第12話

「では、文化祭の出し物は喫茶店に決まりました」

先生が黒板に書かれている喫茶店という文字をチョークで囲う。

(喫茶店、、、喫茶店か〜、、、)

「陽茉莉は担当何にする?」

「え?」

「調理?店員?案内?」

本当は調理係したいけど私、料理の才能ないんだよね、、、。ピーラーで手を切ったことあるし、、、。おにぎりとクッキーは作れる。

「案内か店員さんかな、、、」

「良いね、私は店員するつもり!」

「え、凄いね。恥ずかしくないの?」

「ファミレスでバイトしているから慣れてる!」

バイトか〜!やってみたいけど店番もあるし、そもそも店番自体バイトな気もする。


店の奥にあるカウンター(ただの机)に座りながら本を読んでいたら、めぐみちゃんが来店。

「いらっしゃいませ〜」

「やっほ!遊びに来たよ」

めぐみちゃんはそう言って此方に来る。手にはケーキ箱を持っている。

「ケーキ!!」

「陽茉莉の家に行く途中に見付けたんだよ〜」

「食べよ!」

「お店は良いの?」

「うん!」

「良いんだ、、、」

ケーキが食べられることに喜んでいると、隣に座っていたノアさんが微笑んだ。

「陽茉莉ちゃんは本当にケーキが好きなんだね」

「うん!」

「陽茉莉?」不思議そうにめぐみちゃんが聞く。どうしたんだろう?

そんなことを思いながら、リビングで買ってきてくれたショートケーキを二人で頬張った。

「美味しい〜」

「ね〜!」

めぐみちゃんはお母さん出してくれた紅茶を一口飲む。私は飲めないからオレンジジュース。

「紅茶好きなの?」

「うん、好きだよ。特にレモン」

レモンか〜、、、。

「レモン沢山いれたら酸っぱくなるのかな?って思って、十滴くらいいれたら苦かった、、、」

「え」

めぐみちゃんは有り得ないみたいな表情になる。

「い、入れ過ぎだよ、、、」

「何で苦くなるの、、、?」

「さぁ?」

めぐみちゃんも分からないみたい。

ノアさんは、、、あ、首を横に振っている。

服装だけなら優雅に紅茶を飲んでいそうなのに、職業はマジシャンという。


「今日は楽しかった?」

「うん!」

「良かったね」

お風呂上がり、自室でノアさんと話す。

「ノアさん、何で片眼鏡しているの?」

ノアさんは顎に手を置いて少し考えてから言った。

「ん〜、、、格好良いと思うからかな?」

「あ、そうなんだ」

ノアさんらしいと言ったらノアさんらしいか。

「君は覚えていないよね、、、」

「え?」

(覚えていない、、、?)

ノアさんを見る。長い年月を生きた仙人のような笑み。その表情から何を考え、何を見ているのか、それらを解読するのは不可能だった。

「おや、僕の方をそんなに見て、、、どうしたんだい?」

「あ、何でもないよ」

「そっか」

低い演技力で何とか誤魔化すことが出来た。

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