第7話 兄妹の決裂
☆
先輩が愛おしい。
そう思いながら私は目をキラキラさせていると。
3時間目の終わり。
園美が「やれやれ」とでも言いたそうな顔でやって来た。
私を見てから苦笑する。
「もしかしてまたあの先輩の事?」
「そうだね。先輩に決まってるよ。...どんどん好きになっちゃう」
「そっか」
「...園美。私って恋をしても良いと思う?」
「私が決めるのは難しいかな。...あくまで千智の人生だから...自分で考えないといけないと思うけど」
「私は...資格が無いって感じる...部分もあるから」
「...うん」
幼稚園時代からの幼馴染。
園美は実は全て知っている。
何を知っているかといえば...私の兄が浮気した事を。
その兄の妹だという事を。
「今回の件は本当に最低だったね」
「最低っていうか。...外道だね」
「...だね」
私は園美を見る。
園美は私に対して無言になってから複雑な顔をする。
その姿を見てから私は外を見る。
歪な関係図だ。
どうしたものかな、と思うぐらいには。
「...私、貴方は悪くないって思うから」
「...園美?」
「恋をするのはアリだと思う。...だけど...どうしても曰くが付くかもだけど」
「曰く...か」
「そうだね。...そこら辺をどう証明するか、だね」
園美は考え込む。
私はその必死に考えてくれる園美に対して話題を切り替える様に話した。
この話はしておいた方が良いかも。
「あ。そうそう。実はね。前田先輩の事なんだけど」
「あ。先輩のお友達の?」
「そうそう。...実はねぇ」
私は全てを説明する。
すると園美は驚きながら微笑む。
そしてクスッと笑ったりした。
「そうなんだね」
「...うん」
「...それはまあ...前田先輩らしいね」
「でしょ?」
そして話をしているとチャイムが鳴った。
園美はハッとしてから手を振った。
それから戻って行く。
「...」
私は園美を見送ってから窓から外を見る。
それから私は視線を前に戻してから入って来た先生の顔を見た。
そして授業をまた受ける。
☆
放課後になって私は用事と部活に行ったので先輩より後に帰る事になった。
それから私はゆっくり帰ろうと思い歩いていると。
2人組の男に絡まれた。
「可愛いじゃん。君」
「俺達とお茶しない?」
そんな感じで誘ってくる。
私はウザく思いながら断るが。
コイツら諦めない。
困ったな、と思っていると。
「おい。...その子を離してくれ」
兄が私の元に割って入る。
男達は解散した。
マイナス因子にマイナスが重なった感じだ。
だけどまあ助かった。
そう思いながら兄を見た。
「大丈夫か」
「...うん。お兄ちゃん」
正直コイツに助けられるとはな。
そう思いながら私はマイナスの様な表情をしながら見る。
兄は全てを奪った。
先輩の全てを奪っている。
だからコイツを許さないから。
「じゃあお兄ちゃん。先に帰ってるね。私...」
そこまで言った時。
兄は私に向いてきた。
それから人通りの多い場所だったがそれが止まって聞こえた。
それは何か。
「...お前、何か知ってないか」
そういう事を、だ。
私はその言葉に足を止める。
それから兄に向く。
「ん?何を?」
「...とぼけないで良い。俺が何かしているのを知っているだろ」
「...そうだねぇ。...まあ浮気の件じゃ知っているっちゃ知っているけど。どうして?」
コイツがこんな事を言い出すなんて思わなかった。
そんな事を思っていると同時にスッと何かを取り出す兄。
それは札束だった。
大凡で100万円ぐらいある。
何がしたい?
「誰にも言うな。これで黙っていてくれ」
「まさかのお金?別に誰にも言わないよ?...ただお兄...じゃなかった。滝さん。...私は貴方を決して許さないから」
「...それは誰かに言うという事か。これで黙っていてくれるか。それに言ったらお前も地に...」
「落ちないよ。落ちるのは貴方だけ。可哀想なお兄ちゃん。私は全て知っているから。知ったから。...貴方は金で釣ろうとしているのね。私を」
滝さんは「...」となってから私を見てくる。
ここまで外道だって思わなかったな。
そう思いながら私は滝さんを蔑視する。
このクソ野郎は兄じゃない。
「...お前が誰かに言ってしまうと困るんだが」
「冷静に考えてあり得ないでしょうそれ。...まあ他人には言わないけど悪事はいつかバレると思うよ」
「...」
「...お父さんとお母さんが知ったら悲しむだろうなぁ」
私は100万円を思いっきり地面に弾き飛ばした。
こんな物で釣れるほど私は安い女じゃない。
何というかこの様な金で汚れるなんてゴミ屑の所業だ。
そう思いながら私は滝さんを見る。
「...お前な。後悔するぞ」
「それはもう負け犬のセリフですよ。滝さん。...私を何だと思っているのか知りませんけど100万円じゃ釣れない。今は言いませんけど私、貴方は許さない」
「...たかだか妹の癖に生意気だ」
「助けてくれたのには感謝します。...だけど貴方は浮気の件では100回ぐらい死んでも良いですよ」
そして私は滝さんを見捨ててから歩き出す。
滝さんはずっと私を見ている気がしたが。
私はそんな視線すら気にならない。
クソッタレの目線だし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます