6話

 ベルヴェールはゼロツーに言われた。


 【自分の力を試して、戦闘データの収集する】

 【倒した魔物の素材の回収】

 

 この二点を熟す為に外界、魔巣窟へ向かう。


 

 ベルヴェールは扉を開けて初めて感じる。

 

「………………………………」 

  

 シャンゼリオンの空気と、それをプレッシャーで押しつぶす辺境の魔巣窟と繋げられた。

 冥界ダンジョンの異なる独特な雰囲気にあてられながらも……玄関から屋敷の外へと一歩を踏み出した。

 

 ベルヴェールは周囲の様子を確認する。


 

 (空気が少し冷たいが、戦時と比べると。天と地程の差だな。ただ、奥を見渡す。と……更に強い。異様な雰囲気を感じる) 


 

 建物の周囲には巨大な樹木が連なっている。

 それにも関わらず、何故か清々しい光が差し込む。

 周囲の空気も朝なのかと思う程。

 非常に澄んでいた。


 ここで新鮮な空気を吸い込みながら、ベルヴェールは森の中を歩き始める。


 

 (そういえば。今って何時くらいなんだ?? 本当に朝か? 日中なのは間違いないが)


 

 そんな屋敷から一歩き出した。

 ベルヴェールは再び周囲の様子を確認する。

  

 屋敷の周囲には巨大な樹木が連なっている事から山か、森だろうか?? 傾斜もある。

 この周囲の空気は冥界のダンジョンと繋がっている為か?? 暖かさと冷たさが混じる空気感。


 氷が溶けて行く様な暗く冷たく重い雰囲気だ。


 威圧感と言うより。

 畏怖するような感覚。

 早朝の海辺に霧りがかった……なんと? 形容したらいいか分からないが不気味で鳥肌が立ちっぱなしだ。


 

「まずは索敵だな……えっと魔力を足元から地中にかけて……と地脈を感じたら魔力をかけて流して行くと……」


 

 ゼロツーの知識、シャンゼリオンには存在しない広範囲の魔力感知。

 地脈に魔力を流す事により地面に接している存在、地形や建物、生き物の類を索敵出来る。

 近くほど鮮明に遠くになるほど効果は薄くなるが魔力量に比例する。


 

「恐らく元々あった場所は分かるんだが、途中というより。一定の範囲から曖昧になるな……ゼロツーの言ってた。冥界のダンジョンの所なんだろう……けど!? とりあえず!! 引っかかったやつから片っ端に試して行くか!!」


 

 ベルヴェールは気合いを入れ直し。

 預かったマジックアイテムを頼もしく思いながらも魔力を流しつつ歩き始めた。


 進んで行くベルヴェールは、屋敷の周辺を見渡す。

 巨大な樹木が一定に連なりながらも、緑の草花が青く広がって行く。

 冥界と魔巣窟、そして屋敷の異なる雰囲気の中でここは日本に居た時の様な心、落ち着く場所だ。

 そう見ていたのだが……その思いは、ある意味。

 良い意味で裏切られる。


 

 

 (おいおい……)


 

 

 それは見たことない。

 異世界の植物が大半で、初めて見るものには、赤や黄色、青に七色まで異彩を放つ。

 奇天烈奇抜な草花が目に入る。 

 屋敷の周囲を取り巻くように覆っている。

 


  

 (木や草といった植物は、日本に居た時と似たような物もあった物だと思ったんだがなあ)



 

 ベルヴェールは色彩豊かな草花に覆われた。

 開けた場所の少し先で赤い果実らしきものがなっている木に目を止めた。

 その木の前まで移動し、手を伸ばして木から生えている果実をその手に取る。


 

 (これ……食べられるのか?? 見た目はリンゴ。赤いからって辛いオチじゃないよな??)


 

 ベルヴェールは、融合した。

 アンジェリカの記憶を思い出す。

 

 ……

 

『リンガ』

 魔巣窟の森になっている果実の一種。

 その果肉は甘酸っぱく美味。

 ただし、美味しいが故にその果実を好む。

 魔獣や獣も多い。

 この実を見つけた場合は周辺注意が必要。


 

 

「はっ!? なんじゃそりゃー……いやでも」


 (このリンガを、ここから幾つか亜空間倉庫に入れてばら撒けば。入れ食いなんじゃないか??)

