4話

 長い沈黙を解きベルヴェールは言葉を紡ぐ。


「………この…これは、その無詠唱が可能と言うのも驚きだが……」


 ゼロツーの世界、大賢者大魔導師等の世界に名を轟かせている物の一部にはゼロツーの様に無詠唱で魔術行使出来た。

 生憎全て行使出来る訳出なく。

 勿論センスも必要だろうが一番は数をこなし身体で覚え、その魔術を無詠唱で行えるようになると言う物。


 魔術は詠唱の文字数やイメージ力、世界の成り立ちから数式、分析、理解力によって効果を高める。

 無詠唱と似たものに詠唱省略や詠唱破棄等があるが総じて威力は下がる。

 そして魔力を膨大に使い。

 補う為に無理に行っているものである。


 ベルヴェールは魔術の知識、それも死を司る神の冥王の知識、その片鱗を見た。

 ゼロツーとベルヴェールの魔術の話しで、興味深そうに黙って一緒に聞いていた。

 アンジェリカにもゼロツーは改めて二人に説明する。


「無詠唱がシャンゼリオンで出来るかは分からない。だが……使えたとしたら恐らく人間では初だろうな。まあ慣れるまでさっき渡した。クリスタルの魔結晶の指輪を使って試しまくれ!! そんで中位までの詠唱破棄が出来て。それから、使い慣れると無詠唱でも発動可能だ。ただ……注意が必要なのは渡した。だ魔術媒体にもなっているか故に……」


 破ンっ!! ゼロツーはパンッと急に手を叩き。


 一瞬で、深――シンとする。

 アンジェリカが興奮している様子だったからか?

 ゼロツーは一瞬で空気を引き締め直し話しを続ける。

「それで、ベルヴェールの魔力を考えると、闇属性の魔術を禁呪の上の神呪をも発動してしまうだろう。簡単に説明すると神呪の魔術は魔力消費も比べれないし。何より地形を変え世界を変えうる力だ」


 アンジェリカは魔結晶の指輪の詠唱破棄、また無詠唱での行使の可能な話し。

 さらに漆黒の黒い魔剣の刀によって、天変地異を起こす禁呪や神呪術の事象が起こり得ると聞きおよび。

 アンジェリカは興奮を抑えながら、あくまでも一魔術師として、また研究者として質問する。


「その、ゼロツー殿が居らっしゃった。世界と我々の……シャンゼリオンの世界。異世界の魔術や魔道具についてだが、具体的にはどのくらい違うのかですかね?? 是非とも教えてもらいたい」


アンジェリカは頭を下げるようにして、ゼロツーはいいと手を振りながら質問に答える。 

「魔術についてだが、俺の世界は魔術が特に進んでる。

時代背景で言うと。そうだなシャンゼリオンが中世?? 俺のいた世界が近代未来て感じ。分かるか?? 中世、近未来。それでだ、魔力量も総じて多い故にコントロールもする。それで固有のマジックアイテム。向こうでは魔装て言うんだが自分で生み出す奴もいる……」


 アンジェリカは魔装について尋ねる。

「その魔装と言うのは、全ての人々に出来る物なのでしょうか?? こちらの世界で言う。固有魔導具ユニークアイテムの様な物ですかな?? ……その私にも出来るのでしょうか??」


 ゼロツーは不思議な雰囲気を放ち話しを続ける。

「ほう、今の状態で死の神に生を尋ねるのか?? 面白い。面白いが、今は……話しを戻すぞ。正直な話し。この世界でも魔力コントロールを鍛えれば。出来るやつは出来るだろうよ。寧ろ出来ないと可笑しいな」


 興奮してしまい反省した。

 アンジェリカは恐る恐る話しを続ける。

「はああ大変失礼しました。この様な今の存在で……はあ、その魔装の魔力のコントロールの件は解りました。ただ先程お聞きしました。魔術の発展発達はどうなんでしょうか??」


 ゼロツーは心で呟く。

 (めんどくなって来たな。基本属性の話しか?)


