第17話 ライバル?

 いつも以上に渋滞している列に並びながら、先程までの死闘(俺にとって)の事を考える。

 

 何故完璧騎士は平気だったんだ、あれは並の毒とはレベルが違う、超強力な毒のはずだ。

 テストでは結構格上のモンスターにも効いていたのに、毒に対して耐性があったのか。

 いや、毒マスターの俺でも慎重に扱わないといけない程の毒だぞ、仮に耐性があっても平気なわけない。


「ね、ね、ちょといい」

 列に並びながら考えていると、明るい女性の声がした。


「え?」

 振り返ると丸い光の魂が列から離れて、手らしき物を無理矢理作り出してちょん、ちょんと俺をつっついている。


「あ! やっぱり意識あるよね」


「え、あっ、う」

 久しぶりに邪神のおっさん意外に声をかけられて、軽くテンパっている。


「落ち着いて、良かったらちょっと話さない?」


「え、ええ」


「あっちで話そう」

 そう言い、俺を引っ張って列から離れていった。


「ごめんね、いきなり声かけて。

 後ろに並んでいたけどなんか頭振って、独り言を言っているのを聞いたから、つい声をかけちゃった」


「はい、大丈夫です」

 何が大丈夫なのかわからないが、一人ブツブツ言っていたのを聞かれたと思うと、滅茶苦茶恥ずかしい。


「ごめんね、私メグミって言うの」


「俺、アキラです」

 あれ、すっと名前が出てきた。

 記憶が無かったが、どうやら俺にも名前があったようだ。


「そっか、アキラ君よろしくね」


「こちらこそ、よろしくお願いします」

 手らしき物を作り出し握手し、お互いの身の丈を話すようになった。


「まず、何から話そうか?」


「そうですね、そもそもこの列離れても大丈夫なんですか?」


「大丈夫、何度も列から離れた事あるよ。

 他の魂が転生し、終わると強制的に扉の前に移動されるの」


「そうなんですね、そもそも移動とかできるんだ」

 何故か移動しようという気持ちが湧かず、列に並んで待つのが当たり前という思考になっていた。


「アキラ君みたい意識のある魂は初めて見たんだ。

 私だけじゃないんだって嬉しかったな。

 殆どの魂は声をかけても、返事をしてくれないものね」

 確かにメグミさんみたいに、活発に動いている魂は見た事がない。

 俺とメグミさんが特別なのか?