 


  

 そして三分程歩くと、屋敷の周辺に張られている薄い膜のような物が見えてきた。

 

 

 (これが、アンジェリカの言っていた。多重結界)


  

 屋敷から暫く離れた場所で、区切られる様に現れた。

 それはアンジェリカの結界だ。

 こちらにも先程の光景と同じように結界の周囲を取り巻くように奇天烈奇抜な草花が覆っている。

 やはり他の草木も初めて見るものが多かった。

 これは、時空間魔術で時止めを行い。

 精霊魔術も合わせて、改めて外には魔術と精霊魔術で多重に結界を施されており。

 空と外部から見えぬよう。

 さらに隠蔽魔術まで施してある結果だろう。

 

 

 (隠蔽魔術が精霊? エレメントの力を借りて、自然と更に融合してるのか……なる程なあ)


 

 そして改めて決意を固めた。

 ベルヴェールは、結界の外へと一歩を踏み出す。


「………………っ」

 

 結界を一歩外に出た途端に感じたのは、圧倒的な生き物? 恐らく魔物達の濃密な気配。

 今、ベルヴェールが感じている気配の数々はどれも圧倒的なものだった。

 森の不気味な空気を感じながらも、一歩また一歩と森の中を歩き始める。

 道らしい道は結界の外から徐々に減っている様で見上げる程の大木が多数生えているのを見て考える。

 

  

 (魔巣窟、辺境の荒野と森? 山ねえ)


 

 屋敷の近くでで感じて居た“暖かさ”あれは多重結界のおかげだろうと認識する。

 当初、玄関先で感じた。

 プレッシャーは“此処”、結界の外から来るもので間違い無さそうだ。

 しかも、“奥”山を越えた先か森を抜けた先、荒野だろうか、そこと冥界のダンジョンが繋がっできる様だ。

 魔物達の動く濃密な気配と探知魔法に引っかかるのを見て縄張り争いか、混乱か何かが起きている。



 そしてベルヴェールは探知魔法と目視を使い更に奥へと再び歩きだす。

 さすがに結界の外は放っておかれただけあって、先程と変わらず道らしい道は無い。

 ただ何故か?? 見上げる程の大木達は適当な間隔を開いており。

 歩くのにはそれ程の苦労しなくなった。

 時々苛立たしげに魔物達の声が聞こえる。


 

 (この間隔が空いてる。木々て獣道が故にこうなってるのか?? 屋敷近くは生い茂ってたし)


 

 ベルヴェールは苛立たしげに魔物達の声に煽られるような気色がして、またゼロツーとのやり取りを思い出し狩りの路線変更をする。



  

「なんか、あれだなどうせなら“デカい”の狩って、二人をドーン!! と驚かせてやりたいな。……思えば……散々!! ゼロツーにはからかわれたしな!!」


 

 

 そらからベルヴェールは結界を出てから三十分程だろうか?? 時間にすればそんなものだが、開けた場所を探して速度を徐々に上げ始める。

 

 当初は、出会う物、出会う物を狩って行く考えだったが、今のベルヴェールは、よりを、またをと考える。

 

 これも三者三様の融合の影響だろうか?? ただ、ベルヴェールこと大地は”空軍”所属だった事もあり勝気な性格ではあるのだが、探知にかかるのは小物ばかり。

 

 ……ここで、引っかかる魔物はシャンゼリオンの世界では殆どがC.Bランク相当の魔物達なのだが……


 

 ベルヴェールは開けた場所、つまり翼を広げられる場所を求めて、空から、上空から一気に荒野へ抜けようと、道なき道を身体能力の上がった身体で、かなりの速度を出しながら森の中を進んでいく。


 そんな中、ベルヴェールは少し先に開けた場所を見つけるが、見覚えのある”赤い果実”がなっている。


 


「……リンガだ」

 

 

 アンジェリカの記憶を思い出す。

 ……その果実を好む魔獣や獣も多いが故に見つけた場合は周辺に注意が必要。


 

