第18話 レア種族
あれ、また真っ暗だ。
唯一動かせそうな頭を動かすと、壁にぶつかった。
あれ、もしかしてまた時間切れで、ジェットスワローをやり直す事になったのかな。
まぁ、別にそれでもいいか。
いくら超レアとはいえ何になるのかわからないし、種族が変わったらポイント0になるのかもしれないしね。
あ、そうだステータス画面を見ればいいのか。
『レベル1 種族 コープスタグ HP3 MP52
力5 素早さ2 体力2 魔力30 器用さ2 運55
スキル
完全分裂 アルティメット 無限に自身の分裂体を創りあげ、自由に操れる
毒 マスター ありとあらゆる毒を自在に使いこなす
ジェット マスター 自由自在に空を駆け、あらゆる物を加速せる
称号 同族殺し 同族を殺戮し続けた者に与えられる称号
ポイント 0』
ああやっぱりというか、ランダムジャンプ出来ているね。
コープスタグって何だ?
名前から種族を連想しづらいな。
ポイント0なっちゃった、という事は鳥系統以外の何かだよな。
いやそれよりも、なんだこのステータスの低さは?
レアなんだよね。
神すら倒せるかもしれない種族なんだよね。
かろうじて魔力とMPは高めだが、それ以外はゴブリン並みに低い。
レアなのはスキルかな。
スキルの完全分裂が理由だな。
最初からスキルがアルティメットになっている。
アルティメットという事は究極でしょ。
マスターより上があるんだな、メグミさんも言っていなかったし、知らないだろうな。
今度会ったら、自慢してみよう。
お、殻が柔らかくなってきたそろそろ、外に出られそうだな。
卵を破ったが、相変わらず暗く、どうやら土の中のようだ。
卵を地下に埋めるタイプのモンスターらしい。
光を求めて、地上に向かう。
何とか外の世界に出たが、相変わらず体が思うように動かない。
移動しづらい、ここまで体を動かしづらいのはスライムの時以来だ。
ただスライムの時と違って今回は足が何本もある。
そして冷静に自分の体を観察して、情報を集め推理する。
真実はいつも一つ。
そして時にその真実は、時に何よりも残酷でもある。
ズングリムックリの体にいくつもの手、いくつものくびれ、長い胴体。
どうやら、俺は芋虫になってしまったようだ。
コープスタグは虫系なのか、まじか。
周りには信じられないぐらい大きな木や、桁違いに大きな花が咲いている。
違う、極端に俺の体が小さいんだな。
と言う事は虫系、かつ普通の虫のサイズで生まれたのか。
失敗したかな、やはり期間限定とか今回限りという言葉に飛びつくとろくな事がないな。
やはりメグミさんを見習って着実にステップアップするべきだったか。
どんなにレアでも虫系はマジで辛そうだな。
そもそも虫系のモンスターって強いイメージがないよな。
水たまりに映る姿をみるが、我ながら醜い体だな。
なんの幼虫なんだろ。
スライムの時は足がなくて移動できないつらさがあったが、今回は複数手がある
が、あればいいいという物ではないらしい。
同じような移動方法と思ったが、スライムと違い腹筋と背筋の力だけで動く。
あれだ腹筋を鍛える、コロコロだけで移動しているみたいだ。
いくつもの割れた腹筋(?)がこの移動を可能にしているな。
スライムと同じく、直角な壁でも登る事ができたのが幸いだ。
色々と動きを確認しているとお腹がすいてきたので、近くの花の葉に近づく。
期待せず食べた葉っぱだが、意外と美味しい。
レアだからなのか、虫系のモンスターだからなのかわからないが、モンスター人生で一番美味しく感じる。
何かに似ていると思ったら、俺の好物だったフライドチキンで有名な某チェーン店のコールスローの味に似ていた。
思わぬ特典に夢中で食べ進めていたが、地面である葉っぱが滅茶苦茶揺れだした。
なんとか落とされないように、葉っぱに体を貼り付ける。
何事かと思って、強風が吹く方を振り向くと大きな影が映った。
よく見えない目でなんとか見ようと、するとそれは超大型の鳥型モンスターだ。
違う、大型ではない、ただ俺が小さいんだった。
そしてあれは前世で競い合った、ライバルのカモメさんじゃないか。
なんだ前世のリベンジマッチをしたいのか?
もし可能であれば生まれたばかりの、今は辞めて頂きたいのですが。
慌てて葉っぱから降りようとするが、葉っぱが揺れて思うように動かないが、着実にカモメさんが近づいてくる。
このままだと、死んでしまう。
やばい確かこのランダムジャンプは一度きりと邪神のおっさんが言ってたから、死んでしまったらこのコープスタグにはなれない。
あれ?
そうするとポイントも0だから、虫系の最弱種からやり直しになるのか。
まじか、絶対に死ねない。
このままだとまたゴブリンの時みたいに、はまってしまう可能性がある。
何とか逃げなくては。
毒でやっつけるか。
毒のスキルを出すが、上空にいるカモメさんには届かない。
猛毒を体に塗りたくって、食べられたら確実にカモメさんを殺せるだろうが、食われた後カモメさんが食中毒で死んでも意味が無い。
ジェットはどうだ、体が小さいからジェットで飛んで逃げる事もできるだろうか?
いや落ち着け。
体力2だろ、何かにぶつかってそのまま死んでしまう絵しか見えない。
そうすると、残る手段は新たなに手に入れた完全分裂のスキルか。
もう少し、落ち着いてから使いたかったが、ぶっつけ本番でやるしかないのか。
迷っている時間はない、カモメさんとはバッチリ目が合っている。
完全分裂のスキルを発動すると、俺がもう一人そこにいた。
は?
てっきりスライムの分裂のスキルみたいに、もう一人の俺を操るのかなと思っていたが、全然違う。
向こうにいる俺もしっかり独立した意識を持っている。
そしてよくわからないが、意識が共有できている。
向こうの俺も突然の事に驚いているのが、手に取るようにわかる。
そして俺の考えも向こうに伝わっているようで、お互い困惑しあっている。
ただ言える事は、両方とも間違いなく俺だ。
わけもわからずスライムになって、ゴブリンで苦労して、あの完璧女騎士の勇者に三度やられた俺だ。
お互い意識があり、そしてテレパシーで繋がっているみたいでお互いの考えというか、意識が共有している。
意識の共有しているが、それぞれ少しだけ別の事を考えていて、二つの考えが同時に頭に入ってくる。
わけもわからず驚いていると、芋虫のもう一人の俺を、カモメさんがパクリと口でくわえた。
「俺!」
「しまった、後は頼んだぞ、俺」
口も無いのに、何故か普通に会話ができ、もう一人の俺が芋虫の小さな腕を上げてサムズアップしているのが分かった。
一瞬でカモメさんがもう一人の俺を飲みこんだ。
カモメさんは次のターゲットである俺の方に顔を近づけて食そうとしたが、突如挙動がおかしくなり、苦しみだして暴れだした泡を吹いて倒れた。
もう一人の俺が死ぬ前に体中に毒を発したおかげで、急性食中毒になったようだ。
猛毒で死んだカモメに近寄るが、やはりもう一人の俺は死んでしまったようだ。
尊い俺の犠牲があったおかげで、俺が助かった。
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