第14話  空中の流儀

 それから二度程ジョエットスワローに転生した。

 ジェットのスキルをどれだけ早くマスターする事ができるのかが、このジェットスワローの鍵だなと思った。

 

 二度目のジェットスワローに転生した際、スタートダッシュ、英才教育が大事だと思い雛の時からスキルを練習し始めた。

 羽が完全に生えそろう前にスキルを使用した時に、勢い余って巣から飛び出てしまい、落下してそのまま死んでしまった。

 

 三度目の生は片方親鳥が何らかの原因で死んでしまい、残った親が餌を探しに行っている間に大きな蛇がやってきた。

 毒のスキルで対抗してみたが、蛇に毒は効かずあっという間に飲み込まれてしまった。

 ちなみに上位種族なのか、ゴブリンの時と違って自分の毒に感染する事はなかった。

 

 四度目の生である今回は無事成長し、巣立ちまで経験する事ができた。

 前々前世の反省を生かして慣れるまで、いきなり高度をあげる事はしないで、休憩をしながらちょっとずつ飛ぶ。

 そしてカモメさんではなく、地上にいる小動物をターゲットにして狩りに慣れていく。

 やはり空を飛べるというのは圧倒的メリットで、小動物も狩るのはそこまで難しくない。


 空を飛ぶのも、狩りにも大分慣れてきたので、前々前世で心中したカモメさんにも空中戦を挑んだが、また旨く逃げられてしまった。

 やはり純粋な空中戦では向こうのほうが一枚も二枚も上だ。


 やはりスキルを使わないといけない。

 そこで体調を万全にして、前方や左右に何もいないのを確認したのち、ジェットのスキルを使用してみる。


 急加速によるGが全身を襲う。

 すぐにジェットを切り、加速が終わるのを待つ。

 これは中なのじゃじゃ馬だな。


 これを使いこなしてこそ音速の貴公子なのか。

 毎日ひたすら使い続け、このモンスターエンジンを乗りこなさないといけないのか、持つかな俺の体、少し憂鬱になってきた。



『レベル32 種族 ジェットスワロー HP330 MP290

 力80 素早さ290 体力135 魔力120 器用さ252 運3

 スキル 毒    マスター  ありとあらゆる毒を自在に使いこなす

     ジェット ★★★☆☆ 瞬時に加速、減速し空を飛べる

 称号  同族殺し       同族を殺戮し続けた者に与えられる称号

 ポイント 3350』

  順調に成長し今までにない高ステータスになった。

 特に素早さの成長が著しい、どうやらゲームの世界みたいに255がマックスではないようだ。

 上限は999なのか?

 そして念願のスキルも★3まで成長し、コツも掴めてきた。

 

 スキルの文面も変わり、一瞬だけ出す事が出来るようになり、スピードを上げる時だけでなく、減速する時に使って急旋回をする事が出来るようなった。

 カモメさんとの空中戦でもスキルを使えば勝てるようなってきた。

 

 ジェットにも多少耐える事ができるように体格がよくなり、色も鮮やかな青色に変わり、尻尾の色艶がよくなり貴公子と呼ばれてもおかしくはない見た目になった。

 ただ空を飛んでいるこのきらびやかな尻尾が目立つようで、格上の鳥型モンスターや人間に狩られそうになる事があったが、ジェットのスキルで躱し、逃げる事ができた。


 逃げ足は天下一品になったが、人間を狩る事はできない。

 最近までちまちまカモメさんやウサギを狩ってポイントを稼いでいたが、ついにポイントを荒稼ぎする方法を見つけ3000ポイント以上稼いでいる。

 

 ゴブリン時代に、直接人間を倒すだけがポイントが手に入る手段ではない事を学んでいる。

 ポイントは人間にとって嫌な事をすれば貰える。

 もちろん殺す事ができれば一番だろうがハードルが高いので、別の手段を取る事にした。

 食い扶持を減らす、つまり農作物を荒らせばいいのだ。

 

 最初は夜こっそり水田に降りて、毒を口から出して逃げるという方法をとっていた。

 ただ鳥目なので夜はよく見えないので、新しい方法を生み出した。

  

 鳥害とゴミを荒らす以外に、もう一つあるだろう。

 誰もが一度は当たりそうなって、ヒヤッと経験があるのではないか。

 上空から落ちてきて、もし当たったらどんなに気分が良くても、その日一日は最悪の気分にさせてくれるあれだ。

 

 そう糞だ。

 色々な意味で汚いが、これに毒を混ぜて上空から攻撃するというのが、安全かつ 一番手っ取り早い方法だった。

 ただ思いついたはいいが、一つ大きな問題があった。


 鳥は肛門の筋肉が弱いので、糞をコントロールする事ができなかった。

 あきらめて別の方法を獲得しようかとおもったが、それは根性と気合いと超回復の力で校門を鍛え続け、ついに念願の便意がきても我慢する事ができるようになった。


おそらく鳥類初の快挙だ。

 飯を一杯食べてから、糞を我慢する事ができるようになり、上空から爆撃できるようなった。


 毒をたっぷり含ませた糞を彼方上空からたらす。

 ピンポイントで狙いたい場合は、上空から急加速で降りて、毒の糞を当てて急加速で上空へ逃げる。


 人間にとってはたまったもじゃない。

 毒マスターの特製の糞は農作物だけでなく、その土壌まで駄目にするのが評価されて30~50ポイント近く貰える。


 井戸等の水源を汚染できれば、200ポイントも貰えるようになる。

 やはり毒は万能だな。

 毒様々だな。

 さすが俺の相棒スキルだ。

 このスキルをマスターしなかったらと思うとゾッとする。


 多分ゴブリンの生活から抜け出せなかっただろうし、ジェットスワローになってもひたすら小動物を狩る毎日だったと思う。

 

 音速の貴公子というには気品が足りないが、逃げ足の速さ、そして行動できるエリアの広さは圧倒的だ。

 今回も急降下し収穫前の農作物に、たっぷり毒が染みこんだ糞を落とす。


 街の人が慌てて俺を追い払おうと、石を投げてくる。

 そんな雑な攻撃が当たるわけもなく、ジェットで加速し一気に空の彼方へ舞い上がる。


 この強烈なGを受けた後に感じる、空の開放感がたまらない。

 そう快感に浸っていると何かが突き刺さった。


 バランスが崩れ落下していく。

 何が起きた。


 自慢の羽に矢が突き刺さっている。


 攻撃された?

 誰に? 


 疑問が残るが、このままだと地面にたたきつけられてしまう。

 ジェットを細かく使い、落下スピードを落としながら草むらに落ちる。


 幸いジェットのおかげで落下ダメージはほぼない。

 ただ突き刺さった矢を抜かないと、空に飛び立つ事もできない。


 くちばしで矢をどうにか抜けないか試していると、ガチャンという鎧を着た人物の足音がした。


 振り返り、そして意識がなくなって暗転した。

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