2話
窓から柔らかな日光が降り注いでいる。
不思議なことに何故かその建物の床には埃等が一切無く非常に清潔な状態で保たれていた。
そしてそんな建物の中にある三十畳程の部屋ベッドと研究室と兼用と呼べる部屋はかなり広いがそのうちの半分、奥の方には巨大な魔法陣が描かれている。
「……」
入り口近くの半分は、色々な実験をする為の機材や参考にする為の本があり。
実験道具や魔道具、マジックアイテムと呼ばれる物や恐らく素材だろう物が幾つも置かれてる。
「……ここは一体? そうか、俺はあの光と影と融合して……あぁ、なるほど。確に知識はある。意識は俺のままで間違いは無い……間違いは無いが天使を素材て天使は?」
……
「よぉ、無事転生出来た見たいだな」
……
大地は声の聞こえた方向に顔を向ける。
そこに黒い人型の影ともう一つ白い人型の光が浮いているのを確認する。
「お前……お前達は精神世界での白い光と黒い影か?」
……
人形の黒影が答える。
「ああ、俺は死を司る神。いや今は……なんだ前世では零二て名前だったから。ゼロツーて名前でいいや。サポートタイプ(仮)て事で、まあ宜しくな」
白い光の人形も続けて答える。
「我はこの家をまた我が宗派の魔術を守護しているアンジェリカ・ローズ=ベルドゥムールと申す」
「!!!! ッな!!」
……
アンジェリカと名乗ったそれは白い光であろうと理解した、理解したが。
(が………爺さんとか呼んでたんだけどな、なんかすいません)
心で呟く大地にゼロツーは素知らぬ顔……顔は影だから、伺え無いけど。
(こいつ小説見て知ってたな)
「……白い光、いやアンジェリカて女だったんだな、なんかごめん。改めて俺は」
「あー待て待てお前は名前名乗るの待て。一応教えてやるが、名前てのは真名としてマナと呼べる! おい! 一応ダジャレじゃないからな」
黒い影の人形、ゼロツーは話しを続ける。
真名とは何かを、またゼロツーは真名に対して文字通り。
『
つまり魔力を込め様々な事情に紐づけを行う。
そして、新しい身体と名前を紐づけを行う事で、より完璧に近い身体にする。
そして、最後に生命有る創世魔術で完成する。
(らしい? と)
「わかったか?? おーらい?」
「ん……あ、ああ、わかった」
「それでだ名付けの真名てのは、一番は文字数だ。これは魔術の呪文と同じで、初歩的だが名前は長い方がいい。そして親和性と同調性だ同調性は少し無理くりだが……まあなんとかなるだろう」
「待て待て。まあ、何とかなるって!? 俺の名前を考えて、付けるのか!? 一応知識を共有してもらったし、なんとなくだが……理屈はわかるが」
「そう心配するなって。なあ??」
「……」
ゼロツーはアンジェリカを見て、暫く考えたアンジェリカは口開く。
「……確かに、一理はあるかもしれん」
『…………』
一瞬無言になる部屋の空気感。
大地がいやいやと話を戻し続ける。
「あるかもって! そりゃ要は、親和性が名前の歴史やら物か? 同調が……えっと」
大地の言い分を聞きコクコクと頷くゼロツー。
「ふむふむ」
大地とゼロツーの言葉が重なる。
『親和性が自分にとっての性格や歴史。同調性は適正魔術の由縁の物』
「とかとか、だろ??」
得意げなゼロツーは話を続ける。
……
「そうだ」
「意外と記憶の引き継ぎは上手くいったな? なあ」
大地に問いかける。
(まるで考えを読まれてるみたいだ)
「安心しろ単に俺の記憶を受け継いで見せたから、そうかなあ? と確認しただけだ」
「…………」
(本当か? でも、自分だけの知識、記憶をくれたんだ。何も、解らないよりかはありがたい。が)
気まずい雰囲気を、素知らぬ顔で戯けながらゼロツーは話を続ける。
「ああ安心しろ。ゼロツーみたいな安直な名前じゃないから」
ゼロツーは笑い声を漏らしながら続ける。
「そうだなあ?? こんなのどうだ。ペペロンチーノ……なんてな。鷹の爪を効かせたパスタかよ」
(おいおい)
「カルボ……ナーラ。おっとナーラは、女の子の名前かな?」
(どっちも麺!! ……次はラーメン? つけめん? 僕)
「え? 古くない? いやお前の時代からしたら。世紀を超えた最先端か」
「は?」
戸惑う大地。
(心を読まれた? いやでも)
「そんじゃ真面目にお前の真名は……」
(なんだ? なんだ? ここまで待たせて麺の名前も時間も伸びちまうぞ?)
