第3話 作戦会議

放課後になってから俺は山吹と部活が偶然休みの前田と一緒にファミレスに来た。

前田は何だか知らないが「全部俺の奢りだ」と言った。

マジかよコイツ。

頭でも強打したのか?、と思うのだが。


「前田」

「...ん?どした」

「いや。珍しいな。全部お前の奢りとか」

「ああ。バイト代が入ってな。...それで全面的に今日は奢る事が出来る」

「いやお前。バイトしていたのか?」

「まあ言うてもお小遣いのパート2みたいな感じだな。...実家が商店だし」

「ああ。手伝い分の駄賃か」

「そういうこったな。それが丁度お前が浮気された時期と重なったから今日は奢りだ」

「んな事を言ってもお前。...まあいいや」


そして俺達は各々、椅子に腰掛ける。

テーブルに置かれたメニュー表を広げながら「んん。何にしようかな」と言う前田。

俺達はその姿を見ながら居ると山吹が「先輩も何か頼んだらどうですか?」と笑顔になってから俺の手を握る...。


「...!!!!?」


煩悩が浮かんだ。

というのもコイツの半裸姿を思い浮かべてしまった。

俺は首を振りながら「ったく」と言いつつメニュー表を見る。

山吹は不思議そうに俺を見る。


「...どうしたんですか?先輩」

「何でもない。答える必要の無い内容だ」

「?」


俺はそうそっけなく返事をしながら前田を見る。

前田は店員に「ハンバーグ定食、パフェ、ドリア」と言っていた。

よく食うなコイツ...。

そう思いながら俺達は「じゃあパンケーキセットとパフェで」と言う。

そして俺達は向かい合う。


「んで。...そのしょうもない浮気女はどこに居るんだ?」

「場所を聞いてどうするんだ」

「いや。一発ぶん殴ろうかと」

「止めろアホ。犯罪だ」

「いや。その女が仕掛けてきたんだから犯罪もクソもない」


それでも人を殴れば犯罪だ。

そう思いながら俺は「まあもう別れる。絶縁だ」と答えた。

それから「...だけどまあ一発、殴りたいのは事実だな」と肩をすくめる。

すると前田は天井を見上げた。


「だよな」


と言いながら、だ。

俺はその姿を見ながら居ると「先輩。SNSで挙げたらどうですかね?」と言う。

それは山吹の言葉だった。

そんな言葉に「まだ証拠がないのもある。...んで面倒だ」と回答した。


「いやいや。富山よ。それで良いのか」

「ネット上に挙げるのは良いが情報リテラシーがあるだろ」

「そんな事を言っている場合か?」

「...違うんかなぁ」


すると山吹の顔が豹変した気がした。

だが横を見ても笑顔のままだ。

何だ今の寒気は。

と思いつつ山吹を見る。


「...どうした?」

「ん?どうもしませんよ?」

「...」


何か怖かったぞ今の。

そう思いながら俺は山吹を見る。

だが山吹はニコニコしたまま何も話さない。

俺は「?」を浮かべつつその顔を見る。


「...千智ちゃんは良い案はあるの?」

「え?私ですか?...まあぶちのめすぐらいですかね」

「...だよなぁ」

「牢獄に入ってほしいですけどね」

「怖いぞお前」

「...そうですか?でも私達を馬鹿にしていますから」


こんなに何故、豹変している。

そう思いつつ見ていると料理が運ばれてきた。

そして俺達は飲み物を取りに行く。

すると山吹も付いて来た。



「先輩。私に兄が居るって言いましたっけ」

「?...初耳だぞ」

「そうですか。...実はまあその兄がちょっと問題児でして」

「...ん?そうなのか?」

「そうですね。その為に私は兄を許さないぐらい憎んでいます」

「よっぽどの確執があったんだな?」

「...そうですね。...よっぽど、以上ですけど」


ジュースを入れる山吹の顔が真顔になる。

だがその顔は静かな怒りに満ちていた。

何か...その。

怒らせると怖いとも言えるか?

俺はその姿を見ながら苦笑した。


「...まあ大丈夫だ。俺も問題児を抱えていたしな。彼女と言う問題児を」

「そうですね。...確かにその通りです」

「...でもその兄の影響か?何か...その禍々しい感情は」

「禍々しいですかね。...まあ確かに。兄の影響もあるかもですね。...でも正直、アレを兄とは思いたくないですが」

「...」


俺はニコッとする山吹を見る。

山吹はジュースを入れてから飲み始める。

それから一言。

「先輩。私とやるって言ったらやれますか」と。

は!?


「やるってのは何だ」

「文字通りの意味です。...私の性的な行為は出来ますか?セックスとも言います」

「...嫌いじゃないが...男子に言う事じゃない」

「素直です。...良いですね。私がこんな感じなのに。先輩のそういう所が...」


とそこまで言ってから山吹は思い出した様に「じゃあ戻ります」と言って戻って行ってしまう。

俺は「...?」と思いながら山吹を見た。

山吹は鼻歌を歌っていた。

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