 その説明を思い出した。

 ベルヴェールの顔は、何処か嬉しそう。

 改めて、探知魔法をこの周辺に絞り込む。

 地脈に魔力を流して範囲を狭める。

 


 (駄目だ小物ばかりだ)

 

 ベルヴェールの言う小物。

 最大Sランクの中のC〜Aクラス。



 開けたこの場所の周辺を見て。

 ベルヴェールは思い出したかのように思う。


 

 (いっそ空を飛んで移動してみるのも有りかもな……どうやって飛ぶのか試して見ないとだけど) 



「えっと……翼を消した要領で背中に魔力を……」


 

 ばさあああ!!!


 

 魔力を込め背中から勢い良く。

 幾つ対もある白い翼が広がり、赤い炎と共に薔薇の形になって収縮して行く。


 

 ……シュルルル。


 

 その出会いは突然に!! ベルヴェールとは違う翼、羽根の音と空間を支配するかの声と共に、そいつは現れた。


 

 

「グルルルルルルルゥ!!」


 

「なっ!!!」



 

 すぐ、その場を離れ飛び立とうとした矢先のベルヴェールだったが、一足遅く声の聞こえた方向を凝視する。

 目の前や後ろ等の類ではなく……上……正確には、”空”つまり魔力感知に引っかからず。

 上空からやって来たは……その姿は鷲の翼と上半身、獅子の下半身を持つ怪物。

 体長は五、六mにもなりそうな程の大きさで”天空の”の異名を持つが威嚇するよう唸り声を上げ足を振り上げていた。 



 

 ベルヴェールも意識を一瞬で切り替え。 

 冷静になった、ベルヴェールは亜空間倉庫から魔剣の“黒刀”構える。

 その時の本人は全く気にした様子はないが、ベルヴェールの心に戦闘に対する過剰な”恐怖心”や”躊躇”いといったものは存在せず。

 先程リンガを手にした時の様に“笑っている”

 


「……っ!? はは」


(……遅かったか。けどまぁ、しょうがないと言えばしょうがない。大人しく素材になりやがれ!!)



 

 グリフォンの降り下ろされる一撃。

「グルルルルルルルゥ」


 

 ベルヴェールはその一撃を横に跳ぶ。

 その先に生えていた木を蹴り、三角跳びの要領で攻撃を回避して、グリフォンの胴体へと魔術を叩き付ける。

 

 

「流石異世界って!! かあっ火球ファイアボール!!」


 グリフォンに向かって行く。

 火球ファイアボールは激しくグリフォン身体にぶつかるが効いてる様子は無い。



 そして、お互い一撃ずつ放ち。 

「…………」

 ベルヴェールはグリフォンを見つめる。

 

 

「…………」

 グリフォンはベルヴェールを見つめる。

 数秒、互いに無言で目の前いる者を見つめ合う。




 そして……



「グルルルルルルルゥァァァァァァッッ!」

 


 グリフォンは開幕の合図と言わんばかりに、周囲一帯へと響き渡るような雄叫びを上げ。

 四つん這いになって。

 ベルヴェールへと襲いかかってきたのだ。




 ベルヴェールは『亜空間倉庫』から出した黒刀に火魔力を込め魔術を放つ。



「我は唄う火炎の力を火鳴文カナブン

 火魔術の詠唱破棄、詠唱力、魔効力を上げるバフ。

 

 

 まずは自身で近付いてくる距離を離し続ける。


  

 ベルヴェールは移動しながら続けて詠唱する。

『火よ泣き絶まえ。火と人なりて闇集めたまえ。夏全てに飴の夜、花の世、君の代、故に汝は虚しさ病みて消え太陽と蛇なり。身を焦がしてく様。選択の連続、羽の様、夏の夜、我がままの雨模様、晴れの様、火と火となりて炎と成せば道半ばにて縁となれ。汝、我が思いのままに進め』



 この時、最悪だったのはグリフォンだろう。

 ベルヴェールは火、炎魔術の随一の使い手。

 短略詠唱でも高い攻撃力を持ち永遠と放ち続ける。


飛んで火に居る夏の虫エテ・ヴァーミン・フランメ・マチソワ・ショー


 ……

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