クレームに削り取られたエイチピー 回復魔法は君の声

「貴重なご意見をいただき、ありがとうございました」


 ゆっくりと受話器を置いて、ふぅと息を吐く。

 疲れた……43分もかかってしまった。

 「クレームの対応は長くても30分まで」とマイルールを決めていたのだけれど、力不足だった。

 それでもなんとか納得いただいて、最後は労いの言葉まで頂戴したので及第点ではあるが。

 同僚達からは、憐れみと労いの視線が飛んできた。


 色々と消耗した。

 これはコーラでも飲んでスッキリしなくては。

 私は対応記録を入力すると、気分展開に飲み物でも買おうと席を立ちって出口に向かった。


「大野さん、お疲れさまでした」


 ドアの近くに座っている紀本君が声をかけてくれた。しかも、軽く微笑んで。

 私のハートがドキンと弾んで喜んだ。


 え、何これ⁈

 ベホ◯ミ、ケア◯ラ、ヒー◯、ディア◯マ⁇

 黄色くなっていたゲージが半分以上回復したよ。

 

 まずいなぁ……これは。

 回復魔法より、ずっと強力で厄介な魔法もかけられてしまったみたい。

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