……
ゼロツーは一瞬おっ! と、弾んだ声色になり言葉、大地の新しい名前を告げる。
「ベルヴェール・ライトベル・アスナ・フォン・ウィンド=ベルシャンシティ・ローズ=ベルドゥムール・バベル=ソニヤ」
(うん伸びた。伸び伸びだよー。名前長いよう)
……
「上手い!!」
ゼロツーは同意するように指を指す。
「ん? どういう意味だ? 名前か?」
(たらこスパゲティみたいな名前じゃないだけ、あり……か?? まさか心を本当に読めるのか? くそ!! 転生して、ゼロツーの地球の記憶が食べた事ない食い物ばかりが頭に浮かぶ。……ああ、お腹が空いた。お口は完全に麺の口よ)
ゼロツーは付けた名前が長いかったからか謝る。
「まあ、名前長くて本当ご麺!!」
ケラケラ笑うゼロツーを見て大地改めベルヴェールは心で突っ込んだ。
(俺のお口の中がな!! ななななーななななー。本当に、まことにすいまメンだよ。あーもう)
ゼロツーはヒーヒーフーフーと息を整え。
(お産かな?)
整った息で話しを続ける。
「……名前も長い。長いんだが特に!! アンジェリカの名字はこの世界では目立つ。厄介事に巻き込まれたくなければ、適当な名前だけを名乗れ」
(適当!? えっとトッピングは3種の粉チーズで、後、白ワインも……ミートスパゲティだ)
再び静まる部屋。
『…………』
(何この沈黙パスタをチュルルっとしてるのか?)
「……はあ、おもんな」
飲み込んだ架空のパスタを飲み込んだ? ゼロツーが息を吐く。
「ん?? なんて」
良く聞き取れ無かったベルヴェール。
「…………」
ゼロツーは口元を拭く様な沈黙。
亜空間からパッとナプキンまで取り出してる。
(おいおい話はどうした)
ベルヴェールは食事の余韻の如く沈黙を破り。
シェフならぬ、ゼロツーに呼びつける。
「あのな!! はあ……長い長すぎるけど、……ちょっと待て。名前はわかったが、全体的にベルて発音するやつ多くないか?? それにしてもだ!! どんだけ名前にベルが付いて。鈴鳴らすんだよ。……リンリンリンリン」
沈黙を貫き冷静に話に耳を預けるアンジェリカ。
「…………」
ゼロツーは待ってましたと、声色高く尋ねる。
「女優が……股を、開く。M字開脚?? を」
ゼロツーはクックックと何やら笑ってそうな。
『????』
黙る一同、アンジェリカは困惑顔だ。
この世界では女優といえば演劇、舞台女優を指す。
(それなら、ゼロツーの記憶でみたわ。アンジェリカも知らないだろーよ)
「あのな、それインリン。……あ、ベルが多いのて、もしかして前世の俺が鈴村だから? ベルつまり鈴なのか?? それならそれはいいとして。同調性も俺の適正は火なんだろ? 記憶の知識で見た。それに他もライトベルは光で? ウィンドベルて風じゃないのか!? いや、そもそも前世は大地なのに、そこは土属性でもないのかよ!!」
ゼロツーはベルヴェールの話を聞き流し思う。
(一応、ベルヴェールは緑や植物て意味なんだけどなあ。チュルチュルーてパスタの話しの後だ、俺は小麦粉か!! て、怒られそうだ。今は伝えないでおこう。おれしーらない)
改めて、ベルヴェールとなった新しい身体。
つまり大地の身体には大地、ゼロツー、アンジェリカの分霊、3つの魂が融合し合い。
人外な魔力が溢れている。
ベルヴェールの現状は火属性、死属性の2つ。
これはアンジェリカも適正が火の為、融合した事により火魔術の才能はこの世界に右に出るものはいない。
そして先程述べた。
植物属性もあるのだが、ゼロツーのおふざけで伝える事はなく。
また、これからの生命有る創世魔術行使後。
ベルヴェールの身体と余剰分のアンジェリカ、ゼロツーの魂を再構築するので属性は増え。
より完全な身体(器)になる。
属性……
これは今はまだ、あまり関係ないのだが、膨大な魔力を消費し。
無理やり火属性や死属性を別の属性に紐づけて。
大量の魔力消費で強行すれば、他の属性も使えない事もない。
例えば風魔術と火魔術を組み合わせた。
『火災旋風』……炎の竜巻を起こす。
死魔術と風魔術で『死の風』
……病原性微生物を風で運び疫病等起こす等がある。
……
そして二人の、やり取りを伺い聞いていた。
アンジェリカが再度ベルヴェールに説明する。
「まだ転生したばかりで、大まかではあるが。今のベルヴェール殿は、我らと融合した事により。我との火属性が融合してもはや別物の火、炎魔術師と言えるし。そしてゼロツー殿のユニーク属性死属性。うむ。……細かく言えば。他にもあるが、追々使って納得して行くしかあるまい」
ベルヴェールは素直に感謝の言葉を述べる。
「そうだな、ありがとう。改めて説明してくれて助かるよ。火……炎か火の竜巻とかかな!? 死はなんか名前的に怖いよな? 使い所選ぶかも」
……
ゼロツーはベルヴェールの言葉を先程と変わる事無く、話しを他所に自分の考えに夢中だ……今度は真面目にベルヴェールの名前を確認する。
