これは恋? ほんとにホント恋心? 忘れて久しい胸の高鳴り

「仕事と俺、どっちが大事なの?」


 4年前、彼氏だった男に訊かれた。

 あの時の私は、初めて大きな事業の主担当を任されてとても張り切っていた。

 帰りも遅かったし、家でも残った仕事をする事もあった。

 私は慢心していた。


「仕事を頑張る君も素敵」


 なんて口説かれて付き合ったからかな。

 それを真にうけて、一生懸命仕事をするのを喜んでくれているのだと思っていた。


 けれど、相性が良いと思っていたのは私だけで、彼はずっと我慢していたんだ。

 歳上で、落ち着いていて、優しくて、好きだった。

 だから、咄嗟に言ってしまった。


「別れましょう」


 って。

 私では彼を幸せに出来ない。そう思ってしまったんだよ。

 結婚するものだとばかり思っていたのにね。

 

 その瞬間の彼の傷ついた顔が忘れられない。


 あの表情をさせたのは私。


 ……私には、恋愛する資格なんて無かった。

 

 

 「恋」


 今、紀本君を想って感じるこの甘い痛みはそうなのだろうか。

 久しぶり過ぎて自分では分からない。

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