「んーー後は俺らの世界は何より全ての人間が魔術を使える。だから魔術の細分化が進んで研究と証明されてるし。ただ大まかな属性とかはシャンゼリオンと殆ど同じ。だが、ここ、シャンゼリオンは魔術師と言うか、今は魔法使いと呼ぶべきか?? 絶対的に数が少なすぎる。だから俺らの世界とでは、冗談抜きで数千年単位違うと思うぞ」


「数千年先……それに細分化?? ですか」

 数千年先の言葉に、ながらで聞いていたベルヴェールも真面目に聞いていたアンジェリカも驚いている。

 

 説明が段々めんどくさくなってきたゼロツーは呆けてる今がチャンスとばかりに、ペラペラと早口で詳しく説明をしていく。

「君らのシャンゼリオン」

 ……シャンゼリオンの世界では地水火風が基本属性で光や闇、時空魔術、錬金術、召喚術、古代魔術等、特殊属性があるが分類はされていない。

 新しい魔術を見つけ仕分けをするとなると情報が少なく振り分けが出来ないのが現状。

 一応草木も含め生物には魔力が宿るのだが実際アンジェリカの様な魔術師は今代、シャンゼリオンの世界を見て、一人二人いるかいないかだ。

 そのため次代に続いて行った、魔術師、魔法使い達も数や質は発展発展する事無く現在は衰退し数も少なく弱くなった。


「ぼくらの」

 それは哀しみのロボットSFジ・アース。

「僕らの世界」

 んーー合唱曲!!

「……俺らの世界」

 ゼロツーの世界! 正解。マル。

 ゼロツーの世界の基本魔術には、炎水風土光闇・時空・錬金・召喚・魂の基本属性にそれぞれに再生と破壊を司る二極がある。

 つまり基本的な属性だけで三十も有する。


 これに加えて、ゼロツーの死属性等の特殊属性、固有属性もある。

 また水と風魔術が複合派生しての雷魔術(水+風=雷のタイプを複合属性)

 単一しての雷魔術(純粋な雷として独立タイプを特殊属性)等別れており。


 魔術も術式の規模や難度に応じて、一から十五階梯以上まである。

 階梯の規模は第一第二が下位。

 魔術第三第四が中位。

 五〜七階梯、上位。

 第八極大(数十に規模を死に至らしめる)

 九階梯戦術級(軍団の殲滅)

 第十戦略級(千人規模殲滅)

 第十一〜禁呪(街々や小国群が滅ぶ)

 第十五〜超えると神呪(国々が大陸が消える)

 〜天地創造の破壊と再生の天変地異。


 話しを聞き、ゼロツーの垣間見た記憶と知識を照らし合わせてベルヴェールは不安を胸に恐る恐る尋ねる。

「……その地獄の炎とか冥界の〜とかの他にも階級の重い魔術が怖いんだが、時間を停める。とか山を穿ち、海を割る。とか消滅とか……その色々」


 ゼロツーは少し勘違いをして自信満々に答える。

「その辺は安心してくれ。外界は時空間魔術で改めて隔離して。一時的に俺の冥界ダンジョンと繋げてある。破壊や消滅しようが直ぐに復活する。寧ろ一度消滅したら冥界の魔素に当てられて希少種や上位種、独自の進化した新種のモンスターなんかも出るかもな!? ははは」


 (えー!! いつの間に外は冥界と繋がってるとか言うし。消滅する可能性あるじゃん。こえーよ。笑えん)


