#001 バズりたければ全てを晒し出す覚悟で挑め。

「オラァ! さっさと飛び込めよマヌケ!」


 ブサイクなデブ女が、両手を拘束された地味男に蹴りを入れながら怒声を飛ばす。


「テメェが死ななきゃ視聴率取れねぇだろうが!」


 ブサイク女に同調し、後ろの取り巻きたちも揃って男に罵声を浴びせる。


「こ、こんな酷いことして……」


 泣きじゃくりながらデブ女を睨み返す地味男。


「視聴者はお前たちのことを許しはしないぞ!」

「そうか、だったら視聴者の声を聞いてみようじゃねぇか!」


 そう言ってデブ女が配信の画面を男に見せつける。


《そういうこった!》

《このクサレオタクが!》

《テメェモテねぇくせに調子乗ってんじゃねぇぞ!》

《気持ち悪りぃんだよクソオス!》

《弱者男性は死に絶えた方が世の為なんだよ!》


 コメント欄は地味男に対する批判コメントで溢れていたのであった。


「そ、そんなことって……」


 絶望する地味男。


「どうだ、これが世の女性の総意なんだよ!」


 デブ女が自信満々に宣言する。


「テメェら汚ねぇ日本の劣等男どもは、さっさと滅んで絶滅しろ! 」


 デブ女の全体重をかけたドロップキックが地味男に命中。

 そのまま男はモンスターが巣食う崖下へ突き落とされていった。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」


 落ちる先には大きく口を開けたモンスターが待機しており、


 バクン!


 地味男は一口で丸呑みにされてしまったのであった。


「ギャハハハァ! おい見ろよ!」


 汚い笑い声を上げる豚女たち。


「ありゃ確実に死んだぜ! どうだ、配信は盛り上がってるかぁ?」

「順調ですカシラァ!」

 

 部下の女が掲げたスマホの配信画面で同接数が数万人を超え、ランキングの順位も堂々の一位に躍り出たのが確認できた。


「ギャハハハァ! このままアイツがモンスターに消化されて、ケツから出てきたきったねぇ白骨死体を晒してぇ! 更に配信の人気を伸ばしてやるぜぇ!」


 勝ち誇ったかのように高笑いを上げるデブ女。

 

 そろそろ頃合い、だな?

 ふふ……視聴者の諸君、急に俺が喋り出して驚いたか?


 実は今回ここの部分はこの俺、魔王様の一人称視点で進んでいたのだ。

 今後もこの方針を取っていくつもりなので、よろしくである。

 

 というわけで今の今まで静観を決め込んでいた俺であったが、男の方がちょうど死にかけの状態に陥ったので、満を持して体を借り受けることにした。


「……な、なんだあれは?」


 崖下を見つめていた女が驚愕の表情を浮かべて驚きの声を上げた。

 次の瞬間、俺が乗っ取った男の体がモンスターの腹を貫いて崖の上に飛び上がる。


「頃合いだ……配信に集まった視聴者の諸君、刮目せよ」


 俺は配信を撮影中のスマホに向かってドヤ顔で決めポーズを取る。

 その場にいた女は即座に俺を撮影する、気の利く女だ。


「フハハハ! あまりにもカッコ良い登場に驚いて、言葉も出ないか?」

「いや……ちょっと、おい……」

 

 しかし女たちからは微妙な反応しか返ってこなかった。

 それもそのはず、胃液で服を溶かされた男の格好は──


「配信で全裸は流石にまずいでしょ……」


 ──無修正モロ出しの股間が全国生配信されてしまったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る