第11話 ポイ活

 腹も膨れたので、とりあえず何かないか辺りを見回していると、少し離れた場所に鶏舎を見かけた。


 鶏舎を覗くと、ニワトリらしき鳥が三十匹以上眠っている。

 こっそり鶏舎に入ってみたが、危機感がなくなったニワトリは、気持ちよさそうに眠ったままだ。


 どうするか、眠っているニワトリならいくらゴブリンのこの体が貧弱でも倒せると思うが、ニワトリが騒ぎ出したら村人がやってきてしまうな。

 何かできないかと鶏舎をあさっていると、いつの間にか視界が確保しやすくなっている事に気づいた。

 慌てて外を見ると、太陽が昇り始めやがった。


 窓から入った朝日を浴びた一匹のニワトリが覚醒し、でっかい鳴き声をあげる。

 そしてその声を聞いて他のニワトリ達が同調しはじめる、けたたましいモーニングコールが続く。


 やばい、村人が起きてきてしまう。

 続々と鳴き始めるニワトリに、殺意が湧いてくる。


 ただ気持ちを押し殺し、ここはひとまず退散しよう。

 慌てて鶏舎から出ようとした時に、体に何にぶつかり物が落ちる音がした。


 振り返ると、落ちた物は鳥用の餌が入った豆だった。

 一斉にニワトリがその落ちた豆に群がっていく。

 

 ニワトリ達は俺の事も警戒せずに、一心不乱に落ちた豆を食べている。

 

 豆を拾い上げてじっと見つめる、よしこれだ。

 豆をまきニワトリ達をこちらにおびき寄せる、そしてもう一度つかんだ豆に毒をたらし込む。

 色がどす黒く変わった豆をまいた。

 

 一匹がそれを食べ、そしてすぐに叫び声を上げて倒れた。

 ステータス画面を見るとポイント17ポイントになっている。 

 5ポイントも追加された。

 

 よしと思い、残った豆に毒をたらし全ての毒豆をばらまいた。

 鳥たちは仲間が叫び声を上げなら倒れていても関係なく食べ続け、そして続々と倒れていく。

 

 よし、まだ全部殺しきれていないが、ここから出よう。

 そろそろ村人がくるかもしれない。

 

 夜は気づかなかったが、鶏舎を出たすぐ先に牛舎があった。

 牛舎を覗くと、牛が三匹、朝ご飯をよこせと鳴いていた。

 ゴブリンの俺より遙かに大きく、間違いなく戦ったら負ける自信がある。

 

 ただ先程学んだ、俺には俺の戦い方がある。

 鳥たちよりも警戒している感じではあったが、藁を与えてみるが警戒しながらもそのまま食べていた。


「おっとう、てぇへんだ!」

 遠くで子供の声が聞こえた、どうやら村の子供が鳥たちの異変に気づいてしまったようだ。


「くそ、やられた。牛舎を見てこい」

 慌てて猛毒を牛の藁に染みこませて食べさせる。


 少し食べた所で苦しみ暴れ始めた。

 体が大きいので毒が足りなかったか、苦しんでいるどうするか、止めを差しにいくべきか。


「何だお前!」

 やばい、とうとう見つかってしまった。


 牛を殺すのを諦め、その場から逃走する。


「おっとうゴブリンが逃げた、鐘をならして!」

 牛舎から逃げた所で、甲高い鐘の音が村中に響き、その音を聞いた村中の人が斧や鉈等の武具を持って家から出てきた。


「てめぇか」

 出くわした怖い顔の村人達に追いかけられ、死ぬ気で逃げる。


 やばくない、この村人達みんな恐ろしく獰猛だな。

 なんとか村人をまいてゴミ箱の中に隠れる事ができた。


「おい、みつかったか?」


「いや、まだだ。どうだそっちは」


「くそ鳥は全滅だ」


「まじか、牛はどうだ」


「幸いまだ生きているが、この後どうなるかわからない」


「くそ」

 隠れていると、怒りに満ちた村人達の声が聞こえた。


 ステータス画面を見ると、ポイントが177ポイントになっていた。

 鳥は全滅したけれど、まだ牛のポイントはまだ貰えていないのかな?

 弱ったな、牛を三匹殺しきれば、いいポイントになりそうだけれどな。


 もう少し隠れて、再度牛を殺しにいくか。

 ただこのゴミ箱の中も時期見つかるよな。


 絶対に見つからない場所はないかな。

 どこかに隠れて、村人が寝静まったら一度出るのがベストかな。


 とりあえず、すぐそこにある井戸の中に隠れる事はできないだろうか。

 ゴミ箱からそっと抜けて井戸に近づき覗きこむ。


 真っ暗で何も見えず、石を落として深さを確認したがかなり深そうだ。

 ゲームの世界だと井戸の中に空間があって、アイテムが落ちてたり、人が住んでたりするがあれは嘘だな。


 こんな狭い空間に入ろうと思う人がいる訳がない。

 仮に隠れたとしても、自力で登れる体力はこの体にいない。


「おいみんな、井戸の所にいるぞ」

 井戸に入るか躊躇していいたせいで、村人に見つかってしまった。


 逃げようとしたが、集まってきた村人に回り込まれてしまった。

 少しでも身長差のハンデを補う為に井戸の縁に立って、両手を広げて威嚇する。


 仕方が無い、今回のゴブリンとしての生はここまでのようだ。

 ここは一人でも殺してポイントを貰おう。


 手のひらにありったけのMPを使い、猛毒を両手に盛る。

 毒に耐性の低いゴブリンの俺も毒に感染したが、手のひらから毒がこぼれ落ちるのを見て村人もビビって近づこうとしない。


 あれ、ワンチャン逃げられるかも。


 一瞬希望が湧いた瞬間、ザクッと何かが肩に突き刺さった。

 強烈な痛みを感じた場所を見ると、鉈が肩から生えていた。


 そしてその痛みと鉈の衝撃を受け、体勢が崩れてしまい井戸の中に落ちてしまった。


 そして頭に衝撃を感じ、意識を失い暗い世界にやってきてしまった。

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