第19話

全員が一斉に戦闘体制に移行した中で、突出した速度で二つの影が石像に向かう。


いや、いきなり独断専行かよ!?


協力はどうした、協力は!?


「一番槍はいただくでござるよ!」


腰の刀に手をかけたままリンが石像の横を駆け抜け、その軌跡を銀閃がなぞる。


はやい…、刀を抜いた動作が全く見えなかった…。


かろうじてリンに続いた銀閃によって斬ったということは分かったが、刀にかけた手の動きは全くと言っていいほどに見えなかった。


「ふっまたつまらぬものを…」


斬ったと確信したリンが石像のすぐそばでしょうもないことを言っている。


何をやっているんだこいつはと思いながら石像のほうに目を向けると、石像には一切の傷がついていなかった。


そのことに気づいたリンも目を見開くが、その時にはすでに石像が左手に持った剣を振り下ろそうとしていた。


「あれ!?全く斬れてないでござる!?」


焦ってかわそうとするリンだが、どう見ても間に合いそうにない。


ああ、これは死んだな。


そう思っているとリンに追いついたもう一つの影がリンを剣の間合いから蹴り飛ばした。


けられた勢いそのままにリンがゴロゴロと転がっていく。


「絶対にやると思ったわ馬鹿が!」


「じゃあ、もう少し優しく助けてほしかったでござる…」


辛辣な態度のシンにリンが少し不満げな顔でそういった。


「助かっただけよかっただろ」


「よくないでござるよー」


子供のように頬を膨らませるリンにシンはやれやれといった態度をとっている。


そんな二人に完全に不意打ちを食らった形になった石像が向き合う。


どうやらあの石像のターゲットは完全にこの二人に移ったらしい。


その石像の背後からさらに不意打ちのようにノエルとレオが大剣で斬りつける。


「かってぇ!こいつ全く傷つかないんだけど!?」


「俺の力でも傷ひとつつかねえのかよ!?」


石像のヘイトが今度はノエル達に移る。


するとすぐにリンたちが攻撃を行った。


どうやらこの四人を壁役に周りが攻撃するのが普段の戦い方ならしい。


「よし、それじゃあ俺たちも攻撃始めるか」


俺と同じように少し離れた位置からレオ達の戦闘を見ていたスミスが巨大な筒のようなもの取り出す。


なんだこれ?


「ファイヤーッ」


筒の先から何かこぶし大の大きさのものが発射される。


「「「「ちょっ…!?」」」」


前線でヘイトをかっていた四人がそれを見た瞬間一目散にこちらへと駆け出した。


次の瞬間石像の目の前で大爆発が起きる。


わーおナニコレー…。


「「「「死ぬわクソ野郎!」」」」


ほんとにその通りだわ。


こいつマジで何考えてんだよ。


「いやいや、お前らならよけられるって信じてだけさ!現によけられたじゃないか」


「「「「いや、一人死んでんだよ!」」」」


「は?だれが?」


あそこと全員が指さす先を見ると焼け焦げた跡にトロイアが使っていた槍だけが落ちていた。


トロイアァァァァァ!


鎖で足がつながれてたから逃げられなかったのか。


「まあ、あいつだから仕方ないだろ」


「「「「それは確かに」」」」


「誰か少しぐらいは心配してあげて!?」


ほんとに普段からあいつ何やってんの!?


どんだけのことしたらこんなひどい扱いになるんだよ!?


「ちょっとみんな!上!上!」


後衛のアリスが焦ったようにこちらに叫ぶ。


その声に従って5人がそろって上を見上げると


「「「「「へ?」」」」」


爆発で吹き飛んだ石像が無傷で上から降ってきていた。


おい、これ本当に倒せるのか?



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