ひとりだけ 微笑む君はカウンター グループ飲みじゃなかったみたい

「恋」ではない。「推し」である。 

 そう思う事にした。


 すると楽になった。

 姿を見たら嬉しいし、話せば気分が上がる。

 ドキドキもときめきも「推し」故だ。

 得意のポーカーフェイスの下で、私の心は忙しい。

 飛び跳ねたりガッツポーズをしたり、蕩けたり。

 いい年して何やってるの、って感じだけれど。

 推してるってこんな感じでしょ? 

 きっと。

 


 今日は職場のプチ打ち上げ。

 紀本君に声をかけられた。


「事業も軌道に乗りましたし、食事でもどうですか?」


 リーズナブルで美味しいオススメの寿司屋があるらしい。

 最近回るタイプしか食べていなかったから、楽しみにしていた。

 ついでに、彼の食の好みを知ることも出来そう。


 スマホを頼りに指定された店に着いた。

 白い暖簾を潜って中に入ると……

 あれれ? カウンター席しかないんだけど……


「へい、いらっしゃい!」


 大将の元気な声が私を出迎えた。

 紀本君は奥から2番目の席に座っている。

 私を見つけた彼は、柔らかく微笑んだ。

 

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