第12話

「おいおいおいおい待て待て待て。アリスどういうことだよ!?」


俺は突然のアリスの発言に困惑しながら尋ねる。


今の今までそんな話なかったよな!?


俺ら今日あったばっかなんだけど?


「えー、アレックスってば照れてるの?」


アリスが満面の笑みをこちらに向ける。


ちくしょう、嘘だってわかってるのにかわいい。


アリスの笑顔にやられ俺が赤面していると、ユウトはまた違った意味で赤面していた。


「嘘だ!こんないかにも雑魚そうなやつが君の恋人なんて!はっ、まさかこいつに弱みを握られているのかい?なんて卑怯なやつなんだ!」


アリスとのやり取りに動揺している間に、自称勇者君の中で俺は弱みを握って無理やりアリスを恋人にした犯罪者になったらしい。


この間約10秒である。


すごいな、こいつマジで自分の都合のいいようにしかとらえやがらねえ。


勇者がこんなやつばっかだったらそりゃ警戒されるわと考えていると、おもむろにユウトが剣を抜き、俺へと突き付けた。


「決闘だ。俺が勝ったらアリスを開放してもらう。」


おぅ、どうやらこいつの中で俺は犯罪者確定ならしい。


「アリス、これ断っていいか?」


俺はユウトには聞こえないように小声でアリスへと問いかける。


「ごめん、後でお詫びはするからここは受けてくれない?」


アリスが先ほどまでの演技をやめ、元の態度に戻って手を合わせる。


先ほどまでの態度は落ち着かなかったからありがたい。


「でも、勝てるのか?俺レベル1だけど」


「あー…、アレックスならたぶん余裕で勝てると思う」


アリスは俺が負けるなどとはみじんも思っていないという態度で答えた。


こいつ今日来たばかりの俺よりはレベルが高そうなんだが。


「いいぞーやれやれー」


「失せろクソ勇者ァーー」


「そのごみたたき出してください!」


俺たちがこそこそと話し合っていると、周りは先ほどとは打って変わってお祭り状態と化していた。


てか、最後の受付嬢が言っちゃダメだろ。


歓声の中に、大量に混じる罵詈雑言に心の中で突っ込みを入れていると、奇妙なことにユウトはなぜか機嫌がよくなっていく。


罵られて興奮する特殊な性癖の人なのだろうか。


「聞こえるかい自称勇者君、この君に向けられた罵倒と俺に向けられる歓声が。民意も君を悪俺を正義といっている。」


まるで舞台俳優のように大げさな動作をしながらユウトは歓声に浸っている。


違った、別の意味でやべぇやつだった。


こいつ無敵の人かよ。


自分に向けられた罵倒に一切気づいてねえ。


「なあアリス、俺こいつ怖いんだけど」


「私もう二週間もこれに付きまとわれてるの。」


アリスが死んだような目で虚空を見つめる。


もう疲れたといった様子である。


でもごめんアリス、帰ってこい。


俺一人でこれの相手はしたくない。


一人で相手するのが嫌すぎる俺は、虚空から返ってくるようにアリスの肩を揺さぶる。


「とりあえず、決闘するなら奥の訓練場に行かないか。」


そんな俺たちを見かねたレーナの一言によって、一同はギルド内にある闘技場へと移動することになった。









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