第九話 『戦術解放』
前回の演出をしたいがための三人称視点だったので、今回からいつも通りの一人称視点に戻るのである。
「フハハハハハハ! 久しぶりに風花雪月でレベル上げしてたら深夜4時を過ぎてたぞ!」
深夜テンションの作者と同じくらい、くっそ高いテンションで俺が吠える。
「弱い犬ほどよく吠える」
深淵の配信者の一人が投げナイフで俺の動きを牽制してくる。
「俺は強いが良く吠える!」
魔力を込めた指先で軽々とナイフを払いながら、ザナーク様の名言を再現する俺。
「チマチマと鬱陶しい奴らだ」
「それが我々の戦い方だ」
別の配信者がまた別の方向からナイフを投擲してくる。
「四方からの同時攻撃で対象の動きを制限し」
「隙を見せれば一人が確実に大ダメージを叩き込む、だヨ」
4人に気を取られていた俺は、5人目の存在を失念していた。
「こう見えてボクちんもメンバーの一人だからネ」
「やってくれたな……」
背後からのリーダーの攻撃で、俺の脇腹が大きく削られた。
「ただの蹴り、ではないな?」
「ただの蹴りだヨ」
容赦無く追撃を加えてくるリーダー。
「ただし5人分の魔力が籠った蹴りだけどネ」
「この霧の中では我々5人の魔力を共有することができる」
他の配信者たちが順番に説明を続ける。
「この空間は我々5人の心象風景の具現化」
「幼き頃より共に過ごした、寂れた街の風景」
説明の途中から霧の中の光景が徐々に形を変えていく。
「術式の開示……誓約と制約……」
ともかくそういった設定と同じように、己の魔術を相手に晒すことで出力の上がる設定が魔術にはあるのだ。
「ボクちんたちはこの街で生まれ育った」
攻撃の手を止め悲しげに語り出すリーダー。
「何もないこの街で、ボクちんたちは人殺しの技術を学んで育った」
「だから我々はその思い出を殺人の道具に昇華したのだ」
「魔戦術『
「この中に入った以上、貴様に勝ち目はない」
もうすっかり勝ち誇った雰囲気で俺の周りを取り囲む5人。
「我々は永続的にバフを受け、その分貴様にデバフが与えられる」
「いまだかつてこの空間から生きて脱出できた者はいない」
「そうやってボクちんたちは敵を排除し、配信者として成り上がってきた」
「なるほど、普段のおちゃらけた雰囲気は演技であったか」
いつもより重く、力の入らない肉体を無理やり起こして俺が呟く。
「人の体に慣れていないからか、思った以上に効くな貴様らの魔戦術」
だから俺は少し本気を出してやることにした。
「喜べ貴様ら、俺ってば割とガチ目に追い込まれているぞ?」
魔術における魔戦術が始解であれば、卍解に相当する概念が存在して然るべきだ。
「だから特別に見せてやる」
これが魔術戦術の極地というものだ。
「『
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