第十話 ☆無双回☆『覇劫天魔臨』
『戦術解放』
それは魔術の頂点を極めた者にのみ扱うことができる、魔術戦術の最終到達点。
この域に到れる人間は数億に一人。
俺は俺以外に到った者を未だ一人たりとも目にしたことがない。
「喜べ人間ども」
故に、俺は経緯を評す。
「よくぞ俺を楽しませてくれた」
だからこそ、確実なる死を与えてやろう。
「『戦術解放』……」
俺の体内から溢れ出す魔力の奔流が、黒い霧の中で渦巻いていく。
「なんだ、こりゃ……」
目を丸くして驚くリーダーたち。
最初で最後だ。
圧倒的強者に捕食される弱者に相応しい末路を辿るが良い。
「顕現せよ──『
俺の魔力が霧の中の空間を覆い尽くす。
寂れた街のような光景が一瞬にして塗り替えられ、現れ出るは古の城。
「これはかつて俺のいた城を模した無限の魔力炉を具現化する能力だ」
呆気に取られる5人の前で俺は自身の傷を修復してみせる。
「この通り、魔力を使って出来ることは際限無く行使することができる」
どんな致命傷も一瞬で癒し、地球そのものを一撃で破壊し尽くせるだけの魔力出力を有している。
「ここでならば、かつての俺と大差ない動きができる」
「傷が治ったからってなんだヨ」
リーダーの言葉に合わせて、再び行動を開始する5人。
「魔戦術の効力が消えている?」
しかし自身の変化に気づいた1人が動きを止めて呟いた。
「それどころか、魔力そのものが俺の体から消えて……」
「この空間で魔力を扱えるのは俺だけだ」
魔力を纏った状態でで魔力を扱えない人間を攻撃すれば、素手で紙を引き千切るように簡単に肉を割くことが出来る。
「人差し指で貴様の額を小突くだけで、ほれこの通り」
トンッ
俺が1人の額に軽く指を当てると、
ドガァ!
男の体が後方に吹っ飛ばされて勢いよく地面と激突した。
「はぎゃあ!?」
血を吹き出し、全身をピクピクとさせながら悶える男。
「どうだ、お前もされてみるか?」
その瞬間、俺の1人が別の男の耳元で囁く。
「なに、遠慮はするな」
また別の男の耳元で同時に俺が呟く。
魔力で作った分身を25人ほど用意した。
「これで5対1だな、卑怯とは言うまい?」
「クソッ……」
悪態を吐きながらも、俺に向かってくるという誠意を見せる男たち。
「なんだ根性あるじゃないか」
一瞬で男たちを蹴散らし、俺は呟く。
「気に入ったから殺すのはやめておこう」
しかしここで起きたことを喋られたら困るので、魔術で記憶は消しておいた。
全て終わってから俺が具現化を解く。
「な、なんだこりゃ?」
観客たちの動揺する声。
「急にさっきまでの光景と変わったと思ったら、中から6人出てきた?」
「最初と人数が違うじゃないか」
「倒れてるのはバッヅのリーダー、だよね?」
「てことは、私たちに見えないところで人数増やしてイカサマしてたってこと?」
「お前たちのほうが八百長じゃないか!」
事態を把握した観客たちの声が一斉にブーイングに変わる。
「まあ、当然の非難だな」
今後リーダーがどうなろうと、関わるつもりはないとハッキリ言っておく。
それより俺は観客席ののぞみんに向かってVサインだ。
「勝ったぞ、のぞみん」
「アニキ……」
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