第15話
異世界生活三日目。
俺は朝から大学を訪れていた。
ベンチに座り空を仰ぎながらこの世界に来てからのことを考える。
思えば随分と濃い二日間を過ごしているものだ。
前の世界でここまで叫んだことはあっただろうか。
今までの仲間はみんなまじめでこんなにふざけて生きているやつらは周りにいなかった気がする。
なんだかんだで自分はこの生活になじみ始めているのだろう。
楽しく感じ始めている自分がいた。
「いや、なになじんでんだよ!?」
思わず自分自身で突っ込みを入れる。
あぶねぇ、いい感じにまとめるところだった。
こんな短期間で何回も死んでるのがいいわけねえ。
あまりに自然に死ぬことに慣れ始めている自分に恐怖を感じる。
このままじゃだめだ、何とかしないと。
「おー、アレックス今日も金稼ぎ行くぞー」
自分の現状に頭を抱えていると、待ち合わせをしていたノエルたちがやってきた。
そんなノエルたちを見て俺は考える。
このままこいつらについていくのはよくないのではないだろうかと。
「どうしたんだよ、黙りこくって?」
一言も発しない俺にノエルが首をかしげる。
「俺気づいちまったんだよ…」
「何に?」
「まだ二日なのに死にまくってるこの環境がおかしいってことにさ!?」
そんな俺の叫びにノエルとレオは顔を見合わせてそろって首をかしげる、
「「それの何が悪いんだ?死ぬ可能性がある方が覚えるの早いだろ?」」
何を当たり前のことを、といった態度である。
もうやだこいつら。
「どう考えてもおかしいだろっ!?もうやだ、アリス助けてくれこいつら頭おかしい…」
そんな俺たちの様子を見てアリスは困ったように笑う。
「あはは…、まあレオ達の言っていることは極論過ぎて大分おかしいけど、そっちの方が効率がいいのは事実だよ。この世界じゃ本当に死ぬことはないし、痛みだって大分緩和されてるでしょ?でも、死ぬってことには恐怖があるからみんな普段以上にがんばるし。」
私の時もそういわれて何回も死んだな、確かに成長は早かったけど…とアリスが遠い目する。
クソっ、アリスは体験者なのに肯定派なのか。
「まあ、実際かなり効率的なんだよね。ふつうは一年でレベル30くらいまでしか行かないのに、私まだこの世界にきて半年だけどレベル52まで上がってるし。」
さらっと言われたアリスのレベルに驚く。
52!?しかもまだこの世界にきて半年しかたってないのかよ!?
アリスの周りとのなじみ具合からして数年はいると思ってたのに。
「まあ、昨日のクエストがあんな終わり方して嫌になったのはわかるよ。でも、あれもアレックスが成長しやすいクエストをレオ達が選んでくれたんだよ。みんないつもはもっと難しい依頼をこなしてるからね」
「そうなのか?」
「まあ、俺はレベル72あるし、ノエルとレーナもレベル67だからな」
全員かなりのレベルの高さだ。
どうやら本当に昨日の依頼は俺のためにやってくれていたらしい。
「三刀竜はレベルが低い人から優先的に狙う性質があるけど、攻撃が単調だから大型モンスターとの戦闘に慣れるためにはちょうどいいモンスターだし、罠にはめやすかったりそこら中に攻撃力がなくても有効ダメージを与えられる自爆虫がいたりして、低レベルでも工夫次第で戦えるモンスターなんだ。最後は予想外のことが起こったけど…あれもアレックスに花を持たせてあげようとしただけで決して悪気があったわけじゃないよ。みんな口ではなんだかんだ言いながらアレックスのことを歓迎してるんだよ。だからもう少しだけ一緒に頑張ってみようよ。」
アリスの言葉を聞いて自分も疑いすぎだったと反省する。
彼らはおふざけが過ぎるものも、しっかりと新人である俺が世界になじみやすいように考えてくれていたようだ。
「わかったよ、でももう死ぬのは勘弁してくれ」
「あはは…今度からはやりすぎだと思ったら止めるようにするよ。もう少しゆっくり慣らしていこう」
あ、慣れるのは決定事項なんだ…と若干のめまいを覚えながらも、どうせこの先もことあるごとに死にそうだから嫌でもなれるんだろうなと考える。
「「え、昨日結構動きよかったから、もっとレベル上げようと思ってたんだが?」」
レオとノエルがそろって驚きの声を上げる。
そんな二人の様子にレーナがあきれ果てていた。
「はぁ…、お前たちは少しは空気を読め」
なんでだと本当に理解していなさそうな二人を見て心配になってくる。
本当にやばかったら止めてくれるんだよな?
気まずそうに目をそらさないでくれアリスぅぅぅぅっ!?
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