3話

 ゼロツーはベルヴェールに翼を授けーる。

 ンンッなんか違う。

 ……

 ベルヴェールは今じゃないと翼? を仕舞う。

「なるほど、翼を仕舞うと服の一部になるんだな。というか、この服もゼロツーの調整によってマジックアイテムになったて事だよな?」


 ゼロツーはさも当然とソファーに横になってヒラヒラと先程のナプキン片手に答える。

「まあ、元はアンジェリカの作ったやつにちょいと手を加えてな。仮のて感じだな。取り急ぎ翼が生えてても着れる。正確には炎に燃やされない服て感じだな」


 ベルヴェールはアンジェリカとゼロツーの説明。

 そして自分の受け継いだ知識で補填し頭の中を整理する。

 身体をストレッチの様に動かし、肉体の性能を確認しながら。

 大方、理解した後テーブルの上にあった水差しで木のコップに水を注ぎ一口含む。


「そう言えば。この水も数百年前の物なんだよな」


 家主のアンジェリカが当然の様に答える。

「我が宗派の時空間魔術で時止めを行い。精霊魔術で家の管理と警備、外には多重結界と隠蔽魔術を施してある。水もただの水ではなく高濃度の魔力水だから美味かろうて」

 

 ベルヴェールは素朴な疑問を投げかける。

「ん? この家の安全性はわかった。だが水は何で高濃度の魔力水だと美味いんだ??」


 ゼロツーが変わりに答える。

「この世界では生物には全て魔力がある。例えばモンスター等の高ランクモンスターは強さに比例して魔力も高く持ってる。だから水と同じく、高い魔力を込める。所持していると、その素材も美味く感じる。そんなとこよ」


 そして改まって、ゼロツーが今迄お惚けたた声色とは違う。

 真面目な声色で口を出しだす。


「ベルヴェール」

 

「ベルヴェール早速だが、創世魔術の魔法陣の確認を行いたい。アンジェリカはアイテムボックスをベルヴェールに渡してくれ。それに素材やらマジックアイテムを収納しているんだろう??」


 アンジェリカはゼロツーに対して、崇拝しきったのか畏まる。

「こちらにご用意が」

 ゼロツーはアンジェリカから一度受け取るとベルヴェールに手渡し伝える。

「このアイテムボックスはお前にしか使えん。中身を確認して全て出してくれ」


 アンジェリカは黙って頷く。


 (確認と言われてもなあ)


 すると不思議な事にベルヴェールにだけ目の前に一覧が現れる。

 ベルヴェール、アンジェリカとゼロツーで確認を行いつつゼロツーが再び声をかける。


「それでだベルヴェール、マジックアイテムを確認したら、外に出てモンスターを出来るだけ狩って来い。死体はアイテムボックスではなく、俺の渡す。亜空間倉庫に入れて。素材は生命有る創世魔術の時に使用する」



『は??』 

『いやいや!!』



 これから生命有る創世魔術を行使する。

 そう、と思っていた。

 だが……まさかいきなりモンスターと戦え。

 ゼロツーのベルヴェールへ戦いに出向かせる。

 その言葉はアンジェリカ含め、全くの予想外。


 また屋敷の外界は辺境にある未開の地。

 ここはアンジェリカ達の屋敷があれど、外界の森や荒野には竜種やエンペラー種、新種の高ランクモンスター等の巣窟で本来、人は立ち入らず。

 

 それは屋敷を構えている。

 アンジェリカ達世代の天才達が誇った。

 魔術師達が次代の魔法使いと比べると明らかに強さの次元が、笑える程、可笑しく違く。

 魔の巣窟で生きえる魔術師達、いや……

 其処に殲滅の軍事力が有る事を証明していた。


「何も不思議な事ではない。自分の力をある程度、試すのと。戦闘データの収集だな。アンジェリカからのマジックアイテムはアイテムボックス含めデータを元に俺が調整に回すから。俺からこれを……」


「…………」

 ……

 ゼロツーが手渡したのは、透明で薄く青い光を放つ結晶の石板。

 これは、スノードームの様に中に文字が浮かんでいる『魔結晶の魔本』と言うらしい。

 …………

 特殊素材の水色の呪符『子猫の転移魔法陣』

『亜空間倉庫の腕輪』

 …………アンジェリカの用意した。

 アイテムボックスと違うのは固有魔導具ユニークアイテム化を行っていない点。

 そして一番の違いは、強く抵抗、つまりダメージは受けさせるが生き物が入る点だ。


「そして、魔術師としての魔力媒体だ。ほらよっ」

 

 斤ッ!

