第18話

鎖に引きずられたトロイアが石像の前に放り出されると、石像がゆっくりと両方の腰にぶら下がっていた剣を抜いた。


「ちょ…やばいやばいやばい!」


それを見て慌てたトロイアはすぐに立ち上がりどこからともなく表れた槍を構える。


ふざけた印象とは違い構えはなかなかに様になっていた。


実力は確かだというのはどうやら間違いではないらしい。


石像が素早い動作で振りぬいた剣をトロイアが何とか槍で受け流していく。


「ちょっと誰か手伝ってくれません!?俺死んじゃうんだけど!?」


しかし、余裕はないのかトロイアの声は必死だった。


「仕方ないわね、はい弱化魔法デバフ


三忌避の一人である黒髪の少女が何らかの魔法を放った。


トロイアに向かって。


「おおい!それ俺!俺に当たってるから!」


「あらごめんなさい、外したわ」


「絶対わざとだよな!?」


魔法を受けたトロイアの動きが明らかに悪くなる。


こいつマジで仲間に弱化魔法デバフかけやがった。


「おいアリス!やっぱこいつら協力とか無理だろ!?」


「あれーおかしいな―いつもは協力できてるのにー…」


アリスが目をそらしながら棒読みで答える。


こいつ…冷や汗だらだらじゃねえか。


「ほんとはいつもこうなんだろ!?」


「あははー…」


アリスがごまかすように笑う。


「まあ、落ち着けアレックス」


一人騒いでいる俺の肩にレオが手を置く。


「レオ…」


「とりあえずトロイアが死ぬまで相手の動きを観察して弱点を探ろう」


「お前もかよ!?」


あいつどんだけ仲間と思われてないんだ!?


「いや、さすがに助けてやれよ…。時間制限もあるんだから」


「お前たちはほんとに…」


ノエルとレーナが二人そろってあきれている。


お前ら…。


「「というか見てるだけはつまらん」」


お前らもかよ!?


誰か一人ぐらい心配してやれよ!?


「拙者も賛成でござる。そろそろ斬りに行きたいでござるよ」


「俺も実際に戦った方が得られる情報は多いと思う」


リンとシンも戦うことには賛成ならしい。


うん、当たり前にこいつらも心配はしないんだな。


「えー、せっかく面白くなってるのにー」


「「つまんないー」」


三忌避が非難の声をあげる。


あれを見ても、まだやり足りないのか?


「ちょっと!ほんとに助けてくんない?そろそろマジで死んじゃうんだけど?」


いつの間にかボロボロになったトロイアが必死に助けを求めている。


あ、また吹き飛ばされた。


しかし悲しいことに足の鎖は外れていないので、吹き飛ばされてもすぐに元の位置に引きずり戻される。


これ下手な拷問よりひどいな。


「とりあえず今はここまでにしとけ…。このイベントおそらく達成報酬で前回の罰金を払いきれるぐらいの額がでるはずだ。お前らもまだ払い終わってないんだろ?」


「えー…、そういわれると仕方ないかぁ。続きはまた今度にするわ…」


ウルがしぶしぶといった様子で了承する。


いや、もう十分じゃないかな!?見ててかわいそうなぐらいぼこぼこにされてるぞ!?


俺は三忌避達の様子に恐怖を覚えた。


「よしっ、それじゃあ全員戦闘準備!相手は能力未知数の格上だ!初めから全力で当たれ!」


レオの言葉に全員が戦闘体制へと移行する。


それは普段の様子から考えられないほどに連携の取れた動きだった。


「全員突撃!」


レオの言葉を合図に石像との戦闘が始まった。

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