第2話 二度目のスライム
覇気の無い邪神のおっさんがが、タブレットを渡してきた。
そこには前回同様にポイント 0、転生先 スライムとしか書かれていなかった。
「随分短い人生だったな、35秒だって。
最短記録5位だって、おめでとう」
おっさんは、気持ちを全くこめずに祝福してきた。
「何があったんですか」
「ああ、どうやら馬車にひかれたみたいだね。
じゃや早速だけど、次の人生を決めなと言っても、スライムしか選択肢はないがな」
「また、スライムですか」
「スライムで下積みをして、ポイントを貯めて次のステージに行くんだ。
ほら、悩みようがないからさっさと決めて、ノルマ分終わらせて、今日こそ家に帰って寝たいんだよ」
ブラックな社畜の邪神に督促されて、ダブレットのスライムを押すと再び辺りが暗くなり、意識を失う。
再び、地面にへばりついたスライムに生まれ変わった。
まず辺りをうかがい、先程は道路に出てしまって引かれてしまったようだし、街道沿いは危険だ。
道がない、人の気配のなさそうな場所に向かう。
手足どころか頭もない状態なのでどうやって動かせばいいのか、とにかく這うように移動する事ができた。
粘着性のある青緑色の体を動かすのに苦戦しながらも、人気のなさそうな木の下までやってくる事ができた。
まだよくわからないが、何となくだがこのスライムの移動方法はわかった。
この不自由な体のスライムとして生きていく為に、必要な衣食住を整えなくてはいけない。
服は装備できるのか?
ゲームだとスライム用の鎧とかあったけれど、このドロドロとした体に合う鎧を作るのは難しそうだ。
とりあえず考えても意味がないので、衣服はパスだな。
食事はどうする、スライムは何を食べるのだろうか。
腐肉とか含めて何でも食べるイメージがあるが、アレルギーとかないのかな?
食べていけない物もあるかもしれないが、相談できる経験者でもいればいいのだが。
そして食事と同じく重要なのが住まいだ。
生きていくには、安全に寝られる場所の確保が必要だ。
ベットがあって、風呂があって、ソファーの上でNetflixが見えるの理想的だが、そこまで贅沢は言わないから、せめて雨風がしのげそうな場所が欲しい。
その辺に穴でも掘ってそこで暮らすか。
穴を掘るって言っても、腕もないこの体だから掘るのも難しくないか。
どうにか掘れないか試すが、力が入らず全くもってダメだ。
どこかにちょうどよさそうな、穴があればいいのだけれど。
転生したんだから、何か便利なチートスキルとかないのか。
そう思っていると、頭にスキル名と書かれた文字が浮かび上がってきた。
「おお、ステータス画面とかあるんだ」
『レベル1 種族 スライム HP2 MP1
力1 素早さ0 体力1 魔力2 器用さ1 運80
スキル 溶解 体から出た酸が相手を溶かす
ポイント 0』
スライムだけあってステータスが低いな、雑魚中の雑魚だな。
特に素早さ0って何だよ、一生攻撃のターンが来ないじゃ無いか。
それに運だけが80とずば抜けていいのか、運に振り切ったステータスなのか。
その割には前世では速攻馬車に引かれたんですけど、運がいいのは今回だけなのかな?
とりあえず自分が豪運だと信じて、もう少しこの辺を探索しよう。
探索するとちょうど良さそうな穴蔵があった。
とりあえず、今日はここで夜をすごそう。
雨が降り始めたので、穴に入って外を眺めている。
そう言えば、そもそもなんで俺はスライムなんかやっているのだろうか。
どうせ転生するなら勇者とか賢者とか、もし人間がダメならエルフとかドワーフでもいいのに、何故モンスター側についてしまった。
前世で悪徳な事をして、人を騙していたのかな?
それのペナルティーなのか?
滅茶苦茶重い刑罰だな。
スライムに転生なしくちゃいけないぐらい、悪い事したのか前世の俺は。
百歩譲ったしてモンスター側についたしても、スライムはマジで無いわ。
最弱から最強になるというロマンはあるけれど、この体では生きていくだけで理不尽だと思う。
手と足どころか、頭もないというハンデはあまりにもでかい。
五体不満足どころかボディーしかない。
穴蔵から外を見て色々考えていると、一瞬何かに光が遮られる。
小さな震動が地面につたわる。
何かがやって来た?
その何かは何度か穴の前に往復し、おっかなびっくりだが穴に侵入してきた。
しまった、この穴蔵の家主が帰ってきたのか。
そっか、考えなかったが誰かが掘ったのだから、家主がいる可能性は高いよな。
やばい穴蔵から出ようとするが、穴蔵は一方通行なのでやってきた何かが邪魔で出る事ができない。
暗闇の中でその何かが体に当たり衝撃を受ける。
痛覚はなかったがまさかと思い、ステータス画面を見るとHPが残り1になっている。
やばい攻撃を喰らってしまったようだ。
落ち着け、まだ終わっていない。
こういうのは考えようだ。
残り1ポイントしかないのではない、まだ残り1ポイントも、半分もHPが残っているじゃないか。
少しだけ見える隙間に体をねじ込んでみる。
しかし、再び体に衝撃が入り、意識がなくなり暗転してしまった。
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