 キンと甲高い音と共に、ベルヴェールの手のひらに一つの小さな魔法金属が乗っかる。

「L.O.T.R」

 ベルヴェールが珍しくボケる。

「ちゃうちゃう愛しいひ……ンンッ……指輪だ」

 ノリ突っ込みゼロツー流石、神

「指輪??」

 

 ゼロツーが続けて説明する。

 …………

 クリスタル魔結晶で出来た指輪。

 サイズ調整付き。

 魔術の威力に重きを置いた杖と違い。

 詠唱破棄かつ瞬時に発動できる速度が特徴。

 指輪自体に記録された中位までの術式を行使する為、術者負担は魔力の提供のみ。

 慣れると術師の使用頻度、またはセンスによって術式を最適化し無詠唱で行使可能。


 ゼロツーは何故かソワソワと、照れ隠し? をしながらベルヴェールに伝える。

「まあ、媒体無くても、お前の場合。赤髪が魔力調整ついてるから。補助だ補助、補助的にな」


「お、おう!! ありがとう。それでも助かる」

 指輪を身につけるベルヴェール。

 ふとゼロツーとアンジェリカを見る。

 なんだ仲良くなったのか? 軽く何やら話してる。

 (きっと行って来い的な。手向けの言葉だろう)

「さて」

 ベルヴェールは一言そう呟き。

「あっ!! 待つのじゃ!!」

 部屋を出て屋敷の外へ出ようとしたが、アンジェリカに急に呼び止められ、改めて声をかけられる。

??」

(は? 何言ってるんだ。装備はこの身体に、魔力媒体、他にも色々だな。うん問題は無いかな)


 ベルヴェールは返事をする。

 コンコンっと、扉を叩くゼロツー。

 音のした先、ゼロツーを見つめるベルヴェール。

 (お前の仕業か)

 待ってました!! とゼロツーは話し始める。

 ……

?」

(????)

 ベルヴェールも受け継いだ。

 記憶にこの流れは無く、理解らない。

 アンジェリカも、? マークを光で浮かべてる。

 (器用だな)


 そしてゼロツーは改めて尋ねる。

??」

 しぃーと人差し指で唇を閉じるポーズを見せ。

 こう続ける。

「その問いに返事は、。だ……何、神のおまじないだよ。て俺、神だわ死神だけど」


 ゼロツーは心で呟く。

(俺、神は言った。ここで死ぬ定めでは無い……なんちゃってのなんちゃってだったり。な!?)


 ベルヴェールはおちゃらける、ゼロツーを憐れみの目で見ていると……

 何故か、閉じた口が勝手に動いた気がして、ついポロっと一言呟く。


(えっ?? おまじない言っちゃた。何かの魔術か?)


 そしてゼロツーは頷き、口調が変わった。

「私のサポートが心配なのか?? 良いんじゃないかな? アンジェリカも良くやってくれてるしね」

 (はて??)

 困惑するベルヴェールだが、話しを合わせる。

「俺も今日会ったばかりだが、そう思う」

 

 ゼロツーは同じ口調で続ける。

「……君の頼みは断れ無いよ」

(神は俺で、俺は絶対だからね)

 そう言って心でも呟く厨二病神。

 亜空間からゼロツーは他の武器を出す。

 …………

 透明な鞘に収まる黒刀を渡される。 

 魔剣を収める鞘。

 武器は、透明な水晶の鞘に金色の2匹の蛇が刀身に纏わりつくよう彫られ。

 身を守るマジックアイテムで所有者に対しあらゆる攻撃に耐性を持つ。

 闇属性に関しては完全に無効化する。

 

 …………漆黒の黒刀の魔剣

 物質に依存しない斬撃は斬った相手の魔力を喰らい噛みつき一振り一振り威力を上げていく。

 刀身は漆黒、刃先は黒く、その刀身全てが水晶の刀であり魔力媒体にもなる。

 闇属性の者には威力向上消費魔力減だが付与効果が付き、属性が使えないものでも、ある程度の術師保持魔力に比例して術を行使する。


 …………双刃の槍。

 その本体はひびの入った隕石で作られており。

 その隙間から青い光が稲妻のような模様が走る。 

 上下の刃での斬撃は風魔術が付与されており飛翔する斬撃を放つ。


 また投擲しても空間魔術によって手元に戻り投擲の一撃は雷魔術が一点に集中し空間を縮小した後、爆発する。

 

 さらに魔力を込めると弓形態にもなり。

 込めた属性の矢を放つ。

 その魔力は空間魔術によって膨張し、破裂し。

 その矢は雨のように降り注ぐ。


 媒体としては使えない。

 ただ魔力を貯める事が出来る為。

 斬撃、投擲、矢と、その威力は初級から天変地異を起こす事象まで引き起こす。


 ……

 ベルヴェールは指輪の媒体、黒刀と鞘、双刃の槍を見てゼロツーに問いかける。

「おいおい。かなりの数があるが、使い方は??」


「これを」

ゼロツーはそういうと亜空間の狭間から拳大の透明な『記憶石』を二つベルヴェールに渡す。

「これは?」


「まず透明の石。記憶石を使え。魂が融合したばっかりで、散らかった知識をより鮮明にする。一つは俺の魔術の記憶。そして魔結晶の魔本に魔力を流すと術式が浮かんで行くから吸収して行け。もう一つの記憶石は俺が行った事のある第二、第三の異世界で得た武術の知識その第一弾だ!!」


 ベルヴェールは少し困りながら。

「いや、一弾だ!! て言われても。二弾三弾続くのか??」

 ゼロツーはあしらう様子で再びヒラヒラとし続ける。

「まあ別に二弾以降は後で時間見てで良い。ただなんだPCのダウンロード、アップデートだと思って。第一弾を吸収しとけ。ふふふっ気楽にな」

 (俺は機械かなんかかな?)



