第3話 見た目


「と、とにかく……他に何か無いのか探してみよう。他のゲームシステムも使えるかもしれない」


 大豆豆の言葉により、俺達はひとまず自らにある“何か”を探る事になった。

 コレで何も無かったら、本当にヤバイ。

 ゲームスキルが使える事は分かったが、こんなもん使った所で戦術兵器だ。

 使い道なんぞ限られている、特に俺。

 大火力の広範囲殲滅スキルぶっぱの魔術師とか、使い道なんぞ一つしかないでしょ。

 兵器だよ兵器。

 現状どんな世界なのか分からないが、それでも俺の扱いなんざ目に見えている。

 むしろ現代であり、戦闘が身近な所に無い世界とかでも問題になるだろコレ。

 だからこそ、おかしなUMAにならない様に色々と調べようと思ったのだが……。


「ステータスオープン! アイテムボックス! 鑑定! おいスキルツリー出せよ! もっと大人しいスキルに修正させろ!」


 定番とも呼べるそれらを叫んでみても、俺の前にはウインドウらしきものは現れず。

 結局ただ恥ずかしい言葉を叫ぶ少女(中身は中年)となってしまった。

 うがぁぁぁ! ゲームスキル使えるのに、ゲームシステム使えないとか何!?

 クソゲーか? クソゲーなんだな!?

 自身の状態も分からず、今まで集めて来たアイテムも金も呼び出せない。

 しかも今の自分がどういう状況にあるのかも分からないとか、クソすぎんか!?

 マップもねぇのかよ! などと悶えながら、思いつく限りの言葉を叫んでいた訳だが。


「クウリ~」


「なんじゃいトトン! なんか見つけたか!? ステータス開けたか!?」


「ステは無理だねぇ」


「カンストまで育てたキャラのステータス見られないとか、クソがぁぁぁ! ゲーマーは止まったレベルを見てニヤッとする所までがセットなんじゃい!」


「キモイねぇ~」


「うるせぇ! お前だってカンストした瞬間は嬉しかっただろうがい!」


「まぁ、それはそうなんだけど。目閉じてみてー」


 あん? とか声を上げながらも、言われた通り目を閉じてみれば。

 うーむ、うむ? 何だこれは。

 システム的な物を意識すれば、瞼の裏にはゲーム内のインベントリが表示されたではないか。

 一瞬俺が勝手に想像しているだけかとも思ったが、倉庫の肥やしになっているアイテムの数も正確に表示されている為、間違いなく幻想ではない。


「試しに~ほい、コンバート」


 トトンの呑気な声が聞こえて目を開いてみれば、彼……じゃなかった。

 彼女の手にはホットドックが出現しているではないか。


「マジか」


「ん、コレ普通に旨いよ! 食える食える! 飢える心配はなくなったね!」


 もっくもっくとホットドックを齧り始めるロリっ子だったが。

 これで一応検証が出来たという事なのだろう。

 目を閉じて、インベントリを開いて、選択すれば実体化出来る。

 便利そうに見えて意外と不便!

 瞼を下ろさないといけない訳だし、戦闘中とか絶対アイテム漁れない。

 当然ショートカットキーの割り当ても出来ないので、インベントリから引っ張り出すしかない。

 え、なにこの親切に見えて微妙に使い辛いシステム。

 ゲームってものを理解していないプログラマーに設定任せちゃった?

 マルチタスクが基本のネットゲームで、まさかのシングルタスクを強要して来てるんだけど。

 いやごめんね!? 確かにインベントリ使えるのはすげぇ助かるんだけどさ!


「と、とりあえず……街道を目指さない? こんな森の中だと、何に襲われるかも分からないし。虫も嫌いだし」


「確かに、さっきクウリがぶち抜いた先には森が無いからな。とりあえずそっちに進んでみるか」


 ダイラと大豆豆がそんな事を言い出すが。

 うるせぇやい、としか言えん。

 試しに使ったスキルが森をぶち抜いて道が出来た、その先は森からの出口っぽい。

 コレは凄い事だ、凄い事なんだが……。

 このドジっ子補正みたいなの、何か気に入らないぞ。

 俺は普通に社会人やっていた訳だし、責任感だってあるほうだ……と思う。

 だというのにこんな訳の分からん環境に放り込まれ、同じ境遇の奴等と出会ったからといって、あまり軽率な行動は……。


「ここに居ても仕方ないし、行ってみようよ。クウリ」


「う、うん? まぁ、そうだな。待機していても状況が進まなそうだし、イベント進めっか」


 トトンに腕を引っ張られ、結局森から抜ける事になってしまった。

 流されてんなぁ、見事に。

 まぁココに居ても仕方ないってのは確かなので、致し方ないのはあるが。

 などと思いつつ森を抜けてみれば、目の前には明らかに人の手によって整えられた道路があった。

 少々古いというか、技術が遅れている様に見えるが。

 間違いなく、これは……。


「街道、だよな? コンクリートは使われてないが」


「だな、田舎道~って感じ。でも踏み固められてるし、タイヤの跡……じゃなくて、細いから車輪か? そんな感じの跡も残ってるから、人が行き来してるのは間違いないっぽい」


 大豆豆と一緒に道路を色々と調べていた結果。

 分かった事は二つ。

 一つ目は、結構技術的に古いかもと言う事。

 馬車っぽい跡が残ってるし、周りを見渡してみても現代っぽさゼロ。

 海外とか、日本でも滅茶苦茶田舎に行けばこういう道もあるのかもしれないが。

 それでも俺等は見た事が無いほど、辺鄙って雰囲気。

 そして二つ目。

 はっきり言いましょう、素人が見てもよく分かりません! 以上!

 と言う事で道路の調査を止め、二人してため息を溢していると。

 丁度良いタイミングで、馬車が一台通り掛かった。

 おっと? コレはイベント一発目か?

 何てことを思いつつ、大きく手を振ってから。


「すみませーん! そこの人ー! 出来ればちょっと教えて欲しい事が――」


「魔人!? うぎぁぁぁぁ!」


 トロトロと走っていた馬車は急に加速し、俺達を避けて隣を通り過ぎた。

 え、なに。

 俺等を見て、一目散に逃げた様に見えたけど。

 皆のキャラ、普通に美形だったよな?

 はて? と首を傾げながら、ヒッチハイクに失敗した原因を探ろうと仲間の方へと振り返ってみると。


「クウリのアクセじゃない? 羽とか角とか、派手だもんねぇ」


 トトンの指摘により、原因が判明した。

 確かに俺のキャラクターは、アクセサリーとして装備している物品が派手だ。

 なるほど、そうか、 これか。

 魔王装備だぁ! とか言って喜んでたけど、現実だとアレだよね。

 でっけぇ翼も付いていれば、頭からは捻じれた竜の角が生えているのだから。

 重さを感じていないので、完全に忘れていた。


「うん、なんかゴメン」


「一応こっちの常識が分かるまでは……全部解除しておこうか、クウリ」


 そんな訳で、俺は非常に地味な格好へと戻っていくのであった。

 格好良いのになぁ、羽と角。

 駄目かぁ。

 そんな事を思いながらも、外した装備がインベントリにちゃんと戻るという確認が出来た。

 こういうの、もっと適当な武装とかで試す項目だよね。

 最初からメイン装備で試しちゃ駄目だよね、そっちも反省。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る