第10話
体は動かない。言葉も出ない。何も出来ない。
上下も左右も定かではない場所。自分が立っているのか座っているのか分からない場所。一秒と一時間の時間も曖昧で、寒いのか暑いのかも分からない。
『陽茉莉ちゃん、陽茉莉ちゃん』
また、あの夢。
これで何度目だろうか。
どうして私を知っているの?
『泣かないで』
泣いてないよ。
『陽茉莉ちゃんは何も悪くないんだよ、だから自分を責めないで』
大丈夫だよ。もう泣いてない。
『僕のことを忘れても良いから、、、君は幸せになってね』
嫌だ。
忘れたくない。
もう置いていかないで。
『僕はただ、君の笑顔が見たいだけなんだ』
その人は私の目元を冷たい手で隠した。
「ーーーっ!」
勢い良く飛び起きた。
何か忘れちゃいけなくて、急いで夢内容をメモしようした。
でも、ペンは動かなかった。
書けなかった。
どんな夢だっけ、、、?
(何で、、、何で、、、)
思い出せそうで思い出せない。
何も、分からない。
数分、頭を捻っていたが結局、思い出せることはなかった。
「陽茉莉、どうしたの?」考え事をしていたらめぐみちゃんに肩をポンっと叩かれた。
「え?」
「凄い神妙そうな顔して机を睨んでる」
「、、、本当?」
「うん。どうしたの?」
「実は、、、夢を思い出せなくて、、、」
「夢?夢って、将来の夢?」
「あっ、違う違う。寝る時に見るあれ」
「あー、、、あれね。分かるわ〜」
「分かるの」
「夢の中では覚えているんだけど、何故か起きたら忘れてるんだよね〜」
「何か忘れちゃいけないような気がして思い出そうとしているんだけど、、、」
なんやかんやあって、クレープ屋。
「ほい!いちごクレープ!!」
「ありがとう」
めぐみちゃんは食べ物のことになると変な方向にテンションが上がる。
放課後、試験近いのに少し寄り道。
「糖分取らないと頭もたない!」
「す、凄い、、、」
めぐみちゃんの両手にクレープ。
今の時刻、十七時過ぎ。
(晩ご飯、食べれるのかな、、、?)
『美味しそうだね』
何処からか聞こえてきた声に小さく頷く。
「まぁまぁ、細かいことは気にせず、ストレス発散じゃーい!」
勉強のストレスが溜まってたからだろうか、もう一個目を食べ終わっている。ついでにヤケジュースと言いながらレモネードを一気飲みしていた。
「めぐみちゃん、、、?」
ハッと我に返っためぐみちゃんは恥ずかしそうに「アハハ、、、」と笑った。
「美味しいよね」
「そうだね」
両者無言。
先に口を開いたのはめぐみちゃんだった。
「、、、お願い!今見たこと誰にも言わないで!!」
「ど、どうしたの!?」
「いや〜、何か恥ずかしいじゃん?」
そうなのかな?そうなんだろう。
「言わないよ?」
「あ、ありがとぉぉぉ!天使はここにおったんだぁぁぁ!!」
思いっきり抱きついてくるめぐみちゃん。
キッチンカーの近くといのに、私達は人目も気にせず笑いあった。
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