 ベルヴェールは貰った知識からダウンロードとアップデートて電子機器だから成り立つのだろう?? そう疑問に思いつつも、新しいこの身体。

 (…………ん? そうだよな)

 よくよく考えれば、自分自身も人工生命体なのだから……等、考えつつ半ば納得してしまう。


 ベルヴェールが細かい事を気にしなくなったのは、魂を融合し馴染んで来ている兆候だろう。



 ベルヴェールは透明の石(記憶石)に魔力を流し同調、吸収し様々な流派の武術を脳内に記憶として受け継いでいく……

 ……天剣……流剣……獣王格闘武術……エスエムエル王国式剣術……巨人甲体術……帝国式剣術……エレメント精霊剣……長槍流一文字……銃術拳……蛇双槍……糸操テオドル暗術……壷虫暗殺呪術……三七四五八式……水の呼吸……半断牙恐イ……上腕二等金銀銅槌……絶剣……猫酔拳……猫拳……似暗中……海人……二刀流……斧そう操術……馬上槍剣展開術……鬼牙突波状式戦法……合力呼吸の法……火多流……戦龍王盾術……エンチャント式……飛体操術……抜刀術先々攻……四千手弓術……槍術杖術……火之神火蔵……次元ノ銃……流犯……銭型鳴弦……亜鉈ノ……大事名者強奪……貴女ノ心……死神……五右衛門流……適当斬り……銭型後走り……峰打ち子……不死子……独歩……龍牙如く……虫見操追跡術……貫通攻撃剣術……歩地腕王犬拳法……蛇ア邪面……膨大な情報とイメージが脳内を巡る。


「ずいぶんと種類が多い。なあ……ちょっといいか? まず上腕二等金銀銅槌てのは、漢字を間違えてるのか? 他にも色々」


(この世界に漢字があるかは謎だが明らかに誤字? いや、筋肉だろう。二頭筋だよな……金銀銅てメダルの色?)


 作者はここに出してはいないが剣状突起が好き。

 あばらの中心の下にある小さな骨、なんだかドングリ位の大きさで可愛い。


「コホンホンッ!!」

 ……

 ゼロツーが咳払いをして説明に話しが戻る。

「んーシャンゼリオンには漢字は存在しない。その武技は異世界のドワーフの物だな。鉄槌や重量武器の波状攻撃、重量加速で重さ速さと名前の割に幅広く使われている。その、なんだ……ただ語呂が面白かったから色々入れといたわ」


 ベルヴェールはどんどん不安になる。

「おい!! 俺の脳内情報に変なの入れるな!! 語呂だと? ……なら、もしかしなくても……歩地腕王犬拳法てのは??」



「ん? ああ、ポチわんわんけん、けんぽう」


 ……そんな武技

『使うか!!!』

 ベルヴェールは勿論アンジェリカも、すかさず突っ込むが素知らぬ顔でゼロツーは話しを続ける。


(いや他も色々怪しいぞ、猫……猫酔拳……マタタビか、蛇ア邪面とかも語呂が、流犯は続きを敢えて俺は読まない。読まないぞ。絶対にだ)


 ゼロツーは名前の割にと付け加えて再々説明する。

「そうかあ? 獣王格闘武術と同じとまでは言わないが獣人を中心に異世界では二強だぞ?? まあ兎にも角にも行動しなきゃ始まらない。残りの記憶石と魔結晶の魔本から魔術を吸収してくれ」


 ベルヴェールは心配になって尋ねる。

 そりゃ当たり前だ、先程の武技名の大半が変だったからだ。

「その!? 本当に大丈夫なんだろうな!?」


 ゼロツーはニヤっと笑い。

 影だから表情は分からないが一言だけ返す。

(そこに戻るのかああ゙あ゙あ゙ぁ!!)

 ベルヴェールは自分でアシストして悔やむ。

 

 もうええわ!! と、ベルヴェールは記憶石に魔力を流し吸収しながら魔本の知識を纏める。

 照らし合わせる様に魔結晶の魔本から魔術を吸収して行く……ゼロツーの知識と答え合わせをするかの様に導き出し、より鮮明に魔術を理解する。

 しばしの沈黙いや長い長い沈黙の後、口を開く。


 …………

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