第4話 最弱種の戦い方

 

 まだ小骨は奥で引っかかったままだが、とりあえずリベンジマッチ、前世の敵討ちができた。

 試しにステータス画面を確認した。


『レベル2 種族 スライム HP4 MP2

 力2 素早さ1 体力2 魔力2 器用さ2 運50

 スキル 溶解 体から出た酸が相手を溶かす

 ポイント 3』


 お、レベルアップしている!

 ステータスも僅かにあがっているし、初ポイントもゲットだぜ。


 上空からの奇襲、これがスライムの戦い方だ。

 移動力、防御力が極端に低いこの体で真っ向勝負したら野ウサギにだって勝てない。

 スライムで獲物を狩るには、上空から奇襲する、これしかないな。

 

 ふふふ、すごくないか俺。

 この戦い方を誰に教わる事無く、自分で最適解を導き出したのだぞ。

 滅茶苦茶早い、天才かもと調子に乗っていたが、冷静に考えるとスライム人生三週目でわかったというのは滅茶苦茶遅いような気もしてきた。


 何はともあれ戦い方はわかった。

 How、方法は分かった。

 次はWhereとWho、どこでだ、誰を狩るかだ。


 よさげな狩り場はないだろうか?


 この平原ではだめだな。

 高い木がこの一本しかないし、あまり小動物がいない。

 木が生えた場所かつ小動物が集まる場所が理想的だけれど、そんな理想郷はあるのかな?


 なにはともあれ探索だ。

 ゆっくりと進む体で平原から森の中へ向かう。

 気配を消してスニーキングしながらゆっくり進んだが、途中でモンスターや人に見つかった。

 スライム人生三週目もここまでかと思ったが、皆人もモンスターも、見向きもしないで見逃された。

 特にこちらがちょっかいをかけなければ、向こうから積極的に襲ってくる事もないようだ。

 安心した気持ちが湧いたが、まさに眼中にないという事で少しだけ悔しい。


 いつか見ていろよ、いずれぎゃふんと言わせてやる。


 森を彷徨っていると、良さげな場所を見つける事が出来た。

 森の真ん中に湖があり、その周りを大きな木が囲っている。

 ここなら湖にやって来る野ウサギだけでなく、リスやネズミなどの小動物を狩る事ができた。



 湖で二週間程、無事に生活でき大分成長した。

『レベル5 種族 スライム HP13 MP6

 力11 素早さ3 体力8 魔力4 器用さ8 運50

 スキル 溶解 レベル★☆☆☆☆ 体から出た強烈酸が鉄をも溶かす

 ポイント 29ポイント』

 レベルとステータスが上がり、少しだけ体が大きくなった気がする。


 そしてなによりもスキルがに☆のマークがついた。

 どうやらスキルはマックスが5でその内一つが灯ったようだ。

 スキルの説明文も★がついて少しだけ変わった。


 説明分通り、溶解の威力もあがり、この前は自分より大きな子鹿を襲ってみたがうまく倒す事ができた。

 最初は生物を襲う事や溶解で生き物が溶けていく様に忌避感があったが、今では何も感じない。


 ポイントもうさぎが3ポイント、ねずみが1ポイントで子鹿が5ポイントと大きな動物を狩った方がポイントが多いみたいだ。

 次はどんな獲物を襲うかなと思っていたが、なにやら人の声が聞こえてきた。


 じっと身を潜めていると近くに人がやってきた。武具や防具を装備しているので冒険者かなにかだと思う。

 三人組で随分話が盛り上がっている。

 どうしようか、ちょうど自分の真下を通っている。


 どうあがいても勝てる訳がない事は、頭がない俺でも分かる。


「あっ」

 ただあまりの絶好のチャンスに、つい魔が差してしまい、気が付いた時には一番後ろを歩いている魔法使いらしき男の上へ飛び降りてしまった。


 自分自身の行動に驚きながらも体を広げ、魔法使いの顔にへばりつけた。

 叫ばないように口と鼻を押さえて、そこに最大限の溶解のスキルを叩き込む。


 強烈な酸が魔法使いの顔を溶かし、魔法使いがもがいている。

 小動物を溶かすのに慣れた俺でも、魔法使いの顔から白い蒸気がでる姿は自分でやった事とはいえ、かなりぐろい。


 何とか俺を剥がそうとするが、魔法使いは動きがとまり、倒れた。

 よっしゃー、初めて人を倒す事ができた。


「魔法使い!」

 先頭にいた戦士らしき人物が、異変にようやく気づいた。


 せめて名前を呼んでやれよと思ったが、そんな突っ込みを入れている場合ではない。

 死んだ魔法使いから体を離し、なんとか逃げなくては。

 おっかない顔をした戦士風の男が大剣を振り上げ、そして体を綺麗に真っ二つにされた。


 そしていつもの暗闇の世界に入った。


 いつも何もない空間で列に並んでいた。

 ああ死んでしまったが、今回は今までにない満足感があった。

 死ぬ事になれてしまったのは問題があるが、それでもいつになく気分がいい。 


「次の方どうぞ」

 邪神のおっさんに呼ばれて門を開ける。


「死んでしまうと情けない、次の生を選びなさい」

 やるきなく渡されるタブレットをみる。


『レベル7 種族 スライム HP20 MP8

 力15 素早さ5 体力10 魔力6 器用さ13 運50

 スキル 溶解 レベル2 レベル★☆☆☆☆ 体から出た強烈酸が鉄をも溶かす

 ポイント 241ポイント

転生先 スライム     0

  ポイズンスライム 180』

 お、レベルが2個も上がっているしステータスも伸びているし、ポイントが一気に200ポイント以上伸びた。


 確認できなかったが、人間を倒すと一気にポイントを選が増えるようだ。

 そして何より転生の項目にスライム以外に、ポイズンスライムの明記がある。

 

 180ポイントを消費すれば、新たにポイズンスライムになれるのか。


「これポイズンスライムになれるんですか?」


「180ポイントを使えばね」


「正直スライム以外になりたいんですけど」


「他の系統に変わるにはもっとポイントがかかる。

 どうする残り20秒、選ばないと強制的に前世と同じスライムになるぞ」

 もっと邪神のおっさんにあれこれ質問したしが、時間制限が迫ってくる。

 

 どうするか、ここはポイントを温存して憧れの手足のある種族になるべきか、それともスライムの上位種族のポイズンスライムになるべきか滅茶苦茶迷う。


「残り5秒」

 親切なのか、邪神のおっさんが無情に残り時間を宣言する。


「えい」

 タブレットを思い切って押してみる。

 

 そして暗闇に落ちて意識がなくなる。

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