第17話

「なあ、こんなやつらで本当に大丈夫なのか?」


俺は心配のあまりアリスへと尋ねる。


「まあたぶん大丈夫じゃないかな…、頭は大分あれだけどみんな実力だけは本物だから」


アリスが何気にひどいことを言っている。


しかし、こいつらレベル通りにしっかり強いのか…。


とてもそうは見えないな。


「とりあえずボスを見ないことには始まらねえ。いったんフィールドのほうに出るぞ。」


部屋中で騒いでいるメンバーたちにレオが呼びかけ、大きな扉を開く。


意外なことに部屋にいる学科のメンバーは素直にレオの呼びかけに答えていた。


「あれ?レオの言うことには素直に従うんだな」


「このメンバーの中だとレオが一番強いからねー」


そんなメンバーの様子にアリスがあきれる。


強い奴の言うことは聞くとかほんとに動物みたいな連中だな。


「だから、アレックスの言うことはたぶんみんな聞かないよ」


「その一言必要だったかな!?」


急にアリスに刺された俺は少し傷つきながらもレオ達の後に続いて扉の向こうへと足を踏み入れた。



◇◇◇



扉を抜けた先は朽ち果てた神殿のようなところだった。


左右に伸びる長さの不均一な柱。


床の石材に多く存在するひび割れや欠け。


そういったものが随分と長い時間人の出入りがなかったことを感じさせる。


そんな神殿の中央一体だけ存在する不自然に綺麗な石像が、異様な雰囲気を醸し出していた。


「あれがボスなのか…?」


三刀竜とは明らかに違う雰囲気に思わず息をのむ。


正直自分が戦力になる気がしない。


「見たことないボスだな。レオは見たことある?」


「たぶん古代の魔道兵器っていう推奨レベル75のボスだな。依頼で見たことはあるが戦ったことはねえ。何かめんどくさい能力を持っていたことはなんとなく覚えてるんだが…」


レーナの問いにレオが渋い顔をしながらそう答える。


レオが戦ったことがないのであれば、だれもわからないのではないだろうか。


「情報がないなら戦ってみるしかないな。戦ってるうちにわかるだろ」


レオが大剣を構える。


そんなレオに三忌避のうちの一人が待ったをかけた。


「ちょっと待って、情報がないなら私いい案があるわ!」


「ウル…お前のいい案は絶対にろくなもんじゃないから聞きたくねえんだが」


ウルと呼ばれた少女がすごくいい案があるのと笑っているのとは対照的に、レオの顔は引きつっていた。


そんなレオの様子にウルは気づいた様子もなく、


「こうすればいいのよ!」


そういって、ウルは何かの魔法を唱え始める。


すると、残りの三忌避に足蹴にされていたトロイアの足元に鎖のようなものが現れた。


なんだこれ?と思いその鎖の先を見ると石像の足元に伸びている。


おい、これってまさか…


「行ってこいクソ野郎!」


「へ?」


鎖はトロイアの足に巻き付いたかと思うとすさまじい速度で引っ張り始めた。


「嘘だろ!?」


トロイアは唐突な出来事に踏ん張ることもできず、鎖の勢いに任せて引きずられていく。


「おい何してんだ!?」


トロイアのあんまりな扱いにスミスが声を上げる。


よかった、少しはこの男も仲間を思う気持ちがあったらしい。


「どうせやるなら爆弾つけてからだろ!?そうしたら耐久力なんかも試せたのにもったいない!」


前言撤回。


どうやらこいつには人の心というものがないらしい。


「そうよ、ついでに耐久力アップの薬も飲ませておけば効果の確認ができたのに。今度からは先に行ってほしいわ」


カグヤが心底残念だという溜息を吐く。


前言撤回。


人の心が無かったのはスミスだけじゃなかったらしい。


本当にこんなやつらで大丈夫なんだろうか?


不安以外の感情が見つからないんだが!?

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