 ゼロツーはベルヴェールが外界の事を心配していると思っていたのだが、当の本人ベルヴェールはマジックアイテムを使って。

 自分が魔術に巻き込まれないのかを心配していた。

 ……

 このすれ違いに二人は気づく事はなく。

 ベルヴェールは不安に感じつつも新しい体を信じて、なんなら翼があるのだ!! 飛べるのか!? と、切り替える事にした。

 これも魂の融合の影響だ。



「わかった。次こそ行ってくる!!」

「ああそうそう!!」

 またまた急に呼び止められる。 

 二度有ることは三度ある。


 今度はゼロツー。

「渡しておいた。子猫の転移魔法陣について、使い捨てだが魔力を通すと俺を目印にして、ここの周辺には帰って来るようにしてある。初めていく場所だ! 場所が分からなかったり、ピンチになったりしたら。遠慮なく使ってくれ」


 『子猫の転移魔法陣』

 ……使い捨てだが術の行使中、少しだが話す事が出来る。

 魔力によって燃えて行くが熱くもなく火が移る事もない。

 シャンゼリオンには存在しないアイテム。



 ゼロツーとアンジェリカは、これから生命有る創世魔術の改変を試行錯誤していくのだろう。

 ゼロツーの持ち合わせのマジックアイテムをアンジェリカは穴が開くほど見ている。 


 

 素人目に見ても。

 シャンゼリオンで見れないような、トンデモアイテムなのは間違いない。


「…………」

 間違いはないのだが、素材も!? となると。

 アンジェリカの研究者としての魂に火をつけ。

 没頭し過ぎて、爆発!? いやいや、もはや別物?? に、さえも……

 何故か? いや絶対そうなると。

 どこか確信めいているるベルヴェールだった。



 そんなアンジェリカ達を尻目にベルヴェールは、マジックアイテムの数々を亜空間倉庫にしまい。


 

 ……玄関から屋敷の外へと一歩を踏み出したベルヴェールは周囲の様子を確認する。


 (空気が少し冷たいが、戦時と比べると。天と地程の差だな。ただ、奥を見渡す。と……更に強い。異様な雰囲気を感じる) 


 屋敷の周囲には巨大な樹木が連なっている事から山か、森だろう。  

 または、周囲の空気は冥界のダンジョンと繋がっている為か??


 暗く冷たく重い雰囲気だ。


 威圧感と言うより。

 畏怖するような感覚。

 早朝の海辺に霧りがかった……なんと形容したらいいか、不気味で鳥肌が立ちっぱなしだ。


「まずは索敵だな……えっと魔力を足元から地中にかけて……と地脈を感じたら魔力をかけて流して行くと……」


 ゼロツーの知識、シャンゼリオンには存在しない広範囲の魔力感知。

 地脈に魔力を流す事により地面に接している存在、地形や建物、生き物の類を索敵出来る。

 近くほど鮮明に遠くになるほど効果は薄くなるが魔力量に比例する。


「恐らく元々あった場所は分かるんだが、途中というより。一定の範囲から曖昧になるな……ゼロツーの言ってた。冥界のダンジョンの所なんだろう……けど!? とりあえず! 引っかかったやつから片っ端に試して行くか!!」


 ベルヴェールは魔力を流しつつ、歩き始めた。

 屋敷の周辺を見渡す。

 屋敷の周囲を取り巻くように覆っている。

 (木や草といった植物は、日本に居た時と似たような物もあった物だと思んだなあ。)

 見ていたのだが……その思いは、ある意味。

 良い意味で裏切られる。


 屋敷から暫く離れた場所で、区切られる様に現れた。

 それは見たことない。

 異世界の植物が大半で、初めて見るものには、赤や黄色、青に七色まで異彩を放つ。

 奇天烈奇抜な草花が目に入る。


 森の不気味な空気を感じながら、森の中を歩き始めるが道らしい道は無く。

 見上げる程の大木が多数生えているのを見て考える。


 (いっそ空を飛んで移動してみるのも有りかもな……どうやって飛ぶのか試して見ないとだけど) 


「えっと……翼を消した要領で背中に魔力を……」


 ばさあああ!!!

 魔力を込め背中から勢い良く。

 幾つ対もある白い翼が広がり、赤い炎と共に薔薇の形になって収縮して行く。

 ……シュルルル。


 そして、その出会いは突然。

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