幕間〜大地〜

 ゼロツーが魔力を呪文を唱え中央の魔法陣に冥界の扉が現れる。


 「ベルヴェール!! 始まるぞ!!」

 


「今回は二重詠唱となる俺とベルヴェールで詠唱をする。始めるぞ」

 (…っ!! わかってるて)

 ベルヴェールは手元の移し紙をみながら。

 唱える。


『世界終わる時、生命終わる風前の灯火。眠る嘆き汝ら薫り抱きしめたまえ耳すませた海神の記憶、失意に染まりし立ちしきの月。蘇り永遠に涸れぬ光、白紙き君の夢祈り宿に百を百掛け合わせ十を二百掛け合わせ数えた数の前から不変の想い。(Oremor)八千年からもっとより燃えゆるものよ(Sorenar)再び万に万を掛け合わせた後も不変の想い。(IC.Teru――Oremor)汝を知り我が地獄に終末のラッパが絶えず…… 

   ――――

ベルヴェールとの詠唱文をゼロツーも魔術数式を織り交ぜ始める。

 Oremor!!

   ―――― 

 汝生まれ変わり幾度も旅立に見送り朽ちて君の名を歌う度に千を十掛け合わせた後の二が二千年の前から不変の想い。(Oremor)千六百に五を掛け合わせもっとより燃えゆるものよ(Sorenar)再び一を億とし掛け合わせた時が後も不変の想い。(IC.Teru――Oremor)汝を知ったその時から再び同じ数を数え時がたっても不変。

 (I……I……I……I……!!)汝を知り我が地獄に終末のラッパが絶えず。

(愛してるーオレもー!!!!)』か「世界観測記録ワールドオブザベーションコードRe.Easy.@.Re……


 ……

ゼロ(から始まるじゃない!!)

「&i」……End.i …とも聞こえた。

 悲しい響きと共に……。



   △


  

 とある高級住宅街にある介護施設近く自然公園の傍で二人の女性の姿が見える一人は職員だろうか? 車イスを押している。


 そしてもう一人は車イスに乗り膝にブランケットをかけ桜を微笑ましく眺めてる。


 車イスを押している女性が声をかける。

「母さん、もう大分暖かくなり始めて、すっかり母さんの季節ね。今年もこうしてお花見が出来て嬉しいわ」 


 車イスに乗った母親が口を開く

「ふふ、名前だけよ特に春生まれでもなければ関係ないのよ。それより敦子今日は、お孫ちゃん達は来てくれるの??」

「そうね下の子は、おばあちゃんに久々に会えるって喜んでたわ。一番上の子は旦那と場所とりしてて、でも千代子は大学とかで忙しいみたい。でも用事が終わったら絶対行く!! て息巻いてたわ……あら噂をしたら」『おばあちゃーん!!』

 迎えに来てくれたのだろう中学生くらいの男の子と女の子、小学四年生になる一番下の孫が走って来て手を繋ぐ。

「冷たーい?」外に出て寒かったようだ。

「暖かいよ、迎えに来てくれたんだね。ありがとう」

 上の女の子が下の子に急に走らないでと注意している。


 女の子達はおばあちゃんの孫達だ。

「あら? そのこは?」孫達はきょとんとしている。

 娘から変な事言わないでよっ誂わないで! と言われるが確かにそこにもう一人、中学生くらいの男の子がいるのだが……


 (綺麗な子ね……不思議)


 おばあちゃんは少し車イスを動かしそっと手を差し伸べる。

「……」

 男の子は困惑の表情を浮かべ、目は寂しげだ。

 不思議と目の離せない男の子は差し伸べられた手を掴み包み込む。

「っ……」

 そしておばあちゃんは直感と言っていいだろう。

 優しく握り返す手は懐かしく…

 思い出を巡る。


 ……

 出会いと別れの春に二人は別々となり、そして今再び出会ったのだ。

 世界は桃色の木々に囲まれ一人の女性の長い長い時間は止まる。

 ……止まり、そして動き出す。

 無彩色の何もない世界に一人と一人、運命の歯車が重なり合えば二人だけの世界が動き出す。

 それは一瞬だろうか? 一生だらうか?

 二人だけの時、長さや濃密さ? 甚だおかしい。

 二人が今を大切にするなら。

 

 『桜花さん』…………「大地さん」…………

 ベルヴェールの姿から大地の姿へ変わる。


「おかえりなさい。長い間、お勤めご苦労様でした」

 桜花は今まで大地がいなかった間の大地ともうけた娘と孫達の話しをする。

大地は一日だけ異世界を渡った長い様な短いお話をする。


それは……


桜花の長い人生と言う名の旅か、はたまた大地の異世界への短い旅の事なのか時間で価値はつけられない。


 ……

 新緑の青い風に言の葉は息吹き桜花は続ける。

 『やあ、ベイビー? 今日はどうしたんだい?』

 そんなピンク色の、話ぢゃなかったねベイビー。


 青々とした新緑は大人びてワインレッドに彼女の口が言葉を紡ぐ。

 (ははっまさにディープさ彼女。イカしてる)


 

 「私ねまだ貴方と結婚してないの。式はいつかしら? ふふふ、新婚旅行は何処かしら??」


 (赤く染まる頬の色を使い僕は……)

 暖色の色を使う。

 彼女は年甲斐もない事を口にしたと照れる。

 さらに桜花の頬は赤く染まり、その姿は不思議とあの頃のまま、大地は照れ隠ししながらも思う。

 (ああ、綺麗だ)

 笑い合う二人は黄色。


 白地の画用紙に片足を大地が乗せて。

 今すぐ行こうと繋がれた手を優しく引き寄せる。


 ゆっくりと離れていた時間を埋め合わせるように二人で一歩また一歩と……

 無彩色の世界が二人の足跡で鮮彩に色付いていく。


 (ベイビーは難しいから桜花さんで。お手をどうぞ)


 桜花は大地の手を取り。

 今。

 ……

 今、二人は白いパレットに足を乗せ。

 二人だけの時間に二人だけの世界と少しの会話交えながら。

思い出をリュックに詰めて二人一緒に歩き出した。

 二人だけの新たな旅路ハネムーン


 

   ▲


 ……

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