第8話 ゴブリン生活の開幕
目が覚めると今までの青空はなく、見慣れない天井があった。
久々の嗅覚が復活したが、湿った匂いと獣臭と汚物を煮詰めた嫌な匂いが充満していた。
どうやらあればいいという物ではないようだな。
光が入ってこないせいか、生まれたばかりのせいか視界がくっきりしないが、どうやらどこかの洞窟のようだ。
そして体を動かすと今までにない頭がある、頭ってこんなに重かったんだと思いながら、その頭を動かすとぼやけた視界に手と足が写った。
憧れの手足だ。
つい嬉しくなり、手をグーパーと繰り返す。
スライムから卒業し、無事ゴブリンとして生まれてきたようだ。
周りを見ると、自分と同じく生まれたばかりのゴブリンがわんさかいる。
何人いるのか、生まれたばかりで目が悪く、はっきり見えないので数えられない。
よし早速ステータスを見よう。
『レベル1 種族 ゴブリン HP7 MP2
力1 素早さ2 体力5 魔力1 器用さ4 運11
スキル 子だくさん 子供を多く産める事がある
毒 マスター ありとあらゆる毒を自由に使いこなす
ポイント 0』
ステータスはスライムより少し強いぐらいか。
まぁ初期モンスターだから仕方がないな。
それよりも気になるのがスキルだ。
何だスキル子だくさんって、確かに周りに生まれたての子供が山のようにいるけれど。
そして超嬉しい誤算が毒のスキルが残っている事だ。
何故引き継いでいるのだろうか。
ポイズンスライムになった時は、溶解のスキルはなくなっていたし、前世習得した分裂のスキルもなくなっている。
もしかしたらスキルをマスターしたら、来世に持ち越せるシステムなのか。
これはスキルをマスターしてから来世に行くと、強くてニューゲームができるという事か。
ようやく転生ものらしいチートが出てきた。
今まで妙にきつい設定だと思っていたけれど、ようやく無双する事ができるのか。
よしこれから転生したスキルはマスターしてから、次の種族に行くのよさそうだな。
しかし子だくさんのスキルを極めるのはどうだろうか。
子供がたくさん産めるのは種としては優位だけれど、個人的にどうなのだろう。
スキルについてあれこれ考えていると、隣のゴブリンの赤ん坊が泣きだした。
最初は少しぐずっている程度だったが、次第に大きくなり、途中から甲子園のサイレンのような変な泣き方を始めていた。
まぁ生まれてすぐにこの鼻の奥にくるきつい匂いと、不快指数がマックなこの温度と湿度に泣きたくなるのはよく分かる。
隣の赤ん坊につられてか、他の赤ん坊も共鳴して泣き始めた。
あまりのうるささに手で耳を塞いでいると、棍棒をもった大きなゴブリンがやってくるのが見えた。
あれが、俺の親だと本能的にわかった。
泣いている赤ん坊をあやしにきたのだな。
そう言えばスライムの時は親なんていなかったから、モンスター人生親との初対面だ。
面倒くさそうな顔をした親が、隣で泣いている赤ん坊の所まできた。
ゴブリンは我が親ながら不細工で、嫌悪感を持つ顔だ。
いずれ俺もああなるのかと親をしげしげ見ていると、親のゴブリンは何故か持っている棍棒を振り上げた。
「え」
そして振り下ろされ、隣にいる赤ん坊と共に俺も潰されて、暗い世界に飛んだ。
そして魂になっていつもの白い空間で列に並ぶ。
あまりのあっけない終わりに驚く。
初めてスライムに転生した時並に一瞬で終わってしまった。
まじか、よりによって親に殺されたなのか。
思ったよりもゴブリンはやばいな。
あれは虐待とか毒親とかいう、そんな生やさしいものではないな
これだったら親がいないスライムの方がまだましだな。
ゴブリンに使ったポイントはもったいなかったが、ポイズンスライムに戻ろう。
子だくさんのスキルにも興味ないし、ゴブリンに未練はないね。
「次のかたどうぞ」
邪神のおっさんの声が聞こえ部屋にはいる。
「死んでしまうと情けない、次の生を選びなさい」
渡されたタブレットを見て思考が停止した。
『ポイント 0
転生先 スライム 1000
ポイズンスライム 1000
スメルスライム 1450
ジャイアントスライム 2200
リザードスライム 3800
アイアンスライム 5200
ポイズンフラワー 2500
ゴブリン 0
ポイズンウルフ 4300』
「え、なんでポイントが……」
ゴブリンに転生しても3000ポイント以上残っているはずだ。
「同系種から変わったの初めてか。
考えてみろ全く違う種族に変わるんだぞ、リスクがあるに決まっているだろ。
同系種から変わったらポイントは0に振り直しだ」
「そんな、今までノーリスクで何度も転生していたのに。
か、仮にポイントが0なのは良いとして、決してよくないけど。
何で一度なったスライムになるのにすら、ポイントが1000ポイントかかるんですか」
「そりゃお前、手数料がかかるだろ」
なんだ手数料って、ATMか携帯の解約でもあるまいし、最初にかかる事を教えろ。
「なんで変える前に教えてくれなかったんですか」
「お前俺をなんだと思っているんだ。
親切な親だとでも思っているのか。
邪神だぞ、聞かれもしない事を丁寧に教えるわけないだろ」
何度も理不尽に生まれ変わってきたが、今が一番腸が煮えくりかえっている。
もし腕があったら、間違いなく邪神の襟元をつかみかかっている。
「ほら、ゴブリンにしかなれないんだから、さっさとゴブリン選びな。
というかもう時間だ」
「……絶対にいつかぶん殴ってやるからな」
「そうか、楽しみにしているよ」
意識がなくなるまで、邪神の人を小馬鹿にした顔を睨み付けていた。
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