初デート 年甲斐もなく逸る夜 クローゼットと睨めっこ

「真琴さん、普段はどんな映画を観るんですか?」


「割と雑食かな。でも怖いのは苦手だからホラーやサスペンスは程々のじゃないと無理だと思う」


「じゃあ週末、SF映画でも観に行きませんか」



 そんな訳で、明日は付き合ってから初めてのデートをする事になった。

 服、どうしよう……。通勤服と同じじゃ流石に申し訳無いよね。


 最近はオフィス用の服しか新調していなくて、クローゼットにはキリリとした衣装が並んでいる。

 恐るおそる隅っこにあった、淡いコーラルピンクのワンピースを手に取って、体に当ててミラーを覗く。

 

 無いな。


 これは昔買ったデート服。

 高かったから捨てられなくて、長いことタンスの肥やしになっていた。

 年齢的にもう似合わないし、今更思い出的にも着る気はおきない代物。


 捨てよう。


 改めて、クローゼットを見渡すと、もう二度と着ないであろう服が他にもいくつも見つかった。

 止まっていた時間を感じながら、私はそれらをポリ袋に放り込んだ。


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