(ベルヴェール・ライトベル・アスナ・フォン・ウィンド=ベルシャンシティ・ローズ=ベルドゥムール・バベル=ソニヤ……)
名前の同調性親和性。
いくつものベルは前世の名字から祝福。
音、美の意味を持ちヴェールは結界や植物の意味がある。
あながち言えないのだが、ライトベルの『ライト』、つまり光の〜だが生命有る創世魔術行使時。
反転させ両極の属性と基本属性を併せ持つ事もゼロツーは考えている。
ウィンドは文字通り。
風で今の状態でも魔力消費を増やす事で行使できる。
そもそもウィンドに関しては、生命有る創世魔術にて創り出す。
高次元生命体の指定にも結びついており。
その後ベルヴェール自身も風属性が通常通り使える様になる。
…………
アンジェリカが考え込んでいる、ゼロツーを見て声をかける。
「その我のローズ=ベルドゥムールの性を継いで否、肉体や魔術も継いで貰うのを心から嬉しく思う。だが、何故ウィンド=ベルシャンシティと?」
ゼロツーは考えが纏まったのか、返事をする
「あーそうだな。ウィンド=ベルシャンシティについては普通は出来ないだろうが、俺の用いた素材を使って。生命有る創世魔術で特定の高次元生命体を指定し創る!! からかなー? 一応素材となる。核。いや魂と肉体は持ち合わせてる。だから勝手で悪いが、そいつは俺の腹心でもあり。風と時空間魔術の使い手でもある。今回の話しをした時に創造するって約束をしてな。頼む」
「つまり、我らの作った。生命有る創世魔術で、蘇りや生まれ変わりの類を行うと??」
ゼロツーは頷きアンジェリカは驚き納得する。
ちなみにベルヴェールのホムンクルスとはまた違い、生命有る創世魔術は魔力(無)から形ある生物等を創り出す。
(おお、死を司ると言っても流石神じゃ。我に否、我らに神の祝福。神の御業をこの体で感じる事が出来る)
アンジェリカはゼロツーに崇拝の念を抱き始め。
これから行う生命有る創世魔術を心待ちにする。
「…………」
二人のやり取りを見ていたベルヴェールは周囲を見回す。
ベッドの枕元に置かれていた衣服に手を通す。
すると魔力に覆われ服の形が変わる。
「おおお!! と言うか、新しい肉体って俺はどんな身体になったんだ? 天使とか言ってたし翼でも生えてるのか??」
ゼロツーが答える。
「生えてるぞーいっぱい」
「は? ……えっ」
(何故、気づかなかったのか?? 話に夢中になりすぎか? いやでも)
ベルヴェールの背中には白の何対もの翼が花のように一枚一枚織りなし。
一輪の薔薇のような美しくも赤い炎に包まれたそれは形容できない畏怖の象徴だった。
「翼……翼かぁ、天使て言ってたけど、これじゃない感が否めないな。もっとも、アンジェリカ達から貰った知識によると十分とんでも肉体らしいが」
ベルヴェールは顔を確認する為。
アンジェリカ・ベルドゥムールという爺さんではなく女性。
(間違ってすいません)
そのアンジェリカの用意、引き継いだ。
知識で部屋の鏡を探し自分の顔を確認してみる。
そこに映るのはミディアム? ショート? 基準がよく分からない。
これはゼロツーもアンジェリカも本来スーパーロングの為、記憶を引き継いでおらずあやふやだ。
真っ黒な髪に赤みを帯び深紅と呼べる髪。
そして流れる様に移り変わる先程とは同じ赤でも風合いの違う朱い毛先……朱い毛先の部分は魔力調整として使われるらしいが。
(種族天使族だもんな、そういえば翼はあったが天使の輪っかは無いのか?)
徐ろに部屋にあった鏡で確認すると天使の輪っかは無く。
顔はまさに種族的に天使と呼ぶべき美しい少年美少女の中性的な顔だった。
目の色は空色で髪と対比して印象深く残る。
身長は170cmくらい外見は年齢的に13.4才前後といった所で身体は細身である。
また外見は今後ゆっくりとそれも数千数万と下手したら億までと時間をかけて成長していく。
見た目の変化も自分の任意の所で止まり。
背中の翼は自分の魔力で出来るが故か、身体は燃える事なく、熱くもない。
ベルヴェールが授かった新しい身体。
アンジェリカの知識の説明によると、この肉体はアンジェリカとその宗派の技術の粋を結集して。
そして殆どが、ゼロツーの膨大な魔力を注ぎ込み創られた者だ。
アンジェリカの仲間内で老化によってその派閥が消滅していった経緯がある為。
この身体は不老処置を施され。
さらに黒い影ことゼロツーが天使を素材とし、自らの神の魂を分け定着した事により。
不老不死となった身体。
(黒い人影も、前世がれいじ? て名前だからゼロツーなんだよな。なんか安直だよな。神ぽくないと言うか。いい奴なんだろうけどな! 人っぽい)
また驚異的な回復力がその肉体には宿っており。
身体能力に関しても元々の性能をさらに高め。
もはや人外、種族的な意味でも人外だがそれでも企画外に作られている。
そして翼に関しては魔力で具現化しており。
オンオフ切り替えるように仕舞ったり出したりが出来る。
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