我知らず乙女心に支配され 「はい」を返すも 身は震えつつ 

「真琴さん、好きです。俺で良ければ付き合ってもらえませんか?」


 嘘でしょ。

 私は日本酒を飲み過ぎて、ふざけた夢でも見ているのだろうか。

 それとも……

 

「紀本君……ひょっとしてお酒弱い?」


 一番可能性がある疑問を投げかけた。

 紀本君は眉間に皺を寄せて僅かにため息をついた。


「……めちゃくちゃ強いですよ! 一升瓶を飲み干しても意識は確かです。俺は正気で本気です。なので、真剣に答えてくれると嬉しいです」


 街頭に照らされた彼の顔、耳が赤い。


「俺の彼女になってください」


 インステップキックで蹴ったボールがズドンと飛び込んで来たような、そんな告白。

 

 これは現実?

 鼓動が大きい。体がカッと熱くなる。

 今、私の顔は紀本君よりも赤く染まっているに違いない。

 どうしよう、こんなの私じゃない……。

 自慢のポーカーフェイスはどこ行った?


 紀本君の唇が僅かに震えている。

 可愛い、可愛い過ぎるよ。


「はい。私で良ければ喜んで」


 答えた私の声も震えていた。


 

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