第10話 第一村人発見
ゴブリンの洞窟を出てから狩りを続けたが、ポイズンスライムの時のようには思うようにいかない。
ポイズンスライムの時よりはまだましなボディーと手足ができたので器用になったが、遠距離攻撃ができなくなったのがかなり痛い。
見よう見まねで弓を作ってみたが、全く持って使えない。
昨日は一日中森の中を駆け回ったが、何も戦果を得る事ができなかった。
最後に飯を食べたのが、二日前に捕まえて食べたのは小さなリスが最後だ。
腹が減って幻覚が見えてきそうだ。
まずい、本格的に動けなくなる前になんとかしなくてはいけない。
リスクはあったが、いつもより遠出する事にした。
どうやらギャンブルには勝つ事ができたようだ。
住んでいる洞窟から離れた場所に来たおかげで、見慣れない生物を見つける事ができた
最初は同族かと思ったが、俺が着ている適当な毛皮ではなく、ちゃんとした服を着ている。
そうだ、人間の子供だ。
子供と言っても、自分よりも大きく体格も良さそうだ。
ただ武具も持っていなさそうだし、うまく奇襲すれば倒せるか。
どうしよう、千載一遇のチャンスだ、イチかバチか襲うべきか。
勝負すべきだとはわかっている、このままウサギ狩りをしていたら、スライムに戻るポイントを集めきる前に、餓死する運命は見えている。
それでも何度もゴブリンに転生して、ようやくの思いで成人できたんだ。
簡単に死ぬ事はできず、最後の踏ん切りがつかない。
あれこれ考えていると、ガキは果実をかごいっぱいに入れると、森から出ようとしている。
襲うなら今かと思ったが、ガキが一人でいるという事は、この辺に奴の住んでいる町か村があるのだな。
そう思いガキの後をついて行く。
隠れながらついて行き森を抜けると、人が住む村を見つけた。
辺り一面に田んぼがあり、ざっと数えて二十人以上が田んぼで稲を刈っているので、そこそこ大きな村のようだ。
田んぼの超えた先に、あいつらの村があるみたいだ。
とりあえず日が落ちるまでじっとして、田んぼで作業している人が村に帰ってから近づく事にした。
念の為完全に暗闇になってから、少しずつ村へ近づく。
慎重に近づこうとしたが、後ろからリズムよく近づく音がする。
暗くて見えないが、恐らくあの音は馬の蹄の音だ。
馬に乗った村人が、村に戻ろうとしているのか。
向こうも暗闇で何も見えないと思うが、念の為田んぼの中で隠れよう。
日が落ちてひんやりとした泥の感触が足に伝わり、思わず声が出そうになったのを我慢する。
身を低くして、村人が通り過ぎるのをじっと待つ。
無事見つかる事無く、難からから逃れる事が出来たが予想外のハプニングが起きた。
思っていた以上に泥が深く、腰の近くまで浸かってしまった。
ゴブリンの俺の大きさを考えていなかった。
慌てて田んぼから出ようとするが中々、足が抜けない。
近くにある稲を引っ張って、なんとか田んぼから抜け出す事ができた。
危なかった、もし抜けなくなって体力がなくなったら、朝日と共にやってくる農家にリンチになっていただろう。
空きっ腹に無駄な労力をしてしまった、大の字で寝てもう体を動かせないのではと思うほど疲れている。
下手したらHPが減ったのではないかと思いステータスを見た。
『レベル6 種族 ゴブリン HP28 MP13
力11 素早さ4 魔力4 器用さ9 運11
スキル 子だくさん 同時に子供をたくさん産める事がある
毒 マスター ありとあらゆる毒を自由に使いこなす
称号 同族殺し 同族を殺戮し続けた者に与えられる称号
ポイント 12』
幸いHPは減っていないので安心した。
あれ?
僅かにだが、ポイント増えていないか?
今までのポイントはウサギ3ポイント×3、リス1ポイント×1で10ポイントのはずだけれど2ポイントも増えている。
何でだろう?
ここに来るまでに、何か小動物でも殺しただろうか。
ふと周りを見ると、先程田んぼから脱出する為に、滅茶苦茶になった田んぼがあった。
もしかしてこれか?
死ぬと思って無我夢中で暴れたせいで、収穫直前の稲を倒しまくっている。
確かに俺が農家だったら毎日汗水たらして作った田んぼを滅茶苦茶にしたら、大声で叫びたくなる程むかつくだろう。
田んぼに被害を与えたのが、ポイントに換算されたのは棚から牡丹餅だ。
ただもう一回やれと言われても、二度とごめんだ。
このちっこく貧弱で疲れ切った体でもう一度田んぼに入ったら、次は本当に抜け出せない。
ただ何かヒントを貰った気がする。
直接殺すだけがポイントを得る手段じゃないんだな。
ようは人間が嫌な事をすればいいんだ。
あの村の中に入れば、もっと良い方法が思いつくかもしれない。
外から見える家の光が少しずつ消えてゆく、完全に寝静まった村の中に入る。
村の外には警戒している村人が三人もいた。
それなりに厳重で、三人とも真剣な顔で警戒している。
三人に見つからないように体をはって進む。
音を立てるトラップもあり、あやうく引っかかりそうになったが、うまく避け無事村の中に入る事ができた。
人っ子一人もいない、皆寝ているようだ。
どうするか、どこか入ろうかと思い、ドアノブに飛びついたたが鍵がかかっていやがる。
他に入れる場所はないかと回り込んで窓が開いている場所を見つけたが、背の小さなゴブリンの俺には届きそうにない。
外に置いてあるゴミ箱を台替わりにして、飛んでみたが僅かに届かず、地面に豪快に着陸する。
倒れたと同時にゴミ箱からゴミがバラバラと散らばる。
村人が出てくるかもと慌てていたが、幸い起きてくる事はない。
散らばったゴミを再度ゴミへ戻そうとしたが、ゴミ箱の中には村人の食いかけの飯があった。
元人間としてはほんの少しだけ躊躇したが、背に腹は代えられない。
まずは腹を満たす、ポイントを得る作戦はそれから考えよう。
腹が減っている状態だと、飯の為に無茶をしてしまいそうだ。
夢中で残飯を食べ、あっという間に食べ終えた。
残飯でも今までゴブリンになって、食べてきたどの飯よりもうまかった。
よし腹も膨れたし作戦を考えよう。
ここは勝負時だ、ポイントを得る千載一遇のチャンスだ。
一番いいのは村人を殺し、全滅させることだけれど、それはこの田んぼにすら殺されそうになる体では現実的ではない。
滅茶苦茶ラッキーとラッキーが重なって、一人か二人殺せる程度だろう。
今までの経験からすると、村人二人殺せても400~500ポイント前後だろう。
確実にスライムに戻る為の1000ポイント得るには、五人は殺らないとダメだ。
今回のチャンスをうまく活用できないと、またゴブリンをやる羽目になる。
今回みたいに、運良く成長して洞窟から出られる保証はない。
それらを考えるとリスクは避け、なるべく安全にポイントを稼ぐべきだな。
慎重かつ、ここぞという時は勝負しないといけない。
中々エグいミッションスタートしたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます