第9話
「ってことで、ここが一番手っ取り早く金も稼げてレベルも挙げられる場所、冒険者ギルドだ。」
レオに連れられて歩くこと十数分。
連れてこられたのはほかの建物に比べて一つだけ世界観の違う、どちらかというと元の世界の建物に似た木製の建物であった。
レオ達に続いて建物の中に入ると、大勢の喧騒に包まれる。
受付には列ができ、併設された酒場では様々な種族が酒を手に騒いでいる。
どこの世界でも冒険者ギルドというのは大差がないらしい。
「なんか、思ってたより普通のところに連れてこられたな。てっきり、賭博場とかにでも連れていかれるのかと思ってたぞ。」
「おい、俺らのことを何だと思ってやがる。俺らの中の半分ぐらいは未成年なんだぞ連れていけるかそんなもん。」
「未成年?」
「この世界では年齢でいろいろと制限があるんだよ、酒とかたばことか賭け事とかな。だから、お前も…、お前今いくつだ?」
「十九だな」
「なら、酒は飲めねえな。この世界じゃ飲酒は二十以下は禁止だ。飲んだらペナルティ食らうぞー。」
レオが何でもないことのようにさらっという。
「はぁ!?ちょっとまて、元の世界じゃ飲めてたんだぞ」
「そう言われてもなあ、そういう決まりなんだから仕方ないだろ。ちなみに未成年飲酒のペナルティは三日間の穴掘りだ。さぼるたびに耐えがたい激痛が全身を襲うため、寝ることもできずに三日三晩穴を掘り続けることになる。まあ、そもそもとして、この世界じゃあ未成年が酒類飲もうとするとアルコールが全部消える仕様で、酒は飲めねえのにペナルティだけ食らうことになるから誰も飲まねえけどな。」
そんなバカはいないとレオが笑う。
けれど、俺としては死活問題なので笑い事ではない。
ここで、唐突なのだが自身の酒に関する考えを聞いてほしい。
酒とは人生を豊かにするものである。
どれだけ気分が落ち込んでいても、飲めばそれを忘れられる。
楽しい気分の時は飲めばさらに楽しい。
どんな人間とも、酒を交わせば円滑にコミュニケーションが行える。
風邪を引けば、酒を飲んで寝るだけでどんな風邪も治せる。
そう、そんな魔法のような飲み物が酒なのだ。
こんな話をいきなりしても意味が分からないという人もいるだろう。
だからとても簡潔に。
何が言いたいのかというと。
俺はアルコール中毒なのである。
「なあ、レオ。どうやったら酒が飲める?」
俺は至極落ち着いた様子でレオに尋ねる。
大丈夫、落ち着け、まだ絶対に飲めないと決まったわけじゃない。
「あ?そんな方法ねえよ…っておい落ち着け、落ち着いてその酒飲んでる客に振り上げた剣を下ろせ!?」
レオが後ろから羽交い絞めにしてくる。
あれ…俺は一体何を…?
「おいおい、今回のはアル中の勇者かよ…」
ノエルが天を仰ぎながら、目を手で覆い首を振る。
まるでアル中が悪いみたいじゃないか、失礼な。
ただ他人より少し酒が好きなだけじゃないか。
「アレックス、とりあえずもう一回暴れだす前にこれ飲んでみろ」
そういってレーナが、俺の口へとストローを突っ込む。
いぶかしみながらもそれを飲んでみると、あれっこれ酒か?
この飲み物が喉を通るたびに、全身に酒がしみわたっていくのを感じる。
一日ぶりの酒に喜んでいる俺を見て、ノエルたちはあきれた表情を浮かべていた。
「あれ何を飲ませたんだ?」
「甘酒。あれでうまくいくとは思っていなかったのだけれど…」
「酒って入ってたらなんでもいいのかよ。アル中設定どこ行ったんだよ…」
レオ達はそろってため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます