第6話 毒無双
湖の近くで狩りを続けていた。
木の上から一方的に狩る事で安定感に生活ができている。
生まれてから3ヶ月も過ぎた、モンスター人生最長記録更新だ。
狩りはもうなれた物で、今では小動物だけでなく、人も平気で狩れるようになった。
今日も毒に苦しむ、鎧を着た戦士を見つめる。
「くそ……湖の魔人……か」
いつの間にかヒューマン達の間で、湖の魔神とか大層な名前で呼ばれるようになった。
戦士が泡を吹いて、完全に動かなくなったのを確認し、体を薄く広げ包み込み食事を開始する。
時間をかけて食べ尽くし、消化できなかった武具や防具を湖に捨てる。
他のヒューマンに不審に思われないようにする為にやっているが、よくゲームで宝箱が湖にあるのは不自然だと思っていたけれど、あれはこういう理由だったのか。
武具と防具を捨てる際、湖に映った自分を見つめる。
いつの間にか体は子鹿と同じくらいに大きくなっていた。
色もなんか禍々しく、前よりも濃い緑色になっている。
『レベル35 種族 ポイズンスライム HP92 MP130
力30 素早さ31 体力42 魔力81 器用さ49 運50
スキル 毒 マスター ありとあらゆる毒を自由に使いこなす
スキル 分裂 ★★☆☆☆ 分身体を作りだし操作できる。
ポイント 4339ポイント』
当初は動物を中心に狩っていたが、ヒューマンも単独でいる場合は積極的に毒を使って狩っている。
レベルとステータスは大幅に上がり、毒のスキルを使い続けた★が五個貯まった結果マスターと表示されるようになった。
毒マスター、実に厨二病心をくすぐられる言葉だ。
そしてレベルが30を超えた時、新しいスキル分裂を取得できた。
分裂はHPやステータスも全て半分になるが、体を二つに割り、もう一つの自分の体を遠隔操作できる。
ステータスが一時的に落ちるだけでなく、時間制限もあり、しばらくすると自動的に消えて元に戻ってしまうが中々便利なスキルをゲットした。
手に入れた当初は簡単な命令しか聞いて貰えなかったが、練習を重ねる事によって、右手と左手で違う作業をする感覚で本体と同時に分身も操作できるようなった。
そしてスキルのレベルが上がると、分裂した体も毒のスキルを使う事ができるようになった。
これにより新たな攻撃法を作り出してしまった。
二方向からの毒の挟撃、つまり十時砲火、又の名をクロスファイアだ。
分裂体をと共に毒マスターとなった俺が、連射性の高い毒を二方向からクロスする感じであいてに向かって発射する。
確か元々十時砲火とかは拠点を守る為に使われていたが、奇襲して確実に相手を葬るのにも使えるようだ。
二方向から同時に毒の雨を降らせると、鍛えられた冒険者達でも避けきる事が出来ず、猛毒に感染し皆なすすべなく倒せた。
さらに毒をマスターしたおまけ特典があった。
毒の消費魔力が半分になった。
MP消費1/2と言えばゲームの終盤に手に入る上位のアクセサリーだが、やはり滅茶苦茶恩恵がある。
毒のマシンガンを魔力残量気にせず、思い切り放つ事事ができるようになったのも、このクロスファイア戦略にとって大きなプラスだ。
ただ最近は派手に狩りすぎたのかもしれない、最近はモンスターや動物達だけでなく冒険者達もこの湖にやってこなくなってきた。
そろそろ狩り場を変えた方がいいかもしれない。
今後の戦略を考えていると、鎧を着た戦士風の女が一人で湖やってきた。
膝をついて水を水筒に入れている。
どうやら湖の魔人たる俺の存在を知らないらしい。
よし最後に、彼女を狩ったらこの湖を卒業しよう。
分裂のスキルを発動し、別れたサブと自分も所定の位置まで移動する。
クロスファイアーできる所に移動でき、サブと共に狙いを定める。
「ターゲット補足、いつでも狙えます」
分裂体からメッセージが飛んでくる。
もちろん、一人遊びだがこういう遊び心が大事だ。
「よし、攻撃開始!」
分身体と共に、左右から同時に毒の雨を女性に向かって降らせる。
女性も気づいたようでこちらを振り向く、大きな盾を持っていないので、避けられまいと思った時彼女が意外な行動に出た。
女性はしゃがんで水を汲んでいる体制から、膝を勢いよく伸ばし綺麗なフォームで湖に飛び込んだのだ。
今まで何人か逃げ切った冒険者もはいたが、湖に飛び込んで避けられたのは初めてだ。
湖に入った彼女を見失ってしまい、慌ててサブと共に彼女を探すが見当たらない。
彼女を探していると、サブの視界が突然ぷつりと消えた。
分裂の時間切れには早すぎる。
という事はサブはあの女性に消されたのか。
ぞくりと無い背筋が凍る。
スライムとして三回も死んだ経験が教えてくれた、ここにいてはやばいと。
落ち着け、まだばれていない。
木から急いで下り、この場から緊急離脱だ。
「お前が噂の湖の魔神か、まさかスライムだったとはな」
透明感のある澄んだ声がした方をみると、先程まで水くみをしていた女性だ。
銀色の鎧に負けない、濡れた髪が太陽の光を浴びて金色に輝いている。
あまりのオーラにない膝を折って、膝つきたくなる衝動に駆られる。
彼女は見るからにできの良い長剣を振り下ろし、俺を暗闇の世界に送り込んだ。
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