ!」
そう叫ぶ男が視線は受付さんに向けたまま、身体だけ此方を振り返り、良い勢いでドスドス歩いてくるではないか。
普通に避けようと道を空けたつもりだったのだが、フラフラキョロキョロしていたトトンとタイミングよくぶつかってしまい。
「うわっ! とと……」
これまた運悪く、叫んでいた男の前に飛び出してしまった。
その際ローブのフードが外れてしまい、ばっちり男と顔を見合わせた瞬間。
「こ、こここ……」
「こ?」
彼は随分と慌てた様子で、俺の顔面目掛けて人差し指を向けて来るではないか。
指差すなよ、失礼だぞ。
なんて事を思いつつ、ムッと眉を吊り上げていたのだが。
「コイツだぁぁ! コイツだよ! 間違いねぇ、人に化けてるだけだ! 俺が見た魔人の女!」
「……あ、昨日の馬車の人」
「やっぱりコイツだぁぁぁ!」
不味い、関わらない云々以前の話だった様だ。
※※※
「さて、少し詳しい事情を聞こうじゃないか」
別室に通された俺達、後ろでは叫んでいる男性を困り顔で押しとどめている受付嬢。
そんでもって目の前には……やけに厳つくてデカイおっさん。
昨日も見た、ここの支部長だ。
魔石買い取りの際に物凄く怪しそうな目を向けられてしまったので、よく覚えている。
もはや元々俺達が男だろうと関係ない、普通に怖いんだよこの人。
「説明も何も、俺達人間ですから……他にどう証明すれば良いのか」
アハハ……と乾いた声を上げてみれば、彼はギロッと鋭い瞳を向けて来る。
こ、こぇぇぇ。
「あの、それでしたら其方が納得出来るだけの条件を提示してくれませんか? 我々はこの地に疎いので、全てが手探り状態でして」
イズだけは会話に参戦してくれた。
流石は頼れるアタッカー、いいぞいいぞもっとやれ。
などと思っていると、相手は今度イズに向かってギロリ。
しかしイズは引いた様子は無い。
もしかして、リアルの方でも結構強い人だったりしたのだろうか?
直接皆と会った事はないので、良く知らないけど。
「か、“鑑定”……とか、無いんですか? そういうのって定番だと思うんですけど……」
恐る恐るといった調子で、ダイラも声を上げたが。
「鑑定……というのは、アレか? 魔術鑑定の事を言っているのか? あんなもので何の証明になると言うのだ。アレはその者の適性魔法を調べる為の道具だぞ? 確かに魔族なら多くの属性を持っていても不思議ではない、しかしそれは人間だって同じ事。君は才能ある人間は全て魔族だとでも言いたいのか?」
「ひぃぃ、すみません……世間知らずで」
ダイラ、撃沈。
残るはトトンだけだが……駄目か、眠そうにしている。
「確かにそちらの方の目撃証言だけで、君達をアレコレ詮索するのは申し訳ないと思っている。しかし、こうなった以上何か証明出来るモノが欲しいんだ。そしてはっきり言うが……私から見ても、君達は怪しい。とても戦闘出来そうな体格をしていないのに、アレだけの魔石を持ち込み、更にはずっとフードで顔を隠している。正直な所を言うと、何かしら後ろ暗い所でもあるのかと、調査しようかと検討していた所だ」
あっはっは、滅茶苦茶怪しまれてましたわ、俺等。
まぁそうよね、怪しさバリバリだよね。
こっちの世界の魔石の需要というのがいまいち分かってない状態で、やっぱ一気に売り過ぎたか。
俺達にとっては、使わない
でもやってしまったものは仕方ない。
しかし、どうするかなぁ……コレ。
「証明、証明かぁ……」
う~むと唸って首を傾げていれば、暇そうにしていたトトンがちょいちょいっとコッチの裾を引っ張って来た。
なんだよ、飽きたのは分かるけど少し大人しく――
「なぁクウリ、もう見せちゃった方が早いんじゃね?」
「それは、どういうことかね?」
ちびっ子の発言に、支部長の目が更に鋭くなった。
もぉぉぉ! 安易にそういう匂わせる発言しないの!
とかなんとか、説教したくなった所で。
「クウリ、昨日指輪のアクセ普通に外してポケットに仕舞ったじゃん? イズだって普通に兜取ってたし。だったらアレも、取れるんじゃないの? 目の前で外して、装備品だぁって言えば良いだけじゃない?」
トトン、お前……意外と機転が利くな。
というか、本当は頭良いのか?
よし、今日の飯はコイツの好きな物を買ってやろう。
「よく分からないが、とりあえず全員ローブを脱いで顔と姿を見せてもらう事は可能か? いつまでも姿を隠したままでは、疑ってくれと言っている様なモノだ」
ま、そうですよね。
でもですよ支部長、多分見たら驚くよ。
この下、マジで統一性無い服装の奴らの集まりだから。
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