「メグミさんは転生生活(?)は長いんですか?」


「そうねそれなりに長いかな。

 スライム→スライム→ビックスライム→スライムドラゴン→ディフェンダードラゴン→マジックドラゴンで次はトゥルードラゴンに行くつもり」

 何と無駄がない、RPGで定番の最上位モンスターのドラゴンになって極めようとしている。


「アキラ君は?」


「えっとスライム×3→ポイズンスライム→ゴブリン×8いや9か?→ジェットスワロー×5です」


「すごいね、特にゴブリン」


「ええ、あそこは特にやばかったです、絶対にならない方がいいですよ」


「大丈夫、絶対にならないから」


その後、二人で笑いながらお互いの苦労話や、邪神のおっさんの悪口話に花が咲いた。

 同じじ経験をしていて、共通の敵がいると話が盛り上がる。


 メグミさんはいつも死んだ後は、この列から離れて最後になるまで前世の反省会を行い、次の転生先を慎重に選んでいるようだ。


 そしてこの魂の形になってもステータス画面をオープンできて、次の転生候補を見る事ができる事を教えても貰った。


 なんで気が付かなかったのだろう。

 俺は邪神のおっさんにせっつかれて、勢いに任せて選んでいつも後悔していた。


「あ、そろそろ俺の番ですね」

 情報交換というより、一方的にアドバイスを貰いながら時間がたつと、長蛇の列だった魂が残り二つまでになっている。


「本当だ、じゃあ元気でね」

 お互い手を無理くりつくり再度握手をする。


「そうだ、勝負しない?」


「勝負?」


「どっちが先に魔王になれるかなんてどう?」


「面白そうですね、いいですよじゃあ勝負です」


「じゃあ負けた方が勝った方の言う事一つ聞く事でいいね」


「ええ、負けませんよ」

 だいぶメグミさんの方が先行しているが、負けていられない。


「死んでしまうとは情けない、次の人生を決めた前」

 メグミさんの言う通り、いつの間にか列の一番前までワープされて、見慣れたさえないおっさんからタブレットを渡される。


『レベル52 種族 ジェットスワロー HP535 MP429

 力110 素早さ645 体力219 魔力199 器用さ332 運3

 スキル       

   毒    マスター    ありとあらゆる毒を自在に使いこなす

   ジェット マスター    自由自在に空を駆け、あらゆる物を加速させる

称号 同族殺し         同族を殺戮し続けた者に与えられる称号

 ポイント 21250』


「レベルアップしているしポイントアップしているけど、あの女騎士を倒せたの?」

 あらかじめ質問事項を纏めていたので、最低減の質問だけに留める。


「いや、あれはお前の攻撃の後、回復魔法で毒を解除していたぞ」

 くそ、回復魔法まで使えるのかあの完璧騎士は。


「ポイントは勇者に手傷を負わせた、毒を与えた、魔法を使わせたそれらのボーナスでポイントだ」


「え、勇者だったのか」

 あの完璧騎士は勇者だったのか、どうりで何でもできるわけだ。

 それにしても倒さなくても傷や毒を与えるだけでなく、魔法を使わせるだけでもボーナスポイントを得られるんだな。


 勇者に傷をつけたや魔法を使わせただけでも、かなりのポイントを得る事ができるのか。

 なるほどゲームで絶対に勝てないの程レベル差があっても、モンスターが勇者を襲うのはこういう理由だったのか。


「それでどれにする」

 そうだった今回は情報収集がメインじゃない、次の転生先を選ばなくては。


『 ポイント 21250

 転生先 

   シューティングスライム 14000

   サイコジャガー     19000

   トマホーク       17500

   デュラハン       18900

   ?           0』

 種族の中で一番高い物を表示するように設定しているが、様々な転生先が出ている。

 今までのなった種族以外にも新たな種族のアンデット系も出ている。


 デュラハンって首無し騎士の事だったと思う。

 悪いけど、もう物理的に頭がない生活には戻りたくない。


 どれも強そうで色々質問したいが、最後の?が気になっていた。

 事前にメグミさんも相談したが、メグミさんも見た事がないらしい。


「この?って何ですか?」

「……ランダムジャンプか」

 珍しく邪神のおっさんが驚いた顔をしている。


「ランダムジャンプ?」

「ああ、先代が作ったお前らの救済処置だ。

 ランダムに超レア種族に一度だけなれる」


「超……レア、一度だけ、今回限り」

 滅茶苦茶購買欲をそそる言葉だ。


「ああ、そうだ。

 ランダムジャンプでしかなる事ができない、特別な種族がいくつかある。

 その内のどれかになる事ができる。

 中には神すら倒せるかも知れない、特別なものもあるぞ」


 正直メグミさんの事を見習って最短距離で効率よく上に上がっていく事を考えていた。

 ジェットをマスターしたし、空中戦も得意なのでこのまま鳥系を極めてフェニックスになろうと思っていたけど、この超レアというのは引かれる。

 

 ただな、ポイントが0なのがな、せっかくポイントが一杯あるのに逆に選択するのを躊躇してしまう。

 ふと邪神のおっさんを見ると少しだけにやけている。

 

 なんだ?

 何かを期待しているのか?

 あ、しまった、ここは時間制限があるんだった。

 後何秒だ?

 もしかしたら邪神のおっさんは俺が迷って時間切れになって、選び損ねる事を狙っているのか。

 やはり性格が悪いな。

 

 ええい、ままよ。

 思い切ってタブレットを押し、暗転する。

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